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紫音の少女 郷愁  作者: 柊 潤一
流転の中で
30/41

ゾロの決意

「私は、代々農家を営む家に生まれました。祖父の代までは人を雇っていて、かなりの規模の農地を持っていました。私が小さい頃に祖父はよく言っていました。土の声や、風の声、雲の声を聞くのじゃと。私の先祖はそういう能力を持っていたようで、祖父まではそれが受け継がれていました。ところが父にはそれがなかったのです。今では農地も減り、自分達が食べて行けるくらいの分しか作っていません。私にも祖父のような能力はありませんでしたが、別の能力を持っていました。それは、人から出ている気のようなものが見え、それを見ればその人が何を思っているか分かるのです。同じ様にこの国全体を覆っている人々の思いも分かります。この国は何年か前から苦しんでいる人々が多くなりました。それは国王の圧政が酷くなっているからです。私は、人々が苦しんでいるのを見るのが辛くなり、革命軍を組織しました。この国の人々が幸せに楽しく暮らしているのを見たいのです。みんなが苦しんでいるのを見て見ぬ振りは出来ません」


 ゾロが話し終わって紫音が言った。


「子供さんを小さい時に亡くされたそうですね」


「ええ、三歳の時に病気であっけなく亡くなりました。妻も私の実家で長い間患っています。時間を見つけて会いに行っていますが、気丈な性格で、私の事よりこの国のために働いてください、と言っています」


「そうですか」


 紫音は立ち上がり箪笥から砂金の入った袋を二つ持って来てテーブルに置いた。


「これを使ってください」


「これは?」


 紫音は袋を開けテーブルに砂金のつぶを出して見せた。


「資金もないのでしょう?これを軍資金に役立ててください」


「こんなものを貰っていいのですか?いったいこれはどうされたんですか?」


 紫音は自分の能力を使って集めたことを説明した。


「自分の分は取ってありますし、私にはたくさんのお金は必要ありません」


「そうですか。ではありがたく頂きます。本当を言うと、今はみんなが持ち寄ったお金でやりくりしていますから、これだけのものがあればかなり助かります」


「それから、私もあなた達の活動を手助けします。自分の事は吹っ切れました」


「おお、そうしていただけるとありがたい」


「さて、それでは私はこれで失礼します。私の帰りを待っているみんなの事も気になりますし」


「私の為にすみませんでした」


「いえいえ、私も長い間の疑問がとけて自分が何者か分かりました」


「送りましょう。場所を教えてください」


 紫音はそう言ってゾロの手を取り


「何も考えずにいて下さいね」


 と言った。


 次の瞬間二人は空からカレンお婆の家を見ていた。


「これは・・・」


 ゾロがそう思った時にシオンの声が頭に飛び込んできた。


「今は意識だけで空にいます。あなたの行きたい方へ行こうと思ってください。そうすればそちらの方へ飛んで行けます」


「分かりました」


 ゾロはそう言って空を見上げ、月の位置と星の形を頼りに方角を見定めてその方へ行こうと思った。


 その途端に周りの景色が変わり、ものすごい速さでゾロは飛んでいた。


 やがて、目指す家が見つかりゾロは、ここです、と言って目の前で止まった。


 そこは、ジャンヌお婆のいる町から、さらに東へ行った町の町外れにある家だった。


「わかりました」


 という紫音の声がして、ゾロははっと我に返った。


 そこは紫音の部屋だった。


「じゃ、行きましよう。立ち上がってください」


 二人は立ち上がり、次の瞬間にはその家の目の前にいた。













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