第十章 リベンジ5
オリジナル:http://blogs.yahoo.co.jp/kome125
利奈はその夜、ペンションの部屋のベッド中で、一頻り泣いた。
自分の過去の前世と、今置かれている現世とが入り混じり、
愛しさが募るのであった。
今解き放たれたフラッシュバックに、戸惑う利奈は、
このベッドで愛を語り合った日が蘇る。
同時に光秀の裏切りの悔しさ、侘しさが後悔の塊と成って、
酷く利奈の心を傷つけた。
そうもう少し早く、この事実が解っていれば、
こんなに辛い思いを、しなくて済んだのにと、後悔だけが先走る。
遠い遠い遥かに遠い、思い出を胸に、今ここで後悔の嵐に見舞われていた利奈。
時より今と昔の近藤の笑顔が、脳裏に過ぎると後悔は更に、
利奈の心を傷つけたのであった。
利奈はベッドの中でしきりに、「会いたい、会いたい、
早く智彦に会いたい」と、呟くのであった。
そして翌日東京に戻る利奈は、近藤の思いを胸に、
明日の会社の出勤に、自分のマンションで、戸惑っていたのであった。
そして次の朝、利奈は会社に出勤すると、企画部の扉を開けた。
一斉に企画部のスタッフ達が、利奈の姿を見詰めた。
利奈はデスクの椅子に、
座っていた近藤を見詰めて、「今戻った智彦..」と、言い放った。
近藤は利奈を見詰めて、椅子から立ち上がり、利奈の所に歩いて行くと、
静かに、「お帰り」と、言って肩を一つ叩いて、
このフロアーから、出て行こうとすると利奈が、「教えて、何故黙っていたの」と、
問いかけると、近藤は一度立ち止まったが、廊下に出て行った。
そしてリラクゼーションルームに、足を運んだのであった。
リラクゼーションルームの、喫煙室に入るとタバコに火を点けた近藤。
利奈は静かに、喫煙室に入ると、
扉を開けたまま、「タバコは変わらないのね、若い頃から」と、呟いた。
近藤はその時、切なさが増して行った。
利奈はそんな近藤を見詰めて、「どうして、今まで黙っていたの。
解っていたはずよ、初めて私とここで出会い、
初めて私と 一緒に営業に出掛けた日から、私が聖菜の生まれ変わりだと」。
近藤はタバコを吹かし、下を向いて、「君には新しい人生を、歩んで貰いたかった。
俺は新しい肉体に宿した聖菜の魂に、昔の過去など伝える義務は無い。
俺は新しい人生を歩んで貰いたかった。
だがこんな結果に成るとは、思わなかったから..」。
利奈、「ならば何故私が、手首を切ろうとしたあの時、
事実を私に伝えてくれなかったの」と、急に態度を変えて激怒した。
近藤は切ない思いで、語り始めた。
近藤、「利奈、解ってくれ、俺はお前を交通事故で亡くてから、
廃人の様な姿になり酒浸りで、病院で三年もの間、闘病生活を送った。
だが這い上がれなかった。
お前を亡くした事で俺は、生きる術を失い、毎日お前の名前を呼んでいた。
俺はお前が生き返り、もう一度同じ事が起きるのを恐れた。
それは俺にしか解らない、苦しい体験だった。
その時から運命と言う、俺にはどうしようもない、蟠りが常に襲い掛かる。
お前が息を引き取った瞬間が、今でも頭を過ぎると、
面と向かって生まれ変わったお前を、見れなく成っていた。
本当は嬉しいのに、本当は抱きしめたいのに、本当はお前に事実を伝えたいのに、
生き返った聖菜の事実の中に、遠く悲しい思い出が俺の頭を過ぎると、
利奈に本当の事実は、伝えられない俺が居たんだ」。
すると利奈は更に激怒して、「そんなに愛していたなら、
利奈と呼ばずに聖菜と呼びなさいよ」と、叫んだ。
その声でスタッフ達は、リラクゼーションルームに駆けつけた。
咄嗟に紗江が、利奈に問いかけた。
紗江、「どうしたの、何が遭ったの」と、問いかける紗江に、
利奈は一枚の写真をポケットから取り出して、紗江に渡した。
それを見詰めた紗江は、「どう言う事」と、利奈に問いかけた。
利奈は静かに話し始めた、「近藤さんそう、智彦の隣に写っている女は、
私の前世の姿、今まで私に起きていた、フラッシュバックは全て、
私の前世の智彦との思い出、そうよ私は前世で二十歳の時に、
交通事故に遭い命を絶った。
そして今復刻して来たのよ」。
スタッフ達は言葉を無くした。
すると垣田は平然とした態度で、「そんな事だと思ったよ、
利奈が元婚約相手に、不安を感じていたのは、利奈の予知能力だった。
マリッジブルーは、そこから来ていたんだ。
気が付かなかっただけで、無意識的に潜在能力は、
元婚約相手に対して敬遠していたから、不安を感じてそうした動きに成っていた。
それが利奈が抱いた、マリッジブルーの正体だ」。
すると近藤はタバコを消して、
喫煙室から出て来て、「聖菜、今は俺がお前に何を言っても、納得は行かないであろう、
でもお前を愛していたから、手首を切る事を予測して止めたんだ。
生きて欲しかった、これから幸せな人生を歩んで欲しかった。
考えられない事が起きた。
リベンジなんて俺は、信じたくは無かった。
お前が病院で、息を引き取ろうとしていた時、
『もう一度私は生まれ変わって来る』と、呟いた。
だが生まれ変わって来たお前には、婚約者が居た。
もし俺ともう一度、人生を歩み直したとしても、
俺はすでにこの年だ、新しい魂は新しい魂と、
結ばれる方が幸せと感じた俺は、そっとしておいた方が、良いと思ったからだ」。
利奈はまた激怒して、「そんなの智彦の勝手な理屈じゃない。
それを私に話してから、私が判断するべき事でしょう。
勝手な解釈で私は辛い思いをして、ろくでもない男に身も心も、もて遊ばれたのよ。
三年間も帰らぬ女を、愛しさに苦しんで来た智彦が、
その復刻して来た女を見知らぬ男に、
都合のいい様にされた智彦の気持ちは、
さぞかし心が、張り裂けそうでしょうね」と、言い放つと、
紗江が急に態度を変えて、「それは結果論でしょう。
近藤さんは心から、あんたの幸せを願ったから、
光秀君との結婚を称えたのよ。
解らないのその近藤さんの思いが。
あんたは子供よ、幼過ぎるわ。
あんたこそ自分の感情だけを、近藤さんに押し付けて、
近藤さんの気持ちなんてまったく、考えてやしないじゃない」と、激怒した。
利奈はやはり紗江の意見など、聞く耳を持たず、自分の感情を露にした。
利奈、「ならばあの時、抱きしめるだけじゃなく、私の約束なんて無視して、
私を犯してくれれば良かったのよ、そうすれば全てが解き放たれた。
こんなに今日まで、辛い思いをしなくて済んだのよ」と、言い放って、
このフロアーから出て行った。
すると廊下で恵美子が佇んでいた。
恵美子は利奈を睨んだ。
それを見た利奈は、「何よ、どきなさいよ、何か文句でも有るの」と、言うと
恵美子は急に利奈の頬を、思いっきり張り倒して、「この泥棒猫。
私の男を無造作に奪って、あんたは卑怯よ。
そうやって人のものを奪い取って、私の浮気した父親の女と同じよ。
結局あんただって、光秀君の浮気相手と同じ事をしてるじゃない。
最初に近藤さんに目を付けたのは、私なのに都合のいい様に、
私から近藤さんを奪い取って行く。
あんただってその、慶子と言う女と同じよ」と、言って何度も利奈の頬を、
張り倒したのであった。
それを止めるスタッフ達が居た。
利奈はその時、思いに更けるのであった。
この物語はフィクションであり、登場する人物、建物などは実際には存在しません。




