戦いの前夜
砦では、宿舎の割り当てや夕食などの慌ただしい時間が過ぎ、メンバーは宿舎で各々の時間を過ごしていた。
その中で紫音とゾロは、今後の戦い方を相談していた。
「紫音さん、私は出来れば血を流さずに戦いを終わらせたいのです。革命軍だけではなく、国王軍も犠牲者を出したくない。彼らも同じこの国の人間ですし、誰も苦しい思いをしたくはないはずです。そして、出来るだけ早くこの戦いを終わらせたい」
「わかりました。では、明日城へ攻めに行きましょう」
「明日ですか?」
ゾロは呆気にとられていた。
「大丈夫です。私に任せてください」
「では、明日の朝早く、戦の用意をさせます」
そう言ってゾロは、そのことをメンバー全員に伝えるために部屋を出ていった。
紫音は、自分の部屋に戻っていった。
その頃、城の方ではベルグ国王とゴダが砦を見に行った者からの報告を聞いていた。
「ふむ、砦に革命軍が集まっているというのは本当なんじゃな。紫音とかいう娘はいたか」
「いえ、そこまでは分かりませんでした」
「そうか。よし、下がってよいぞ」
「ゴダよ。どう思う?その娘は本当にいると思うか?」
「わかりません。わかりませんが、今は居ると考えて作戦を立てた方がいいと思います」
「そうじゃな。そう考えると厄介なのは、わしが城を空けた隙に奴らが来て、城を乗っ取られることじゃ」
「それを防ぐために、国王様はこの城にいていただきましょう。奴らの数はせいぜい二千人ほどです。それに比べてこちらは5万の兵がいます。半分の兵で砦を攻めに行っても充分勝てると思います」
「そうじゃな。よし、そうしよう。明日にお前が兵を引き連れて砦を攻めに行ってくれ。戦が始まっても奴らが城へ来ないようなら、わしも砦に向かうことにする」
「承知しました」
こうして、図らずもお互いが明日を決戦の日と決めた。
しかし、ベルグ国王はこの時はまだ、紫音の力をあなどっていた。
そのことを明日に日に思い知らされることとなる。