赤い芋を食べる
「お婆さん、今帰りました」
縫い物をしていたカレンお婆は、紫音の声で手を止めて顔を上げた。
「おお、紫音かえ。どうじゃった、芋は見つかったかえ」
「ええ、買ってきましたよ。ほら」
紫音はそう言って袋から芋を取り出し、テーブルの上に並べて見せた。
「ほぉ、ほんに紅い芋じゃの。さっそく食べてみようか。芋というからには、蒸せばええんじゃろうな」
カレンお婆は台所へいき芋を蒸す準備をして戻ってきた。
「さて、ジャンヌよ。久しぶりの遠出で疲れたじゃろ」
「なんの、どおってことありゃせんわい。しかし、かなり遠い所まで行ったみたいで、ちと寒かったわ」
「ほほお、紫音や、そんな遠いところまで行ったのかえ」
「ええ、歩いて行けば何ヶ月もかかるでしょうね」
「ふむ、ご苦労じゃったの。お、湯が沸いたぞ。どれ」
カレンお婆はそう言ってテーブルの上から甘芋を五つ取り、台所の鍋へ放りこんだ。
そうこうしている所へジャネットとマイクが農作業から戻ってきた。
「あら紫音、帰ってたのね。ジャンヌお婆さんもお疲れさま」
「ジャネットや、いま紫音が持って帰って来た芋を蒸しとるでな。蒸し上がったら食べてみようぞ」
「あら、楽しみね」
「ふーん、これか」
テーブルの芋を手に取って呟いたマイクに、紫音は店の主人が言っていたことを伝えた。
マイクは別の袋に入っていた蔓を取り出して眺めた。
「暖かい時期で、痩せた土地か。いまはどっちかと言うと暑い時期だからな。ちょっと遅いかもしれない。それに、痩せた土地なら、新しい畑はダメだな」
「マイクよ、あの場所がええじゃろ」
「そうだね。あそこは土が良くないから放ったらかしにしてたけど、いいかもしれないね。昼からさっそく耕してみるか」
「ご苦労じゃが頼むぞ。そうじゃ、そろそろ芋が蒸しあがった頃じゃないかの」
カレンお婆は台所へ行き、蒸しあがった芋をカゴに入れて戻ってきて、テーブルの上に置いた。
「さぁ、食べてみようぞ。熱いから気をつけてな」
みんなは芋を手に取り、皮を剥いて食べはじめた。
「アツッ!・・・きゃっ、何これ、あまーい」
最初に声を上げたのはジャネットだった。
「ほぉぉ、こりゃ甘いのぉ」
みんなは口をホクホクさせながら、甘い甘いと言って芋を食べていた。