捕虜を助ける
ゾロと紫音は家の中へ入っていった。
そこは、革命軍のアジトで五人の幹部がゾロの帰りを待っていたが、ゾロと一緒に入ってきた紫音を見て、みんな怪訝な顔をしていた。
ゾロは紫音を紹介した。
「みんな、この方は紫音さんと言ってな、これから俺たちの活動を手伝ってくださる方だ。見た目は普通の娘さんだが、特別な力を持っておられる」
「紫音です。よろしくお願いします」
みんなそれぞれ挨拶を交わしたあと、一人が言った。
「リーダー、厄介なことになった」
「なんだ。どうした?」
「今日の夕方、隊員が五人、国王軍に捕まった。幸い、下の者たちだからここの場所は知らないが、組織の事は吐かされているだろう」
「ある程度のことを知られるのは仕方ない。しかし、なんとかして助け出してやらないと、見せしめのために処刑されるだろう」
「どこに連れていかれたかわかりますか?」
詩音が聞いた。
「おそらく城の中だろう」
「では、助けに行きましょう」
幹部達は、事も無げにそう言う紫音を驚いて見ていた。
「さっきと同じように、城の場所を教えてもらえますか」
「わかりました」
ゾロはそう言ったあとで幹部達を見て
「これから起こることは、誰にも言うな。紫音さんのことは秘密にしておくんだ」
と言った。
ゾロと紫音は、椅子に座り目を閉じて意識を空に浮かばせ、ゾロの案内で城までやってきた。
そして、城の中を見て回ったが、隊員達が囚われている場所はわからなかった。
紫音は隊員達を探しながら城の構造を頭の中に入れていった。
「見つかりませんな。紫音さん」
「そうですね。警備の兵から聞き出しましょう。一旦戻ります」
二人は目を開けた。
「今から二人で、城へ行って来ます」
紫音とゾロは立ち上がり手をつなぐと、幹部達の目の前から消えた。
ゾロと共に城のそばまで瞬間移動した紫音は、ゾロに少し待っていてください、と言って城の門を警備している兵の目の前に飛んできた。
そして、驚いている二人の兵の目をのぞき込み、立ったままで眠らせたあと、頭の中を覗いて隊員達が囚われている場所を探り、ゾロの所へ戻ってきた。
「場所がわかりました」
と紫音は言って、ゾロを連れて隊員達が囚われている牢へ飛んで行った。
牢の中では、突然目の前に現れたゾロと見知らぬ少女に、隊員達が驚いていた。
「リ、リーダー。リーダーですか?」
「しっ!静かに。警備の兵に聞こえる。話はあとだ。ここから出るぞ」
ゾロがそう言うと同時に、紫音は牢屋の中にアジトへのゲートを作り出していた。
それは、この現実の世界を写している鏡のような、別の次元へ入る空間を牢屋の中に開け、さらに別の次元からアジトへ入る空間を開けて、その二つをつなげてしまうという紫音の能力のひとつだった。
五人の隊員たちは何事かと驚くばかりだったが、ゲートの向こうを見てゾロが言った。
「あれは、アジトだな」
「そうです。さぁ、急ぎましょう」
シオンに急かされて皆はゲートをくぐった。
アジトでは幹部達が、部屋の中にいきなり現れた扉くらいの大きさの空間に驚いていたが、そこから次々とゾロと紫音と五人の隊員が出てくるのを見て呆気にとられていた。
紫音は、みんなが出たのを確かめるとゲートを閉じた。
城ではそのあと、捕らえた五人の革命軍が牢屋から忽然と消えていることに騒然としていた。