攻城
国王軍が飲み込まれたあとの地面は、地響きを立てながら元のように閉じた。
すべてが終わり、まだ声も出せずにいる兵達にゾロは
「皆の者、見たか。天は我々に味方しているのだ。それは何故か。ひとえに我々がこの国を安穏にせんと行動している故である。いま新しい仲間が、我々と行動を共にする為に加わった。元は敵であったとはいえ同じ国民である。そして今は目的を共にする仲間である。皆の者、共に一丸となって良い国を作っていこうぞ」
と言った。
ゾロの話が終わると、兵達から歓声が沸き起こり、たくさんの剣と拳が空に向かって突き上げられた。
いま、革命軍は二万の軍勢になっていた。
「それでは、城へ向かおうぞ」
ゾロの言葉と共に、紫音は城への巨大なゲートを砦の前に開けた。
おぉ、とざわめく兵の先頭で二体の軍神がゲートをくぐり、続いて多くの兵がゲートをくぐっていった。
城では、目の前の空間がいきなりぱっくりと割れ、そして広がり、中から巨大な軍神が現れ、その次に革命軍が次々と出てくる様子に驚いていた。
城壁の上からその様子を見ていたベルグ国王は肝をつぶした。
「な、何じゃあれは」
やがてすべての兵が出て、その中からゾロが先頭に現れた。
「そこにおるのはベルグではないか。ちょうど良い。これを見よ。この二体はこの国を守る軍神である。この国を安穏なものにしたいという我々の思いに感応して助けに現れたのだ。貴様にはもう天命はない。潔く非を悔いて投降するが良い」
「何を言うか。どうせ妖しげな紫音とかいう娘が作った幻であろう。そのような物にわしは驚かぬわ」
その時二体の軍神が、むううと呻き、手に持った鉄の棒で地面を叩いた。
どぉん、という音と共に城はぐらりと揺れた。
「見たか、幻ではない。城の兵に告ぐ。そこにおる、ベルグ国王は、おのが欲望のために国民をないがしろにし、苦しめてきたのはそなたらも知っておろう。その所業ゆえに天も彼を罰するのだ。この国を愛するならば、我らの元へ来て共にこの国を作り直していこうではないか」
ゾラの言葉と共に城門の扉が開き中から兵が次々と走り出てきた。
彼らは、横暴なベルグ国王に嫌気がさしていたが、負けるとわかっている革命軍に参加する勇気もなく、国王軍に留まっていた者達だった。
やがて、出てくる者がいなくなった扉は中から閉じられた。
「ベルグよ。この後に及んでも、まだおのが欲望を捨てきれぬか」
「ぬかせ。この城はそうやすやすとは落とせぬ」
「そうか、ならばゴダの待つ地獄へ落ちるが良い」
ゾロの言葉と共に、二体の軍神が今度は地面を叩き続けた。
どぉん、どぉん、どぉんという音が響き、敵も味方も固唾を呑んでいると、いきなり城の周りの地面からごぉぉぉぉ、という音と共に、土が噴水のように吹き出してきた。
そして、吹き出した土が山の様に高くなっていく度に、城がぐらぐら搖れながら、ずっ、ずっ、ずっと沈んで行った。
城壁の上のベルグ国王は慌てふためいていたがなす術はなかった。
城はどんどん沈んでいき、その度に城の中からわらわらと兵が逃げ出して来た。
そして城がすべて土の中に隠れてしまうと、周りの土が雪崩を打ってその上にかぶさっていった。
いま、城があったその場所は小高い山になってしまった。
やがて土煙が止み、その中では命からがら逃げ出たベルグ国王が膝をつき、呆然として城のあった場所を見ていた。
しばらくして、ゾロがベルグ国王のそばに寄っていった。
ベルグ国王はじっとゾロを見上げていたが、ぽつりと
「好きにせい」
と言って黙った。