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紫音の少女 郷愁  作者: 柊 潤一
流転の中で
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別れ

この話で最終回になります。

 次の日の朝、紫音は朝食を済ませると自室へ戻り、着物を着替えて東の国へ飛んだ。


 そして前に来た時からの続きで、話を聞けそうな人を探していたが、ふと着物を売っている店が目に止まった。


 そうだわ、ジャネットのお土産に着物を買おうかしら。


 紫音は店に入っていきジャネットに似合いそうな服を選んだ。


 それから、服を作るための生地も売っていたので、綺麗な色の生地を選び、砂金で作ったこの国で使える金貨で代金を支払った。


 店の主人は、若い娘が分不相応な金貨を持っていることに驚き、仔細に金貨を調べたが怪しいところはなかったので、お釣りを渡し服を包んだ風呂敷包みを渡した。


 その少し前、金貨を支払う様子を横で見ていた男がいたが、シオンが風呂敷包みを受け取る時にはもういなかった。


 紫音が荷物を持って店を出ようとした時に、紫音の意識に変化が起こった。


 それは、今いる世界を離れ次の世界に行く時にいつも起こるものだった。


 紫音は部屋に戻るために、急いで人気のない空き地を探した。


 そして空地を見つけた時に、急に四・五人の男が現れて紫音を取り囲んだ。


「お姉さん、大層なお金を持って持ってるじゃねえか。一人じゃ危ねぇから俺達が家まで送ってってやるぜ」


 一人の男がそう言って、返事をする間もなく腕を掴んできたが、紫音には落ち着いて男たちの相手をしている暇はなかった。


 紫音は、自分の体を包んでいる空気を極限まで圧縮させ、それを周りに解き放った。


 紫音を囲んでいた男達は一瞬で吹き飛び、腕を掴んでいた男は圧縮された空気で腕を切断され、吹き飛んでいた。


 紫音は急いで部屋に戻り外に出て、地中深くから岩を取り出し、酸化アルミニウムと少量の鉄とクロムを入れ、熱と圧力を加えた。


 岩は小さくなり、酸化アルミニウムが結晶化し、鉄とクロムと、その他微量の要素によって、紫がかった青い宝石になった。


 それからそれを指輪にして、その宝石に紫音の力を封じ込めた。


 紫音はそれを持って、ゾロのいる砦に行った。


「紫音さん、もう用事は終わったんですか」


 紫音がいるのを見かけたゾロが話しかけてくるのへ


「ゾロさん、これをあなたに」


 紫音はそう言って指輪を渡した。


「これは、あなたの力をさらに強くする指輪です。私の力も封じ込めてあります。あなたのこれからの助けになるでしょうから、使ってください。私はもう行かなければなりません」


「行くってどこへですか」


 紫音がその声を聞き流したまま飛ぼうとした瞬間に、何事かを気づいたゾロは紫音の腕を掴んだ。


 紫音はゾロを連れて部屋に戻ってきた。


「ゾロさん、なんとまぁ素早いこと」


 紫音は笑っていたが、ゾロの顔は笑っていなかった。


「紫音さん、あなたまさか・・・」


「そうです。もう行かなければなりません」


「そうですか」


 そう言ったあとでゾロは、思いつめた顔で続けて言った。


「私も一緒に行けませんか。あなたの体に触れていれば、私もあなたの行くところへ行けませんか」


 紫音は驚いたが、すぐに


「それは駄目です。あなたにはこれから大事な役目があります」


 そう言って荷物を抱えて主屋に向かった。


 主屋では、昼食前の用意が整っていた。


「あら、紫音。ちょうど良かった。今呼びに行くところだったのよ」


 紫音は、そう言うジャネットと、マイク、カレンお婆に


「実は・・・」


 と言ってこの世界から去ることを伝えた。


皆はいきなりの事で声を失っていたが


「嫌よ紫音、行かないで。行っちゃだめ。行かないで」


ジャネットが真っ先にそう言った。

 

紫音は黙っていた。


「ねぇ、なんとか言ってよ。嘘でしょ?せっかく仲良くなれたのに行ってしまうなんてあんまりよ」


 ジャネットは紫音の手を取って、その手を揺さぶりながら言った。


 ゾロが、そっと入ってきてテーブルの椅子に座った。


「ジャネット諦めなさい。仕方のないことじゃ」


 しばらくしてカレンお婆が言った。


ジャネットは椅子に座り、テーブルに突っ伏して泣きだした。


 紫音は抱えていた荷物をテーブルの上に置き


「ジャネットにと思って買ってきたのよ」


 紫音はそう言ってみんなの顔をじっと見つめてから、踵を返して主屋を出た。


 部屋へ向かう紫音の目から涙があふれてきた。


 紫音は部屋に入り、ベッドに横になってこの世界での今までの事を思い返していた。


 ベッドの周りには、カレンお婆、ジャネット、マイク、ゾロがそっと紫音を見守っていた。


 やがて、目を閉じた紫音の意識が薄れていき、それと同時に紫音の体も消えていった。




ー完ー

拙い話に最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。


私の好きな、有名な賞の選考委員をしている作家が

「みんな嘘をつくのが下手だ」

とも

「花も実もある嘘」

とも言っていましたが

確かにそうだと思います。


もっと考えを煮詰めて、書き込むべきところがあったと思いますが、今は毎日文章を書いて力を付ける時期だと思い、書いてしまいました。


さて、次回作を近日中に出します。

題は


「妄想の世界で救世主になるんだ」


とか、そんな感じの題名です。


自ずと内容もわかろうかと思いますが。


よければ次回作にもお付き合い下さい。


ありがとうございました。


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