第六章 結婚準備
オリジナル:http://blogs.yahoo.co.jp/kome125
夏真っ盛りの、と或る日曜日、
光秀と利奈は親戚の挨拶も済ませ、
利奈がウェディングドレスを見たいと、
街のブライダル衣装の店を探していた。
すると地味では在ったが、とても落ち着いた雰囲気の店を見つけた。
利奈はその様相に引かれて、店を訪れた。
中に入ると四十半ば位の女性店員が、出迎えてくれた。
店内を見回す利奈に、女性店員は話し掛けた。
店員、「初めての結婚ですね、どんなドレスを選んで良いか、
迷うでしょ、私がサポート致しますので、こちらにお掛け下さい」と、
カウンターの椅子を引いて、二人を座らせた。
すると店員は、いくつかサンプル写真を持って来た。
それを何気なく、カウンターにトランプの様に広げた。
店員、「私どもの店は、女性の直感で選んで貰っているのですよ、
そこから花嫁のオリジナルを選んで行きます」と、
答えると光秀は、「へー、変わった思考のお店ですね」と、驚いた。
店員、「始めて結婚される花嫁の中でも、お客様の様な店に入って来て、
辺りを見回されるお客様は、大抵自分の直感を店に求めている傾向に有るので、
こうした指向を凝らしています」と、微笑んだ。
すると利奈は即、一枚の写真を手に取り、
その写真を見詰めて、「これ素敵ですね」と、答えると。
店員は、「あら、今の若い花嫁さんには珍しく、
シンプルなタイプを選びましたね」と、問い掛けると、
利奈は少し、躊躇いがちになり、「私に似合うかな、
このモデルさんなら、似合っているけど」と、自分を悲観気味に答えた。
すると店員は驚いた様な、表情を見せて、
「あ、あなた」と、何かに気づく様な、素振りを見せた。
利奈はそんな店員に、「は、何ですか」と、質問すると、
店員は少し躊躇して、「い、いえ何でもありません、
ごめんなさいね」と、謝り話を進めた。
話は弾み、利奈が選んだアクセサリーをカウンターに置いて、
光秀と利奈は、顔を見合わせて微笑んだ。
そして店の奥の部屋に通され、衣装合わせをする利奈であった。
店員はウェディングドレスを着せて、アクセサリーを着け、
光秀を部屋に呼ぶと、光秀はその姿を見て感動した。
光秀、「凄い綺麗だね、惚れ直したよ」と、照れていた。
確かに器量が良い利奈は、そのウェディングドレスの姿は、
サンプル写真を上回る程、エレガントな姿を醸し出していた。
そして光秀が利奈の側に来ると、ふとそれを拒むかの様に、
光秀の前に立ちはだかり、利奈の衣装を直した。
光秀は驚いて、「うを」と、声を出すと。
店員は気が付いて、後ろを振り向き、「あ、ごめんなさい」と、利奈の前から離れた。
そして光秀は利奈に、「凄い綺麗だよ、結婚の実感が沸いて来た」と、喜んだ。
利奈も照れながら、「有難う、私も同じ気持ちよ」と、微笑んだ。
店員も微笑んで、「幸せに成る事を、心から願います」と、頭を下げた。
今二人は愛の証を、心に秘めるのであった。
すると店員が、「ちょっと失礼しますね」と、
利奈の頬を指で触れると、「は」と、息を呑んだ。
利奈は驚いて、「あの、どうして私の顔に触れるの」と、顔を強張らせた。
店員は触れた手を引いて、どもりながら、「ご、ごめんなさい、
あなたの顔がとても美しいから」と、慌てて謝った。
利奈は怒って、「嘘よ、あなたは私の、何を知っているの」と、問い詰めた。
店員は焦りながら、「何も知りません、ただ」と、言いかけて俯いた。
利奈は口を挟む様に、「ただなに、なんなの、私はこの間もあなた位の年の人に、
同じ事をされたわ、どうしてなのか教えて欲しいの」と、利奈は店員の両肩を、
両手で持って揺すった。
店員は利奈から顔を逸らして、答えなかった。
更に怒りが増した利奈は、「あなたと同じ事をした人は、
私が働いている会社の社員で、近藤という人の別れた妻で、名前は彰子」と、
言い放つと、店員は驚いて、「会ったのね」と、急に利奈の顔を見詰めた。
利奈激怒しながら、「お知り合いなのね、どう言う関係なの」と、
更に店員の肩を揺すった。
店員は利奈の顔を見詰めて、一言呟いた。
「リベンジ」。
利奈、「リベンジとはなに」と、聞くと、
店員はそれについては、答え様とはしなかった。
利奈は怒りを抑えて、「私に何が遭ったと言うの」と、呟くと声を荒げて、
「私の過去に何があるのよ」と、叫んだ。
店員はそっと、「教えられないの、今私の口からは」と、俯いた。
そう言うと利奈は、「そう、ならば彰子さんに、無理やり聞くわ」と、怒ると。
店員は、「今あなたは幸せに成れる、だから神話は話せないの」と、言い放った。
利奈は不思議そうに、「神話、神話ってなによ」と、激怒すると、
店員は、「それは神のみぞ知る事、話してしまったら、
あなたは今の幸せを、失う事になる」と、呟いた。
それを隣で見ていた光秀は、この状況が怖くなり、
慌てながら、「もうここを出よう、早くそれを脱いで、ここから離れ様」と、
利奈を強制的に、試着室に連れて行った。
急いでウエディングドレスを脱ぎ、利奈は元着ていた服を着て、
試着室から出て来ると、ウェディングドレスをその店員に渡し、
店から出て行こうとすると、利奈は立ち止まり店員に、「また来ます。
神話を教えてもらうまでは、何度でもここに来ます」と、告げて立ち去ったのであった。
店員はその時、黙って思いに更けていたのであった。
この物語はフィクションであり、登場する人物、建物などは実際には存在しません。




