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紫音の少女 郷愁  作者: 柊 潤一
向日葵の中で
15/41

ジャンヌお婆の占い

「この娘に頼まれたわけではないんじゃが、わしも気になっとるんでな」

 

 それからカレンお婆は、紫音から聞いた話と動物達との話、ジャネットから聞いた畑を作った時の話、峠での話をジャンヌお婆に話した。


「わしゃ、お前さんが真剣に占った時の凄さは知っとる。この娘にとってもお前さんにとってもええ機会じゃと思うてな」


「ふむ。よし、わかった」


 ジャンヌお婆はそう言って店から道具一式を持ってきた。


 テーブルの上に大きな水晶と不思議な模様が描かれたトランプと大きな分厚い本とノートが並べられた。


「さて、まずはそのトランプじゃが、それぞれ違う模様が描かれておって百枚ある。それを、何も考えずに縦に十枚、横に十枚、四角の形に並べてみてくれ」


 紫音はトランプに描かれた柄を見ながら、手早く並べていった。


「これでいい?」


「ほほぉ」


 ジャンヌお婆は並べられたトランプの配置を見て少し驚いたあと、ノートに何やら書き込んだ。


 そのあと並べられたトランプを混ぜながら揃えると紫音に手渡した。


「次は昔の事を思い出しながら同じように並べてみてくれんか」


 紫音はまた同じようにトランプの柄を見ては並べていった。


 ジャンヌお婆はそれを見て、また驚いた。


「ふぅむ・・・」


 そしてまた何やらノートへ書き込んだ。


「さて、次は水晶じゃ。これに手を当ててな、何でもええから思い浮かべてくれんか」


 紫音とジャンヌお婆が向かい合って、お互いに水晶の玉に手を当てた時だった。


 水晶の玉に様々な色が現れ、それがうねり出し、激しく回転し始めた。


「待て待て待て待て!」


 ジャンヌお婆は思わず叫んでいた。


「強すぎるわ。水晶が死んでしまう。片手だけにしてみてくれんか」


 紫音は言われた通り片手を添えた。


 ジャンヌお婆は両手を水晶にあて


「うむ、良かろう」


 水晶には、今度はゆっくりといろんな色が現れ、たゆたっていた。


「よし、では何でもよい。心に思い浮かべてみてくれ」


 その言葉を聞いた詩音は、すぐに悪夢を思いだしていた。


 逃げても逃げても振り切れぬ影に追い詰められ、うしろから抱きすくめられ、耳元で黒い吐息を吐かれたおぞましさが心に浮かんだ。


 水晶の中では、小さな黒い点が現れ、段々と霧のように広がり、濃くなって行くにつれてゆらゆらと揺れていった。


 そして次に赤い点が現れると黒い霧がざわめきだし、赤い点はその中をあちらこちらと漂った。


 しばらくして次に、光の点が現れた。


 それは徐々に大きくなっていき、黒い霧を飲み込むように広がっていった。


 赤い点は光の中で水晶玉の真ん中に止まり、じっとしていた。


 最後に光はすべてを覆いつくしてから消えていき、元の水晶に戻った。


「もう良いぞえ」


 ジャンヌお婆の声で紫音は水晶から手を離した。


「ううむ・・・」


 ジャンヌお婆は感に耐えぬ顔つきで腕を組み、じっと水晶を見つめていた。

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