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紫音の少女 郷愁  作者: 柊 潤一
向日葵の中で
12/41

オルフェに到着

 盗賊たちを検問所へ飛ばすと同時に、紫音の意識も検問所へ飛び、盗賊達が捕まるのを見届けていた。


「盗賊達は捕まったわ。」


「ほっほっほ、奴らもさぞかし、たまげたことじゃろうて。愉快でならんわい。しかし、これで難儀する人もなくなるじゃろう。ここらの住民も、奴らには手を焼いておったろうからの」


 カレンお婆は、大笑いしながら言った。


 盗賊達に触れさせもせず、あっという間に遠くまで飛ばしてしまう紫音の力も凄いものであったが、それを見て動じることもなく、大笑いするカレンお婆の肝も据わったものであった。


「しかし、紫音や。そなたは、ほんに不思議な女子じゃのぉ。それだけの力があれば、この国はおろかこの大陸、いや、世界の王になる事も不可能ではあるまい。」


「それは」


 紫音の言葉が一瞬途切れた。


「それが必要とあらば、私はそうします。しかし、民の幸せのために国を治める役目は、たぶん私ではありません。」


「ふむ・・・」


「それに・・・それは私の望みではありません。」


 そう言った紫音の表情は寂しそうだった。


 盗賊たちの出現で、警戒が強くなった検問所を通らない方が無難だろうという紫音の提案で、二人は峠からオルフェの町のすぐ近くまで飛んでいた。


 紫音にとって、遠くへの移動手段はいくつかあったが、少人数だと空間を折り曲げてしまうのが、一番手っ取り早い方法だった。


 例えば、四角い紙の両端に書かれた、二つの黒い点の真ん中で紙を折り曲げ、点と点を引っ付けるように空間を折り曲げてしまうのだった。


 近くに見えているオルフェの町へ歩きながら、カレンお婆は言った。


「これは楽じゃ。紫音や、なぜ最初からこうしなかったのかえ?そうすればすぐに来れたものを」


「えぇ。でも実際に歩いてみないとわからない事もありますし、盗賊の事も気になったし、お婆様とお話もしたかったし、何より・・・」


「歩くことは体に良い事ですわ。お婆様にとっても私にとっても」


 紫音はそう言って微笑んだ。


「ほっほっほ、確かに最近は外に出ることも少なくなったからの。ボケないためにもこれからはもっと出歩くとするかの。」


 二人は笑いながらオルフェの町へ入っていった。 

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