第十一章 追憶3
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尚江は店の入り口の扉のプレートを、Coloseにして扉の鍵を閉めた。
そして二人の隣の、カウンターの椅子に座り俯いた。
ふと尚江の頬から涙が伝った。
それを見た利奈が、「どうしたの」と、問いかけた。
尚江は涙を拭い、語り始めた。
尚江、「私はナイトタイガーの、レディースだった。
彰子は智彦引き入るナイトタイガーの、頭の女と称されていた。
そんなチームの中に、一人の華が現れた。
それが聖菜だった。
私と彰子、そして聖菜の共通していた事は、母子家庭で育った事だった。
彰子の父親は昔から、酒びたりで仕事もしないで、朝からぐだぐだ、
くだを巻いていた。
なので仕方なく、母親が働きに出ていた。
私の父は私が幼い頃、胃癌でこの世を去った。
そして聖菜の父は堅気では無く、聖菜が中学に入ると直ぐに、
刑務所にお世話になっていた。
教えて上げる、聖菜の名字は猪原。
会社で清掃員をしている、78歳位の男性が聖菜の父親よ」と、答えると、
利奈はペンションの、あるじの言葉を思い出した。
そして尚江は話続けた。
尚江、「不思議なものね人の絆とは、必ず前世で携わった人は、
生まれ変ると身近に居るの。
その清掃員のおじさんの、名前を聞いてごらん聖菜」。
そう問い掛けられると、利奈は頷いた。
尚江、「私が先に友達を通じて、夜な夜なディスコに通う様になると、
中学の友人であった、彰子をディスコに引きずり込んだ。
その時同じ境遇であり、マブダチでもあった聖菜も誘ったけど、
聖菜は頑なにディスコを拒んだ。
とても真面目だった聖菜は、夜の遊びは敬遠した。
彰子と私はその時、ディスコで知り合った男性と、意気投合した。
それが智彦だった」。
近藤、「俺は彰子と尚江にディスコで声を掛け、
俺が引き入るナイトタイガーと言う、族に所属させた」。
尚江、「させたと言っても、子供騙しの粋がった若気の至りの集まりで、
集団で夜な夜な騒ぎ立てるのが、楽しい集まりのグループだった。
でも楽しかったあの当時は..」。
近藤、「夜間高校は、バイクの免許の規制は無かった。
なので自由気ままに、モーターサイクルの遊びは、
未成年でも大いに、エンジョイ出来た」。
尚江、「昼間高校でもレディースは、親の管理下に置かれていない、
私達みたいな母子家庭の子は、夜は自由が利いたの。
でも聖菜だけは、真面目で暴走族を嫌った。
そして何故か暴走族が嫌いだった、
聖菜がその頭である智彦と、恋愛関係に成った。
すると繊細な聖菜に、チーム達は心引かれて行った。
いつの間にか智彦は、聖菜を彼女としてチームに称えられ、
姫と呼ばれる様に成って行った。
そしてチーム解散後は、聖菜は仲間内の、マスコットの様な存在に成り、
智彦引き入る、夜間高校の仲間内は、聖菜を可愛がった。
夏祭りには居酒屋で、聖菜の前のテーブルに、質素では有ったけど、
バイキングの様に、お惣菜が並べられ、
暑い最中、皆んなで浴衣姿の聖菜を団扇で扇いだ。
その時、寂しかったのは彰子だった。
その三年後、聖菜と智彦は愛の証を誓う事になった。
そう結婚と言う形で。
聖なる日のそれは、結婚を表した。
横浜のと或る教会で我々幼馴染だった三人は、各々祭壇で誓を心の中で述べた。
私は聖菜と智彦の、永遠の恋を案じて誓った。
聖菜は智彦との永遠の愛を誓った。
彰子は違った。
いつか私の元に、智彦が戻る様にと誓った。
願いは彰子だけに叶えられた。
何度も何度も聖菜に声を掛けたが、意識が遠のくばかりで、返事は出来なかった」。
すると利奈の脳裏に、その時のフラッシュバックが蘇った。
自分はストレッチャーで運ばれ、意識が遠のく中、近藤の顔が目に映り、
ひたすら声を出そうとするが、出なかった。
そして最後に力いっぱい出した声で語った。
『もう一度生まれてくるから..』。
そしてフラッシュバックは、フェードアウトされて行ったのであった。
近藤、「集中治療室の前で、何時間佇んでいたのだろ。
利奈が治療室から出て来た時には、顔に白い布が乗せられていた。
俺は同時に、治療室から出て来た医師に問い掛けた。
『どうしたんですか』と。
医師は俯き加減で答えた。
『ご臨終です』と」。
尚江、「私も意識が回復して、事情を聞いて病院で泣いた。
一週間、二週間、泣く事を止めなかった。
止めないのではなく、止められなかった」。
近藤、「俺は聖菜の自宅に運ばれた、
聖菜の遺体にすがり付き、離れようとはしなかった。
現実を信じたくない俺は、お前の遺体を抱いた。
冷たくなるお前の体を温めれば、生き返る様な気がした。
周りの声など聞こえはしない、ただお前を生き返らせたかった」。
尚江、「そうあの日から、私は占い師に成る為に修行を積んだ。
そうよ、最後に聖菜が語った言葉、『もう一度生まれてくる』を信じて、
聖菜を導く為に神に誓いを述べて、今こうして聖菜は蘇ったの、
またこうして、智彦に神は聖菜を授けた。
そして彰子は、自分のせいで聖菜が死んだと信じた。
あの時祭壇で、『私の元に智彦を戻して』の願いは、叶ってしまった。
聖菜の死と言う形で。
でも彰子は聖菜の死は、望んではいなかった。
ただ智彦が自分に靡く様に、願っただけであった。
でも現実は、無常な叶え方をしてしまった」。
近藤、「そうか、それで俺との結婚を拒み、自分の生んだ子供を案じた」。
利奈、「私の怨念が怖かったから」。
すると尚江は立ち上がり、
利奈の前で手を広げて、「さあ、私の所に来なさい」と、言うと、
利奈はそっと立ち上がり、尚江の前に立つと、尚江は利奈を強く抱きしめた。
そして尚江は、「ああ、この魂はまさしく聖菜、
やっと私達の元に、帰って来てくれた」と、愛しそうに語ると、
大粒の涙が頬を伝った。
聖菜もその時、体が熱くなる感覚を覚えた。
尚江、「後の事は彰子に聞きなさい。
でもね聖菜、聞けば彰子も辛くなるわ。
でも聞くでしょうね聖菜は、どれだけ智彦が聖菜を亡くしてから、
辛い思いをして来たか、智彦は知って欲しくはないだろうけど」そう言って、
利奈を放し利奈の顔を見詰めて、「さあ、智彦に抱かれてごらん」そう言うと、
近藤は、「もうこの子を 一時たりとも、離せなくなってしまったよ。
愛しくて仕方が無い、本当は過去の拘りなんて、
この子は知らなくても良かったのに、元彼があんな風では放って置けなくてな。
俺が今後この子と結ばれると、この子を俺がどうしても甘やかすから、
会社の対人関係を悪くしそうで怖いよ、その時は利奈に会社勤めを辞めて貰って、
遊ばせて置くしかないがな」と、ため息をついた。
そして近藤も立ち上がって、利奈を抱きしめた。
愛しそうに、抱きしめる近藤に尚江は、「この事実を聖菜が知る前に、
智彦は間接的では有るけど、
大分利奈であった時から、甘やかしていたのでしょ」。
近藤は利奈の背中に手を回しながら、
利奈の背中をさすると、「しょうがないだろ、昔の俺の廃人姿を見ていれば解るだろ。
利奈に事実を黙っていたって、無意識に優しくするさ」と、語ったのであった。
そんな二人を見詰めながら、微笑む尚江であった。
この物語はフィクションであり、登場する人物、建物などは実際には存在しません。




