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紫音の少女 郷愁  作者: 柊 潤一
流転の中で
27/41

ゾロに会う

 その宿屋はすぐに分かった。


 中に入りゾロの名前を告げると、宿屋の主人はゾロを呼びに行き、すぐにゾロは手に何かを持って出てきた。


「おお、わざわざ申し訳ありません。ここでは何ですから、ジャンヌお婆さんの店へ行きましょうか」


 二人は表へ出てジャンヌお婆の店へ向かった。


「来られるにしてももう少し後だと思ってましたのに、随分と早く来られたんですね」


「ええ、あの時は気がせいていたもんですから、ろくにお礼も申し上げられなかったのと、あの後で思い出したことがありましてね。ひょっとしたらあなたと関係があるかも知れぬと思い、急いでやって来ました。私にも関わることなのですが」


 ジャンヌお婆の店に着いた二人は中へ入った。


「お婆さん戻ったわよ」


「あれまぁ、ゾラさんも一緒かえ」


「お婆さん、ちょっとお店借りていい?」


「ああ、ええぞい」


 ジャンヌお婆は玄関の看板を裏返しにして戻ってきた。


「すみません。ご迷惑をおかけします」


「なんの、今の時間は暇じゃからええんじゃよ。さて、わしも一緒におってええんかの?」


「ええ、お婆さんにも是非聞いていただいて、ご意見をお伺いしたい。これは我が家に代々伝わる話なのですが」


 そう言ってゾロは話し出した。


「突拍子もない話なのですが、我が家の先祖はこの星の人間ではないというのです」


 ジャンヌお婆と紫音は、先日ジャンヌお婆が紫音を占った時のことを思い出し顔を見合わせた。


「違う星へ行くはずだったのが、何かの事情でこの星にやって来たというのです。それは私の先祖だけでなく、多数いたらしいのです。そして、その人達は人によって違うものの、何らかの特殊な能力を持っていたというのです。私にはそういう力はありませんが、時々不思議なものを感じる時があります。それはなんと言うか、ひとつの集団の未来が分かる時があるのです。もしこの話が本当なら、私にもそういう能力が多少残っているという事になるのかも知れません。そして、これなんですが」


 ゾロはそこで話を区切り、持っていた荷物の包みを開けた。


 それを見て、ジャンヌお婆と紫音は驚いた。


 先日、古物屋でジャンヌお婆が買い求めた物と同じ物だったのである。


「そ、それは?」


 ジャンヌお婆と紫音が同時にゾロに尋ねた。


「これは先祖から伝わっている物で、大切な物らしいのですが、何に使うのかまったく分かりません。ただ、このあいだ紫音さんが不思議な力を使った時の様子が、ここに描かれているものと似ているなと思ったのです」


 それを聞いてジャンヌお婆が慌てて店の奥の棚から先日買ったものを持ってきた。


「おお、これは?」


「これはお前さんと会うた町の古物屋で買ったんじゃ。古くて珍しい物じゃが、さして値打ちもなさそうで迷ったんじゃがな。何故か心惹かれたんじゃ」


「そうでしたか。しかしこれは・・・」


 ゾロはそう言ってレリーフの描かれた本のような物を二つ並べた。


 それは同じ材質で同じレリーフが描かれていたが、描かれている人物とおぼしきレリーフが、ゾロの持ってきたものは右を向いて、ジャンヌお婆の物は左を向いていた。


 その二つの物を仔細に調べていた紫音が声を上げた。


「これは・・・この横の模様はお互いに噛み合うようになっているようです」


 紫音の言うようにゾロの物は右側の側面に、ジャンヌお婆の物は左側の側面に模様があった。


 それは、一つだけで見ると何の変哲もない模様だったが、二つを見比べてみると模様同士の凸と凹が噛み合うようになっていた。


「合わせてみましょうか」


 紫音が言った。


 三人はお互いに目と目を見交わした。


 紫音は、模様が噛み合うように二つの物を合わせた。




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