二十六話 嵐の前の〝武器〟味さ
いつも読んで頂きありがとうございます♪
探り探り書いてますので、ご容赦下さい。
では、26話どうぞ!
ナルル工房の店頭は地下工房のおよそ3倍程の広さ。
王都一の評判鍛治屋な為、その門構えからしてどの店舗よりも目立つ。
そんな大店に並ぶ装備品や調度品を全て改造する。
改造には、俺は手を入れず、あくまで指導、監修といった所なのだが、別件で騎士団や冒険団の稽古をつけたりしながら、工房へ顔を出していた。
マニは冒険団の依頼が増えてそちらに注力し、ジルは真逆に冒険団の依頼を仲間達に預け工房作業に兄弟子と注力している。
そして、工房の販売部門は店を閉めた。
リニューアル開店に向けた潜伏期間とでも言うか嵐の前の静けさならぬ不気味さという言葉が妙にしっくりくる。
いや、〝武器〟味さか… …。
というのも先日の件以降、同業者達からギルドに話が上がって、ナルル工房の影響で売り上げに影響が出たらしく問題視され事態を重くみた王宮とギルドは俺を呼び出して対策を促したのだ。
その結果、今では王都中の鍛冶師がナルル工房に入り浸っては俺の指導に必死に喰らい付いている。
つまり、王都中の鍛治屋が一斉に閉まっているのだ。
王都の文化背景がある為か、この都市に大なり小なり店を持つ鍛冶師は皆、勤勉で筋が良い。
何人かは見違える程腕を上げている。
この調子なら王宮もギルドも杞憂に終わるはず。
単に鍛冶師と言ってもナルルのようにドワーフ族だけでは無い。
様々な人種がいて、其々の持ち味が違う。
兎人族は器用さに長け、竜人族は魔力に長け、獣人族は機動力に長けたりと、人族は偏りなく強化できており、その種族毎の特性が如実に武具に付与されている。
少し前まではこの社会には氣術の価値観は軽んじられていたが今では嘘の様に立場を確立させてきている。
当然、魔力錬成による強化品もある。
だから、俺は鍛冶師達に余す事なく魔力錬成も氣術もそれぞれ伝授した。
魔改造のネタが少なくなりかけてきた頃から各々のオリジナルを作製させてみたりしてワイワイと楽しく試作してみて楽しんでいたら想像を超える出来栄えの品々となって俺もちょっぴり嬉しくなった。
確実にこの都市の鍜治屋のレベル上昇が見受けられる。
特にする事が無い時は俺が王宮やギルドからの装備品の修理依頼を受けていて元の性能を超えない様調整しながら対応しているが、これはこれで、中々… …骨のある作業だ。
なんせ、王都中の鍛治屋が閉まっているから騎士団は王宮に、冒険者はギルドにと修理品を預け毎日大量に工房へと持ち込まれる。
いやはや、とんでもない事態を招いたと感心するのだが、そろそろこの状況も終盤も終盤。
一安心したのだが… …問題が起きた。
この取り組みが2月近く経過した頃、突然、鍛冶界隈だけで無く、魔具屋からも同様の話が上がってくる始末。
切っ掛けは、一部の冒険者や騎士団員で戦士系以外の連中、魔導士や狩人などを中心に訴えが起きた事が原因。
「だってゼノ。世の中闘格は戦士系だけじゃ無いですよ?そりゃ文句でますよ。」
タイミングが悪い事にジャノスから戻ってきた連中が王都での噂を聞きつけてザバンに詰め寄った結果でもあるが… …。
そもそも、この何十日かでジャノスの闘技場は盛大に盛り上がっていたらしく、その渦中に居たのは
【守護人狼】!!
彼らが団体戦で無双を誇っていたらしく、その矛先がこちらに向いたのだ。
とりわけ錫杖、弓、装束といった鍛治屋では取り扱ってない軽装備品や魔具、調度品にまでケチがついた。
そして、案の定、王宮とギルド双方から呼び出しを喰らう羽目になる。
店を閉じている間、王国から経営者に支援金が補償されているとはいえ、それが魔具屋や家具屋まで閉店となると額が額だけに事態は非常に危うくなる。
そんな不味い状況を一人奔走しながらこの数日練りに練った作戦は、俺の資産、魔素カードに封じてある一切を国とギルドに買い取って貰う事にした。
だが、困った事に手持ちのカードだけでは数が足りないのは明白。
じゃあどうするかって?
夜なべだ!1,000の冒険団分と騎士団分!
手持ちの素材で作り上げる!
なんとも馬鹿げた話しだ!
幸い魔具関連となるとザバンも得意とする所で、手分けして数日間は魔力枯渇を防ぎながら妙薬でドーピング!
腐るほど余っていた素材の殆どを使い切り、何度かに分けて納品したが、俺もザバンも疲弊し音を上げそうになった。
王宮とギルドからはしっかり販売手数料は取られたが、元手はそもそもタダ同然。
迷惑料として利益もかなり度外視したのだが、それでも、莫大な利益を上げてその一部は里へ送ろうとザバンと決めた。
以前、王宮に納めた品の利益は買い付け品も併せて転移魔石にて里へ送ってもらったのでまた頼むとしよう。
一方、並行していた鍛冶師達の準備も整い、漸く落ち着きを感じさせるに至る。
各々が数日を使い自店へ戻りリニューアルオープンを進める中、俺は宰相ガルバザから突然呼び出しを受け、休む事なく王宮内の騎士団訓練場へと足を運ぶ。
そこには、見慣れた顔ぶれが揃いに揃っていた。
これは… …嫌な予感がするぞ。
〝不気味〟だ… …。
ここまで読んで頂きありがとうございました♪
一身の都合上、不定期更新ですが、また次話読んで下されば嬉しいです♪
また書き溜めねば… …。




