三十ニ話 比類なき前兆②
いつも読んで頂きありがとうございます♪
探り探り書いてますので、読みづらい点はご容赦下さい。
「ゼノの合流により、これより軍評定を開始する。各部隊、連絡水晶と最新の通信魔具を共有せよ。」
ルゴールの連絡水晶での発言により方々から述べ20に編成された合同部隊は、現地でも王都から移動中でも皆が耳を澄ます。
【霧水】とルゴールらによる斥候情報で出来上がった地図の10を超える進路はどうやら行き止まりになっているが、異なる魔種の大群が計ったかのように一箇所の空間を除いて、それぞれ屯している。
踏破された迷宮最深部が何故そうなったか皆目見当つかないが、状況は最悪の何歩か手前と仮定して作戦は告げられる。
魔素氾濫は人智を超える理不尽と無慈悲が奏でる悲劇的破滅である。
理由など考えた所で意味はない。
如何にそれを被害最小限に制圧するか。
まず、魔物種類と相対する自軍の配置。
斥候部隊の情報によれば確認できたのは迷宮内に棲息する魔物の上位種と思れる存在ばかりで、素早さに特性を持つ、小型魔鳥類や魔狼類、魔力の豊富さと知性を持つ魔虫類、怪力と速さを持つ魔猿や魔鹿、どれもこれも水晶を通して殆どの者は目を背けたくなるほどの気配に怖気つくが、ルゴールが払拭するかの様に静かに語る。
「我等がここで食い止めねば王都をはじめ、近隣の街や村は壊滅的な被害が出る。逆を言えば我等でさえ食い止められぬなら、この国は滅びる。今ここに何故各々が立ち会っているか、汝等は何の為にその身を削り、泥を啜ってきたのか、名誉か、富か、憎醜への抗いか、愛故の選択か、其々がかつてより掲げてきた旗をわざわざ落としに来たわけではあるまい。心を奮え、そして力を振え、これは生き死にの狭間で神に器を見定められる時、ここに居る者全て、… …殺させるな敵に、殺れる前に殺ってやれ。そして、仲間も含めて死ぬな。必ず。」
その鼓舞から感じた悪寒ともとれそうな全身を巡る衝撃は武者震いか。
多くの仲間の眼光が一気に鋭く変貌し、作戦決行は明朝に決まった。
☆☆☆
「全軍に告ぐ。我に従え。不測の事態ではゼノの指示に従え。先日、各部隊に配ったのは最新鋭の通信魔具だ。従来の連絡水晶より小型で強力な指輪だ。ちょっとやそっとの衝撃では壊れない。防具の上から装備し、常時、連携を絶やすな。息を合わせて迷宮外へ炙り出してくれようぞ。」
作戦内容:【釣野伏の陣】を軸にしかける。
機動力と隠密に優れる部隊【霧水】と【上級狩人】による斥候部隊が各個、機を合わせ爆弓による一斉放射を仕掛けた後、退路確保にあたる部隊と共に全力で迷宮から一目散に退却、入り口付近には魔導士隊による大規模地形魔法の鈍足化法撃で足留め、周辺に待機する弓部隊と別動隊の魔導士部隊が出てきた魔鳥類を地に叩きまとまった所を斥候部隊の爆弓で再び仕留める。
「恐らくここまで無傷で巧く事を運べれば、迷宮での七割近くの魔素を引っ張り出せ、その後、遠距離部隊は一定の距離を保ち迷宮入り口付近より野営地まで扇形に拡がる様に退がり、中央部隊の援護射撃に回る。そこを我が率いての高火力近接部隊が中央突破により一網打尽に雑魚どもを掌握する。良いか、必ず迷宮の外へ誘き寄せてから殺せ。さもなくば遺跡が魔素を吸収してすぐまた増幅するのでな。」
一同の真剣な気配は最早、魔具を通さずとも測り知れる。
「ゼノ… …」
不意なルゴールの呼び掛けに俺は腹を括った。
最悪の場合、俺が窮地を救う切り札となる為に、出来る準備をした。
そこには、遠慮の欠片は一粒もなく、俺自身も偉く妙に落ち着いている。
そして、作戦は迅速かつ神妙に開始する。
まずは退路確保の為に各階層へ掃討部隊と斥候部隊が疾風の如く移動する。
通信魔具から聞こえてくる進捗に皆、一定の緊張が走るが、最深層に辿り着いたのは、ものの半刻も費やさなかった。
やはり、王都の上位冒険団や騎士の力はなるほど、侮れない。
(もう少し時間がかかると思ったのだがな。)
斥候部隊が各個現着すると、いよいよ作戦本番。
10を超える斥候部隊から爆音と共に狼煙があげられる。
「全軍!退却!」
ルゴールの怒鳴り声にも近い咆哮が魔具から聞こえた。
作戦開始前に、全部隊に掛けた強化魔法はザバン程の効力は無いが、魔具から伝わる気配でそれは充分に役立っている。
中でも、疾さに長けない者達ほど、その恩恵は顕著なのだろう、稀に聞こえる声がそれを理解させる。
階層を追うごとに間引きされていた静寂は次第に唸りを浴びて呑み込まれてゆく。
所々、間の悪い愚物が蹂躙されているのは聞き間違えではなく、一心不乱の全部隊がやがて迷宮より姿を現した。
殿のルゴールが駆け抜けてさほど間もない瞬間、大気に散らばる魔素が広範囲に電撃と化し、地にそれらを張り付かせると、周囲から矢尻と化した魔素と物理の雨が降り注ぎ、案の定、安全圏から凋落した魔鳥類はあえなく餌食となる。
離れゆく各階層の掃討部隊に斥候部隊がその身を翻し、足踏みし、ルゴールの通過した姿を確認した頃、既に射法八節、六の心得〝会〟に至っていた。
「馬鹿でかい霞的よ… …。」
クロウのその渋味は斥候部隊にとってまさに以心伝心の極まり、琴瑟… …いや、共鳴か、それは一斉に10を超える風切音と共に真に鮮やかな矢乗りを色付かせ、やがて矢所でそれらは微塵と化す。
その直前には、既に扇形に展開していた部隊達が、第二波の足音に構え、漏れなく一槍の様な勇ましい中央からの風を援護する態勢を整える。
迷宮から凄まじい数の氾濫が扇形に拡がり湧き出るが、風雲の志の一番槍が迷宮に向け文字通り大剣で空を裂いた。
「氣術だ。」
俺はその一番槍の魔人族が放った氣術に見覚えがある。
いや、それよりも数段上の術だった。
裂空から逃れた両脇の愚物は左右からの容赦無い爆炎と物理の雨を共に迎えるように静寂を連れてきた。
迷宮の入り口からかなり大きな大地の揺れと嘶きが聴こえたのは、第二波の静寂に取り憑かれたかの様な光景から少し経過した頃だ。
さほど迷宮から離れていないとは言え、野営からもその影の赤い眼光がハッキリと解るほどで、奇しくもその影は魔人族の裏打ちされた経験値に風雲急を突き付けることとなる。
ここまで読んで頂きありがとうございました♪
一身の都合上、不定期更新ですが、また次話読んで下されば嬉しいです♪
ちゃんと伝えたい事書けてるかなぁ〜
あぁ〜仕事直後に書くのはしんどいけどもッ… …
書き溜めッ… …_φ(・_・




