お婆さんの夢1
「でも、人は上部だけじゃ分からないよ」
マイクの言葉に少し考えていたジャネットは
「そうね。もう少しどんな人か見てみるわ。」
と答えた。
「前に付き合ってほしいと言われてから、まだ返事はしてないんだろ?」
「うん。今は家の事があるから、とてもそんな暇はないって断ったのよ。でもジャンはその気になるまで待ってるって言ってたわ。」
「そうか。俺は良い奴だと思うけどな。確かに気の弱いところはあるけどね。」
ジャネットは兄の言葉には答えず、紫音に話しかけた。
「どう?料理は口に合いそう?」
「えぇ、とっても美味しいわ。でも私の為にこんなご馳走を作ってもらって、何か申し訳なくて」
「まぁ、そう気にせんでもええ。」
それまで黙って料理を食べていたカレンお婆が言った。
「わしがジャネットに言って用意させたんじゃ。遠慮なく食べて、元気になることじゃ。それが一番大事じゃからのぅ。」
「ありがとうございます。」
「実はそなたに話しておかねばならんことがある。その話を聞いてもらってから、そなたの返事を聞きたいんじゃ。」
カレンお婆は、そう前置きして話し出した。
「わしは若い頃から変わった夢を見ることがあっての。それも寝ている時ばかりではのうて、起きている時も見るんじゃ。まるで白昼夢の様にな。そしてその夢が現実に起こるんじゃよ。予知夢と云うらしいが、最初はその事を人に言っても信用されなんだ。じゃが、わしの言った事が現実に起こると、皆は信用せざるおえなんだ。しかし、同時に気味悪がられてしもうてな。それからわしは、あまり夢の事を人に言わんようにした。大事なことだけをそれとなく言うようにしたんじゃ。」
カレンお婆はそこまで言うと一息ついて料理を口に入れ、食べ終わると又話し出した。
「わしの夢の事はこの子達もよう知っとる。」
「そうね。お婆様の見た夢は、外れた事がないわ。」
「確かに、お婆様の夢は現実に起こるね。お陰で随分助かってる事が多い。」
ジャネットとマイクが言った。
「この子達はわしの見る夢で、世の中には不思議な事があるのは分かっとるし、これから不思議なことに出会うても、驚きはせんじゃろう」
カレンお婆は、紫音を見た。
「わしはここ最近、何度も同じ夢を見た。その夢はこの子達には話さんかったがの。その夢というのは、空から目映く光り輝きながら、何かが降りてくるんじゃ。最初はそれが何か分からんかった。じゃが、何度も同じ夢を見ているうちに、段々とそれが見えてきた。そして、最後の夢ではっきりと見えたんじゃ。それは、紫の翼を持った髪の長い女性じゃった。わしはその女性を神様じゃと思った。やれやれ、わしにもようやくお迎えが来たかと思い、手を合わせたがどうも違うようじゃった。」
カレンお婆はそこで、ふふっと笑った。
初めて聞くカレンお婆の話に、マイクとジャネットは食事も忘れ、食い入るようにカレンお婆を見た。
「そして昨日、山の中で倒れているおなごの夢を見た。それは、わしが何度も夢で見たあのおなごじゃったんじゃ。