第八章 街
オリジナル:http://blogs.yahoo.co.jp/kome125
土曜日、利奈は仕事が休みで、友人達と銀座に出ていた。
八月の真っ只中、快晴の空は紫外線と、降り頻る太陽光線で、
思考を失うほど猛暑であった。
街の温度計は37度を表示していた。
とてもまともに歩けず、デパートの中をうろうろする仲間達、
他の客も同じ様であった。
ふとウェディングコーナーを、通り掛かる利奈は、
女性のマネキンが着ていた、ウェディングドレスを見て微笑んだ。
それを見ていた輝美が、「利奈、それで準備は進んでいるの」と、聞くと、
利奈は頷き、「うん、この間、新宿の貸衣装店で、衣装合わせして来たの、
とても感じの良いお店で、ちょっと派手なのを選んだの」。
清美、「頬を指で触れられなかった」と、
からかうと利奈は、「縁起でも無い事言わないでよ、また遣られたら、
私、当分結婚は延期するわ」と、怒った。
その時、美奈は、「あーあ、幸福の女神の行為を、粗末にするなんてね」と、呆れた。
利奈は顔が強張り、「だって知らなかったから」と、言い放った。
輝美、「それでも、張り倒された訳でも無いのに、
ちょっと頬に指を触れただけでしょ、何で怒るのよ」と、非難した。
利奈は言い返し、「二度も見知らぬ女性に、顔を触れられて、
意味不明な事を告げられたのよ、気持ち悪いじゃない」と、激怒した。
それを見た美奈は、「臆病なだけでしょ、女神に幸せに成りなさいと、
頑なに言われた癖に、それを追求して怒ってしまって、罰が当たるわよ」と、
やはり非難すると、利奈は更に激怒して、「だからどうして、
幸せに成れるか、聞きたかっただけよ」と、大きな声を出すと、
いささか周りを、気にした輝美が、「止めなさいよ、周りに迷惑でしょ」と、咎めた。
友人達はこの時、少し利奈に嫉妬していたのであった。
仲間達は買い物に来た訳でも無く、ただ涼みたかっただけなので、
しばらく体をデパートで休めると、デパートを出て地下鉄を乗り継いで、
新宿にやって来た、近くの電化製品の量販店で、デジカメの評価をして、
歌舞伎町の居酒屋で、一杯引っ掛けていた。
そして時間潰しに、渋谷まで電車で移動して、映画を見に行く仲間達、
時はすでに、夜7時30分を回っていた。
映画のチケットを購入している最中、利奈の携帯にメールが届く、
それは光秀からだった。
[仕事を終えたから、飯食ってアパートに帰ってる。]
そんなメールに利奈は、[今渋谷で映画見てる、
映画を見終わったら、光秀のアパートに行くから]と、打ち返すと、
メールは即返って来た。
[了解、ごゆっくり]と..。
それを確認して、携帯電話を閉じた。
映画は邦画の恋物語、その時であった、
なんら映画の内容とは関係が無いが、急にまたフラッシュバックが起きた。
それはやはり白黒画像で、顔が光って見えない、
場所は何処かの川で、少女が溺れて流されていた。
それを若い男性が川に飛び込んで、少女を抱いて流されながら、
もう片方の腕を伸ばしていた。
陸でそれを必死に追いかけていた。
すると偶然長い木の枝が、地面に落ちていて、
それを拾い手を伸ばしている男性に投げて、男性は運良くその枝を持つ事が出来た。
そして利奈は 必死に枝を手繰り寄せていた。
岸まで手繰り寄せると、男性は自力で近くの低いコンクリート壁を、
よじ登ろうとしていた。
自分も必死に手助けをして、無事女の子とその男性を、
岸に上げる事が出来たのであった。
そしてフラッシュバックは、消えていったのであった。
利奈はこれから訪れ様とする、幸せを案じて、忘れ様としたのであった。
映画を見終えて友人と別れ、利奈は電車に乗って、自分のマンションから差ほど遠くない、
光秀のアパートに向かっていた。
夜は八月の終わり頃、でもまだ蒸し暑く、道を歩いていると汗ばんだ。
途中でコンビニに寄ると、偶然光秀がレジに並んでいた。
丁度利奈がコンビニから入って来た所を、
サンドイッチと牛乳を、手にしていた光秀が利奈を見て、「おう、
今帰りだよ」と、答えると。
利奈は、「明日の朝ご飯、私が作るのに」と、
言うと光秀は、「なら夜食で食べるよ」と、微笑んだ。
二人はコンビニを出ると、二人共袋片手に家路に向かった。
港近くの自宅への道を歩くと、潮風が漂っていた。
光秀は利奈の肩を抱き寄せて、寄り添って歩いた。
すると光秀、「この間の貸衣装店、親切だったよな」と、嬉しそうに答えると、
利奈も笑いながら、「着てみた衣装を仕立てながら、冗談ばかり言っていて、
結婚すると言うのに、原宿に出来たラーメン屋の、話ばかりしていたわね」。
光秀は大笑で、「結構、あっさりしていて、でもコクが有って、
お勧めですから、一度行ってみて下さいって、アハハハハ」。
利奈、「カップラーメンのパッケージに書いて有る、
触れ込み文句見たいな事、言っていたわね」。
光秀、「誰でも言えるんだけどな、その程度なら」と、呆れていた。
利奈も首を傾げて、「もっと具体的に、鰹だしが効いているとか、
風味がいいとか、後から味わいが出て来るとか、それ位言ってくれないと、
いまいち実感が湧かないわね」と、笑った。
すると光秀は真顔になり、「要約利奈も、不安が無くなって結婚の実感が、
湧いて来ただろ」と、答えると、先ほどフラッシュバックは有ったが、
利奈は笑みを浮かべて、頷いたのであった。
光秀は夜空を眺めて、「愛しているよ、ずっとずっとこうして一緒に、
人生と言う道のりを、利奈と歩きたい」と、
語ると利奈は、「ずっとこうして居られる様に」と、指を組み、神に祈りを捧げた。
そんな利奈を見た光秀は、目を瞑る利奈に口付けをした。
利奈は指を解き、愛する光秀と抱き合った。
道端で長いキスを終えると、
二人は見詰め合い利奈は、「ずっとずっと大切にして欲しいの」と、告げると、
光秀は利奈の目を見詰めて、またキスをした。
そして利奈の目を見詰めながら、
キスを終えると光秀は、「ああ、大切にするよ」と、優しく呟くと、
利奈は頬から涙が伝った。
今万感な思いの二人は、この星空が二人を、優しく見守る様であった。
この物語はフィクションであり、登場する人物、建物などは実際には存在しません。




