戦いの朝
次の日の朝早く、砦では城へ行く準備が進んでいた。
紫音は、幹部とともに進み具合を監督していたゾロに話しかけた。
「城の様子が気になるので、一緒に偵察に行きませんか?」
「ああ、そうですね。見に行きましょう」
ゾロは、後を頼むと幹部に言いおいて、紫音と一緒に砦の自分の部屋に行き、紫音と共に意識を城へ飛ばした。
そして城に近づき、まず空から眺めてみると城の様子が何やら慌ただしい。
更に城に近付いてみると、城の前におびただしい数の兵が整列しており、城から出てくる兵がそれに加わり益々その数は増えていった。
「これは、戦の準備だな。あの様子だと砦を攻めに来るようだが」
「そうですね。かなりの人数ですが、城に兵は何人ほどいますか」
「そうですな。おおよそ、五万といったところでしょうか」
「それじゃ、整列しているのはその半分くらいでしょうね。残りの兵はどうするつもりかしら。国王の部屋へ行ってみましょうか」
紫音はそう言い、二人の意識は国王の部屋へ入っていった。
国王の部屋ではちょうどベルグ国王とゴダが話をしているところだった。
「どうだ、そろそろ出発できそうか」
「そうですね。あと少しで揃います」
「よし、頼むぞ。わしは兵を揃えてここで待機しておるからな。もし奴らが来たら手はず通り狼煙をあげるからすぐ戻ってこい。挟み撃ちにしてくれるわ」
「わかりました。それではこれで失礼します」
ゴダは部屋を出ていった。
「そういう事か」
「戻りましょう」
二人は部屋へ戻ってきた。
「奴らも今日、ここへ攻めてくるつもりだったのか。紫音さん、どうしましょうか」
「そうですね・・・」
「国王軍が来るまで待ちましょう。それから城へ攻めに行きます」
「わかりました。私はみんなにその事を伝えてきます」
紫音は、部屋に残ってこれからの戦について考えをまとめていたが、ゾロが部屋に戻ってくると彼にたずねた。
「ゾロさん、この戦が終わったあと、城はそのまま使うつもりですか」
「いや、あそこは町から離れていて場所が良くないから使うつもりはないですが」
「そうですか。じゃ、潰してしまっても構いませんね」
「ええ、お好きにどうぞ」
ゾロは笑いながら返事をした後で、紫音に何事かを頼んだ。
しばらくして、遠くに国王軍が見えたことを幹部が告げに来て、二人は砦の物見台へ登り、国王軍がやってくるのを待った。
そしていよいよ、砦の前に国王軍がやってきた。
先頭にいるのは、ゾロの腹心のゴダだった。
ゴダの声が聞こえてきた。
「そこにいるのはゾロではないか。久しぶりだのう」
「おお、そなたも相変わらず悪巧みばかりしておるようじゃな」
「ほざけ。お前にはもうのぞみはないぞ。これだけの兵の数に勝てると思うのか。素直に降参すれば今なら許してやる。あきらめて出てこい」
「降参するのはお前の方だ。お前とベルグの国民を苦しめる行いは天も許すまい。今からそれを分からせてやる」
そう言ってゾロは、先程頼んだことをやってもらえるよう、紫音に目配せをした。
紫音は無言で頷くと、自分の耳に入ってくるゾロの声を、この国の国民すべての頭の中に届くように意識を広げた。
やがて、ゾロが話し始めた。