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紫音の少女 郷愁  作者: 柊 潤一
流転の中で
39/41

ゴダの処置

 異次元から戻された兵達はゾロの部下が連れていき、二人はゴダをゾロの自室へ連れていった。


「ゴダよ、ベルグは今牢に入っている。しばらくは牢にいてもらって、それから今後の希望を聞くつもりだ。さて、お前はどうしたい?」


「俺を殺さんのか」


「ああ、殺さん。人間は誰かに、何かに必要とされている間は死なん。するべきことが終われば死ぬ。それが寿命だ。それを、戦争に勝った勝者だからといって敗者を殺すのは人間の傲慢だ」


 それを聞いたゴダはしばらく考えていたが


「確かにそうかもしれん。しかし、それは理想論だぞ」


と言ってゾロを見た。


「理想論で結構じゃないか。理想を追わなくてどうする。ただ、俺は性急に理想を実現させようとは思わない。確実に出来ることをやる積み重ねが大事だと思っている。遠回りのように見えてもな」


「ふむ。しかしベルグは、あれはあれで考えていたのだ。この国の富を増やすには領土を広げないとだめだとな。

 俺はそういう事には興味はなかった。ただ、自分がどれだけのことが出来るのか知りたかったのだ。普通に考えれば分かることを、分からないやつが多すぎる。そんな奴らがのさばっているのも我慢出来なかったしな。しかし・・・お前ともっと話し合って考えてみたい。取りあえず、腹が減った。なにか食わせてくれぬか」


「おお、これは気が付かなかった。いま何か持ってこさせよう」


 ゾロはそばにいた部下に食事を用意するように言った。


 その時に話の区切りがつくのを待っていた紫音がゾロに耳打ちした。


「戦いも、ひとまずはこれで終わったと思いますから私は帰ります」


 ゾロは名残惜しそうな目で紫音を見ていたが


「そうですか。引き止めるわけにもいきますまい。おお、そうだ。帰る前にもう一度、国民の皆に話かけるようにしてもらえませんか」


「ああ、そうですね。わかりました」


 紫音は、今度は頭の中に話しかけるのではなく、空気を圧縮して膜を作り、それで巨大なラッパを作って先の広がりを空からこの国へ向け、筒の途中に空気の膜で声を増幅させるようにして、ラッパの口をゾロの前に待ってきた。


「さぁ、どうぞ」


「ん?これに喋ればいいのですか?」


 ゾロの目の前には、すりガラスのような筒があった。


「ええ、空からあなたの声が降ってきますから、みんな驚くと思いますけど?」


 そう言った紫音はいたずらっぽく笑っていた。


 ゾロはその顔をみてドキッとしたが、慌てて神妙な面持ちで目の前の筒に話しかけた。


「国民の皆さん、私はゾロです。」


 この国の皆はいきなり空から大声が降ってきたので何事かと驚いていたが、ゾロの声だとわかるとみんな耳をそばだてた。


「我が革命軍は国王軍に勝利することが出来ました。これも皆さまのお力添えのおかげと思い、感謝しております。これよりは、みな共々に力を合わせてこの国を立て直していこうではありせんか。まずは、みなさんの声を広く集めるために、みなさんの代表を決めたいと思っています。あとのことはまたお知らせしますが、我が国の戦は今日で終わりました。今夜は我が国の前途を祝してみんなで祝おうではありませんか。以上!」


 ゾロの話が終わってみんなは歓声を上げた。


 革命軍に期待を寄せてはいたが、苦しい時代はまたまだ続くと思っていた。


 それが今日いきなり終わってしまったのだ。


 この国の今日の夜は、そこかしこで祝を催す人々で賑わっていた。


話が終わりゾロは紫音に言った。


「紫音さん、また来てもらえませんか」


「ええ、私の今していることが終われば、また様子を見に来ますので」


「わかりました。お待ちしています」


 紫音は部屋に戻ると、ほっとした面持ちで椅子に座った。


今日の朝に出て戻っただけだったが、何日も部屋を空けていたような気がした。


外はもう、夕暮れになっていた。


紫音は立ち上がり、主屋に向かった。

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