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紫音の少女 郷愁  作者: 柊 潤一
流転の中で
26/41

やって来たゾロ

 着物を手に入れた紫音は、次の日から目星をつけた町で色々な人から話しを聞いて回った。


 それによると、この国では近年天変地異が起こり、作物が実らず飢饉が起こり、疫病が流行っていた。


 人々の心は荒廃し、この世は辛く苦しい世の中だから、我慢をして死んでから天国に生まれ変わる事を祈ろうという考え方が広まった。


 この考え方は為政者にとっては好都合だった。


 政治に対し不満を持つものがいなくなるからである。


 そしてその考え方を広めている人物を優遇した。


 しかし、その考え方は間違っていると言い出す者が現れた。


 それは、今が苦しみや不幸のままで、死んで生まれ変わったとしても苦しみが続くだけで、幸せにはなれない。


 今の苦しみや不幸を乗り越えて幸せな姿になってこそ、次に生まれ変わっても幸せになれる。


 人間には、どんな辛い事や苦しい事も乗り越える力が本来備わっているのだから、その力を出して苦しい環境を変えていかなければならない。


 今起こっている疫病や飢饉をなくすためにも、間違った考え方を止めなければならない。


 というものだった。


 その考え方は心ある人々の中で徐々に広まっていった。


 慌てたのは為政者だった。


 こんな考え方が広まれば政治に対して不満を持つものが現れ反乱が起こるかもしれない。


 為政者は、新しい考え方を広めるもの達を弾圧していった。


 今のこの国はそんな世情だった。


 紫音は、その新しい考え方を広めている人に会おうと思い人々に聞いて回ったが、誰もその人のことを口にはしたがらなかった。


 そしてある日のこと。


「紫音、お婆さんが呼んでるわよ」


 昼食を終えて自分の部屋にいると、ジャネットが呼びにやってきた。


「あら、ありがとう。何かしら」


 紫音は主屋のカレンお婆のところへ行った。


「お婆さん、呼んだ?」


「おお、紫音。今届いたんじゃがの」


 カレンお婆はそう言って手紙を見せた。


 それはジャンヌお婆からだった。


 手紙の内容は、芋を探しに行った時に出会った革命軍のリーダーのゾロが、今日店にやってきて紫音に話したいことがあるから会いたいというものだった。


 彼は、紫音が来るまでオルフェの町に逗留しているとの事だった。


 紫音は、東の国で新しい考え方を広めている人に、一日でも早く会いたいと思っていたが、待っているというゾロに会わないわけにはいかなかった。


「なんと書いてあるんじゃ?」


「このあいだ赤い芋を探しに行った時に革命軍のゾロという人に会ったのよ。で、ジャンヌお婆さんの店を教えたんだけど、その人が来て私に会えるまで待ってるんですって」


「ほお・・・」


 紫音は、けが人を助けたことを、かい摘んでカレンお婆に説明した。


「その人がこの家に来るといけないと思ってね、カレンお婆さんの住所を使わせてもらったの」


「それじゃぁ、行かずばなるまいのぉ」


「そうね。それじゃ、ちょっと行ってきます」


 紫音はそう言ってすぐにジャンヌお婆の二階の部屋へ飛んでいった。


 二階にジャンヌお婆はいなかったので紫音は階下の店へ声をかけた。


「お婆さん、いる?」


「誰じゃ、二階におるのは」


 すぐにジャンヌお婆の声がした。


「私よ。紫音よ」


「おお、お前さんか。ちょっと待ってくれ」


 ジャンヌお婆は店でなにかゴソゴソしていたが、すぐに二階に上がってきた。


「誰もおらんはずなのに、声がしたからびっくりしたわえ」


「驚かせてごめんね。手紙を見たからすぐに飛んできたのよ」


「うむ。あのゾロという人が大事な話があると言うてな。馬を乗り継いでここまで来たそうじゃ」


「そうなの。で、今はどこにいるって?」


「近くの宿屋じゃ。すぐ分かるから行ってみるがええ」


 紫音は店をでて宿屋へ向かった。


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