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紫音の少女 郷愁  作者: 柊 潤一
流転の中で
36/41

現れた軍神

「国民の皆さん、私は革命軍のリーダー、ゾロです」


 ゾロの話し声はこの国の全ての人の頭の中に聞こえた。


 そして皆、何事かと最初は驚いていたが、話が進むにつれ、じっとゾロの話に聞き入った。


 もちろん、ベルグ国王にも聞こえ、彼は目を白黒させながら聞いていた。


「いま、天の力を借りてあなた方に話しかけています。われわれ革命軍は、今からベルグ国王軍と雌雄を決する戦いを始めます。立派だった先王と違い、ベルグは今まで己が野心を満たすために重税を課し、国民を苦しめてきました。私はそれを正そうと立ち上がりました。これは、私自身のためではない。ひとえに愛するこの国の国民のためなのです。この戦に私は必ず勝ちます。そしてもう一度、先王の時のような豊かで平和な国にします。どうか我々を応援してください」


 ゾロの話が終わるやいなや国中から歓声が起こり、とどろいた。


 ベルグ国王は、あいつは何を血迷ったことを言っておるのだ、と思ったが同時に背中に怖気が走った。


 あいつはなぜこんなことが出来る?


 話し終わったゾロは砦の前にいるゴダに


「非はお前達にある。これ以上国民を苦しい目に遭わせることは出来ぬ。悔い改めて我が軍に降参せよ」


 と言い放った。


「何を言うか。我々二万の軍勢に対し、たかだかそれほどの人数で勝てると思うているのか」


 その時、砦の前の国王軍を挟んだ左右に高々と土煙が舞い上がった。


 土煙が煙幕となって見えないその中では、凄まじい勢いで地面が削られて一体の像が作られていた。


 そして、出来上がったその像がむくりと起き上がり、立ち上がった。


 それは高さ三十メートルはあろうかという、軍神の像だった。


 国王軍の両側に立ち上がった二体の軍神の像は、二三度身体を震わせ土埃を落とし、ズシンと地響きをたてながら砦の前まで来ると、砦を背にして国王軍の前に並んで立った。


 その顔は怒りに燃えていた。


 そして、右の軍神の口から、辺りを圧する大音声が放たれた。


「われはこの国を守る軍神である。いま、ゾロの乞いにより、この国を滅ぼさんとする悪しき輩を誅するためにここに参った」


 続いて左の軍神が言った。


「この国を悪しきものにするはうぬらぞ。だが、全ての元凶はそこのゴダとベルグである。よって、共にこの国を正そうと思う者は我が方に参れ。来ぬものは地獄に落ちると知るがよい」


 そして二体同時に


「今から十、地面を叩く。叩き終えるまでに決めい」


 と言い、手に持った鉄の棒で地面をズシンと叩き


「さあ」


 と言っては地面を叩き


「さあ」


 と言っては地面を叩き、その度に地面は大きく揺れた。


 そして叩く回数が増えるにつれて、革命軍の方へ逃げてくる兵の数が増え、九回目になり殊更の大音声で


「地獄にゆくか!」


 の叫び声と共に地面が叩かれた時、我慢の堰を切ったように国王軍の兵が革命軍になだれ込んできた。


 そして最後に


「ならば、ゆけ」


 という声と共に叩かれた地面が、地響きをあげながら国王軍に向かってぱっくりと割れていった。


 なす術もなく半ば呆然としていたゴダは、ひえぇぇ、という叫びともつかぬ声をあげながら、割れた地面にのみ込まれる兵達と共に落ちていった。

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