紫音の秘密2
「わしの占いはまず、その人間の傾向を見る。
さっき言ったようにどの心が強いかじゃ。
それから水晶玉で過去にどんなことをしてきたか、今は何を思っておるかをみる。
あと、参考で生まれた年月や名前も見る。
生まれた年月は、そういう傾向を持っとるからその時にうまれるんじゃ。
そして名前は、その響きに応じたものが心の中に作られる。
それらを総合的に見てその人間がどんな者かを見るんじゃ。
そしてこの本じゃ」
ジャンヌお婆はそう言って、大きく分厚い本を開いた。
「これにはの、昔とこれからの星の動きがすべて載っておる。
そして今まで占ってきた人間が、いつどのような事をしてどうなったかを記録してあるんじゃ。
これを見れば、どんな傾向の人間がどういう星の動きの時に、どんな影響を受けるか分かるんじゃ。
わしはこれを見ながら、占う相手にアドバイスをする。
いつ頃どんなことが起きるか。
今の悩みはどうすれば良いか。
いつ頃解決するかが、ほぼ分かる。
しかしな、解決させるのは結局本人なんじゃ。
わしはな、誰であろうとどんな困難なことでも乗り越える力を持っていると思っとる。
それが最高の生命の状態じゃ。
ワシはそれを出せるように励ましておるんじゃ。
しかし、この娘がどういう傾向を持っとるか、わしには分からん。
ただ、分かっとるのはこの先この娘にとって重要な誰かが現れるということじゃ」
「それはいつ頃でしょうか」
紫音がたずねた。
「はっきりしたことは分からん。お前さんの傾向がわからんからの。しかしそんなに遠い先ではない」
「そうですか・・・」
「しかし、こやつにはちと酷じゃったな」
ジャンヌお婆は水晶玉を見ながらそう呟いた。
水晶玉の中には細かなヒビが入っていた。
「今までよう働いてくれたが仕方ない」
「私が直しましょう」
残念がっているジャンヌお婆にそう言って、紫音は水晶玉に手を当てた。
紫音の体から紫色の水蒸気が出て、弾けながら音を出した。
紫音は切れている水晶玉の鉱物のつながりをつなげ直し全体のつながりも強くして、更に鉱物自体も強くした。
水晶玉のヒビは消え、壊れる前よりさらに透明になっていた。
「おお・・・これは、なんという事じゃ。紫音や、礼を言うぞえ。良かった、良かったのお。これでお前もまたみんなのために働けるのお」
ジャンヌお婆は嬉しそうに水晶玉に語りかけていた。
「お婆さん、もう一度この水晶玉で見てもらえませんか」
「よし。それじゃもう一度見てみよう」
紫音とジャンヌお婆は水晶玉に手を触れた。
水晶玉はさっきのようにまた、様々な色を浮かべた。
しかし今度は、さらに鮮やかな色になっていた。
「おお」
ジャンヌお婆が感嘆の声を上げた。
様々な色は回転し始めそれが激しくなっていった。
「ふむ」
ジャンヌお婆はそう呟いただけで、今度は紫音を止めなかった。
水晶玉の中では回転していた色が消え、茶の色が平たく広がっていった。
そしてその上に赤い点が現れ、右の下から光の玉が現れ、上へ上がってきて赤い点を包んだ。
赤い点は光の中で大きくなっていき、やがて光は消え、赤い色は水晶玉全体に広がってから消えた。