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紫音の少女 郷愁  作者: 柊 潤一
流転の中で
38/41

戦いが終わり

 ベルグを連れて砦に帰ってきたゾロと紫音は、急ごしらえの牢が出来るまでベルグと話していた。


「さて、ベルグよ。お主はもう国王ではなくなったがこれからどうしたい」


「わしを殺さぬのか」


「殺したくない。こうなったのもお主の運命とはいえ、お主にはまだ何かやることがあるはずだ」


「わしの運命か。わしが何をした?領土を広げようとしたのはこの国の為じゃぞ。そりゃあ、国民には苦しい思いをさせたかもしれん。だが、それも一時のことじゃ。国が大きくなれば、国民も潤うだろう」


「それは違いますね」


 その時紫音がベルグに言った。


「目的は国民の為だとしても、武力を使って領土を広げる事は、他人の不幸の上に自分の幸せを築くことになります」


 そう言ってから紫音はベルグの目を覗き込んだ。


 ベルグは紫音の紫色の目に見つめられすぐに眠ってしまった。


 ん?ここはどこだ。

 わしは寝ていたのか。


 ベルグは目を覚まして周りを見た。


 どこかの村のようだった。


 と突然、うぉーっという叫び声と共に兵がやって来て村の人間を殺し始めた。


 村は一瞬にして殺戮の場となった。


 そして、ベルグも向かってきた兵の剣に体を貫かれ、体に激痛が走り息絶えた。


 ベルグは次に戦いの場にいた。


 恐ろしさに震えながら、向かってくる敵と切り結ぶうちにベルグはつまずき転んだ。


 そのベルグの喉元に敵の剣が突き立てらて、苦痛のうちにベルグは息絶えた。


 次にベルグは幼い子供になっていた。


 目の前では蹂躙する兵に人々が次々と殺され、そして、目の前で両親が殺されていった。


 ベルグは何度も何度も同じよぅな光景を見せられていた。


 そして心の中で、こんなことはもう嫌だ、と叫んだ時に、はっと目がさめた。


 目の前には自分を見つめる紫音の目があった。


「争いというものが、どういう事かわかりましたか」


 ベルグはぐったりと項垂れたまま黙っていた。


 やがて、牢が出来上がったとの知らせがあり、ベルグは牢に移された。


「さて、そろそろゴダと兵達の様子を見に行きましょうか」


 紫音がゾロに言った。


「え、奴らは死んだんじゃないんですか」


「ええ、地面に飲み込まれたと見せかけて、違う次元に移してあります」


「ほぉ、それじゃ見に行きましょうか」


 紫音とゾロは兵を連れて砦の外に出た。


 ゴダ達は地面に飲み込まれたあと気を失っていたが、しばらくして目を覚ましていた。


 そして周りを見回したがそこは砦の前のままだった。


 なんだ、あれは幻だったのか。


 そう思いながら、隊列を立て直すために兵達の先頭に歩いていったが、何かおかしい。


 足は確かに動いているのだが前に進まない。


 周りの兵を良く見てみると誰も動いていない。


 あがいて足掻いて、どれほどの時間が経ったのかもわからないままゴダは疲れてその場にへたり込んでしまった。


 彼らは時間の存在しない次元に飛ばされていた。


 それは、一枚の風景の中に閉じ込められたようなもので、時間がない限りはいくら歩こうが移動しないのだった。


 ゴダは、どうすればいいかも分からないままぼんやりしていると、突然空が裂けてそこから二つの大きな顔が覗いた。


 紫音とゾロだった。


 そして、ゾロの辺りをつんざくような大きな声が聞こえた。


「居心地はどうだ」


 ゴダ達は居心地どころではなく、一刻も早くここから出たかった。


「ベルグ国王は革命軍が捕まえた。いま、牢に入れてある。城もなくなったぞ。軍神が地中に埋めてしまったわ。そなた達にはもう帰る城もない。わしらと共に新しい国を作るのに協力するのだ。よいか」


 そして、顔が消えた次の瞬間にゴダ達はもとの砦の前に戻り、周りには革命軍の兵士が取囲んでいた。




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