第十二章 再会5
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朝二人は起きると、利奈はベッドの上に座り、
寝ぼけ眼であくびをして、腕を伸ばして背伸びをしていた。
そんな姿を寝ながら、目を開けて見詰める近藤であった。
近藤も眠そうな眼差しで、「酔いが醒めたか」と、
呟くと利奈は、座りながら目を瞑り、「ふあい」と、あくびをしながら返事をした。
もう時はすでに、朝の10時を回っていた。
利奈は着替えて台所で、母親と一緒に近藤と自分の、朝ご飯を作っていた。
姿は違うが母親も一緒に、聖菜の魂を宿したこの子と、
台所に立つのは久しぶりで、話も弾んでいた。
利奈、「お父さんね、私の会社で清掃員として、働いているのよ」と、答えると、
母親は驚いて、「へー、東京に居るのかい、あの男は刑務所から出て来ても、
ふらふら職を転々としていて、うちに帰って気やしないよ。
娘が死んだ時だって、知ったのは三年後で、
たまに顔を見せるくらいだね」と、呆れていた。
利奈、「私が怒ったら、腰抜かして驚いて怯えてたわよ。
だから会社に出勤する度に、家に帰れと耳打ちしているの」。
母、「娘だった聖菜が耳打ちしても、
帰らない様では、見込みはないよ」と、ため息をついた。
すると近藤が起きて来た。
それを見た利奈が、「今朝ご飯出来るから、座って待っていて」と、告げると、
近藤は座卓の前に腰を据えた。
味噌汁、豆腐、ジャガイモの煮付け、漬物などが並べられ、
久しぶりに 一家団らんの時を過ごすのであった。
そして手を合わせて、二人は食べ始めた。
食事をしている、二人の所に母が来て座り利奈に、「でも生まれ変って来て、良かったね。
今のあんたの産みの親は、両親共に真面目で、
あんたをスクスク育てくれて、私も安心したよ」と、微笑んだ。
近藤、「両親が二人居るのは、聖菜だけだな」と、
笑うと利奈は、「そんなの解らないよ、気が付かないだけで、
世間には多くそうした、現象が存在するかも知れない。
ただ私みたいに、気が付かないだけなのかも」と、語った。
その時母は、「そうかも知れないね、気が付いていても、
言わないだけかも知れないね」と、考えさせられた。
利奈は少し膨れて、「そうよね、気づいていたなら、
早くこの事実を伝えてくれていれば、
こんな苦労はしなくて済んだのに」と、ふて腐れた。
それを聞いていた母が、「この子が明らかに、
聖菜の生まれ変りと今実感が湧いたよ。
せっかく生まれ変って来たのなら、あんたのその性格も、
少しは変わると思ったのに、まったく変わりはしないじゃないか。
苦労した分こんなに皆んなに称えられて、幸せだとは思わないのかい。
智彦君だって新しく、生まれ変ったあんたには、
新しい人生を歩ませて上げたいと、思ったから智彦君は、事実を隠したんだよ。
あんたの頭の中に、昔の聖菜の記憶が、宿っている事が解っていても、
あんたには新たな人生があると、思った智彦君の愛情だよ。
迷わせたくはないから、告げるのを惜しんだ事が、
理解出来なくて怒るあんたは、まだまだ子供だよ」と、呆れていた。
すると利奈は、「会社の同僚の、紗江にも同じ事を言われたわ」と、塞ぎ込んだ。
その時、近藤が、「元彼氏に別の女が居なかったら、
ずっと黙っていようとは思っていたけど、
まさかあんな形で、突然破局になるとは、予想外だったのでね。
精神的に弱い聖菜である利奈は、間違い無く手首を切ると踏んで、
そこそこ酔わせて、自分の自宅のアパートに連れて行き、
居間で布団を敷いて、そこに利奈を寝かせて見張っていたら、
案の定夜中にこそこそ起きて、キッチンの下の棚を開けて、包丁握っていてね。
寝る前に、『絶対に妙な真似はするなよ』と、念を押したら、
『そっちこそ夜中に私に、妙な真似はしないで』と、
強がったはいいけど、心は裏腹で会社で皆んなの前で、
『あの時、約束なんて破って、犯してくれていれば、
こんなに辛い思いをしなくて済んだ』と、叫んで大変だよ。
幸い会社の同僚は理解があって、事なきを得たが、
あれが他の社内なら噂が立って、
上層部の耳に入れば、懲戒免職だったよ」と、嘆いていた。
すると母は激怒して、「本当にあんたは馬鹿な子だね。
自分の感情を公で露にして、人の気持ちなんて、まったく理解しようとしないで、
後先の事を考えないで、先走って自分の感情をぶつけて、
馬鹿は死ななきゃ治らないと言うけど、
あんたは永遠に馬鹿は治らないよ」と、呆れてしまった。
すると急に利奈は泣き出し、「あの時は元彼に裏切られて、
絶望の極地で、気が動転していたの」と、大泣きすると、
母が、「何が絶望の極地だか、娘や恋人に死なれた身にも成ってみな、
どれだけ苦しい思いをして来た事か、
あんたには到底解りはしないよ」と、呆れ返ると、
利奈は、「気が動転していたから、
仕方が無いでしょ」と、利奈も泣きながら怒った。
すると母は、「まったくこの子には、世話が焼けるね。
だだっ子で我侭で、だから罰が当たるんだよ」と、叱った。
近藤も呆れて、「そこがこの子の不運な所で、
今の両親にも一人っ子で、
大分我侭に育てられて来た様で、
更に僕がこの子を甘やかす、訳が有りますから、
尚更今後会社での待遇が心配です」と、ため息を付いて利奈を見た。
その時、母もため息を付いたが、
涙を拭って利奈は知らぬ顔で、食事をしていたのであった。
すると母は、そんな利奈を見て、「智彦君に哀訴付かされたら、
今度は先がないよ」と、叱られると、
利奈は俯いて、「ごめんなさい、
こんな自分を治す努力をします」と、反省した様であった。
近藤は、「昔からそれが許されて来たから、
皆んなに称えられる事が出来たが、
羨ましい性格では有るな」と、首を傾げたのであった。
この物語はフィクションであり、登場する人物、建物などは実際には存在しません。




