紫音の秘密3
「むうぅ」
ジャンヌお婆は水晶玉から手を離し、宙を睨み腕組をして、何やらじっと考え込んでいた。
それから、水晶玉を上から横からと、いろんな角度で覗き込んだあと水晶玉に手を当てて
「ふぬっ」
と気合を発した。
水晶玉の中では赤、青、黄、三つの丸い物が出てきて、まるで生き物のように飛び跳ねていた。
「ほほお・・・元気に跳ねとるわい」
「ジャンヌよ、何をしとるんじゃ」
ジャンヌお婆の言葉を待っていたカレンお婆が、しびれを切らせてジャンヌお婆にたずねた。
「ん・・・いや何、水晶玉の具合を見とるんじゃ。お、そうじゃった。すまんすまん」
ジャンヌお婆は紫音に向き直った。
「おぬしの求めておる答えは東の方にある。おぬしは東の方に縁がありそうじゃな。東と言っても遠いぞえ。この大陸から海を超えて更に東の方じゃ」
「そこに何があるんですか」
「何かはわからん。分からんが、おぬしは何かの答えをずっと探し続けておるじゃろ。その答えがそこにはある」
「もうちっと、どの辺りとか詳しくはわからんかのぉ」
カレンお婆がたずねた。
「わしには分からん。が、そこへ行けばこの娘が自然に見つけるじゃろ。水晶玉のあれはもともとこの娘が出して見せたものなんじゃ。わしは手助けをしただけじゃぞえ」
そう言ってジャンヌお婆はまた水晶玉を矯めつ眇めつ眺め始めた。
「まったくこ奴は、面白いものを見つけるといつもこうじゃ」
カレンお婆はやれやれといった様子で苦笑いをした。
「ジャンヌよ、おぬし今晩わしんとこへ来んかえ。一緒に飯を食おうぞ。一人でろくなもんも食っとらんじゃろ」
「おお、それはええの。じゃがおぬしの所まで行くのが面倒じゃな」
「それは心配せんでええ。紫音があっという間に連れてってくれるぞえ」
「ほぉ、そうか。それじゃ行こうかの」
「よし、決まった。それじゃわしは市場で買い物をしてくるからの。戻ったら行こうぞ。紫音も一緒に来てくれんか」
カレンお婆と紫音は出ていき、市場で買い物を済ませ戻ってきた。
「戻ったぞ。ジャンヌよ行こうか。紫音やあれを頼めるかえ」
「わかりました」
三人は店へ降りて、紫音が店の中にカレンお婆の家へのゲートを作リ始めた。
「おお、そうじゃ。戸締りをしておこう」
ジャンヌお婆が玄関へ行っているあいだに、店の中にはドア一枚分の空間が現れ、向こうにはカレンお婆の家が見えていた。
戻ってきたジャンヌお婆が
「ほほぉ・・・」
と、感心して見ているのを
「さあ、行くぞえ」
とカレンお婆がせっつき、ジャンヌお婆は
「おお、そうじゃ。水晶玉を持っていかねば」
と慌てて水晶玉を抱きかかえ、三人はゲートをくぐってカレンお婆の家の前に出た。