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清は自然公園の中を走り出して、ランニングをもう一度始める。家に帰って、いそいでシャワーを浴びて、お出かけの準備をして、それから憧れの直先輩に会うために、そのまま自然公園を出て、見慣れた街の中を走り抜けていく。
なんだか自然と体が軽い。
いくら走っても疲れない。
体に翼が生えたみたい。
今なら、どこまでも走っていけそうな気がする。
清はずっと忘れていた自分の水の中の泳ぎかたを、その夏の風の中で思い出そうとする。
そして、思い出せたとしたら、もう絶対に忘れないと、そう自分の心に決めたのだった。
清は大地の上を走っているが、その心の中では透明な水の中を泳いでいる。
透明な水の中にいる、自由に泳ぐ魚になったみたいな自分のイメージ。
そんな子供っぽいことを清が空想することには、ちゃんとした理由がある。
だって上坂清は、今も、ずっと、昔から、朝丘直先輩に憧れて始めた、……水泳が大好きだから。
先輩。大好きです。
水の中の泳ぎかた 終わり