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演目は、、、
忘れた。
なんだったか。親子の情を描いたとても良いお芝居で、最後に主役の役者が歌を歌う。その歌が心地よく耳に響いてくる。
横を見るとちっこいのがまた乙女の顔して目を輝かせて役者を見つめている。
不思議とその顔がお花をまた思い起こさせる。
お花ちゃんに会いたい。会ってちゃんと伝えなきゃいけない。この身の内を。ちゃんと伝えなければ何も変わりはしない。
楽しいはずの舞が、やけに心に沁みてくる。いてもたってもいられない程、頭の中がお花ちゃんでいっぱいになっていく。
「オッチャン、また来るんか?」
「あぁ、オッチャンちょっと行かなきゃいけないところが出来たからもう来ねえよ。」
「そうか。残念やなぁ。せっかく友達になれたのに。」
「友達か。」
「うん。オッチャン強そうやから、友達や。」
このちっこいのは最後の最後まで不思議なやつだなぁと鎌太郎は思った。
「結局、あいつは女だったのか?男だったのか?まああいつならどっちでも構わない。」
お花を迎えに行かなくては!
鎌太郎が芝居小屋を出て行くと、また後ろからこの小屋の主人が鎌太郎を呼び止めた。
「鎌太郎の親分さん。また来ていただいてありがとうございます。」
「主人の言っていたことがわかったよ。」
「あら。わかりましたか?」
「俺はこれからやる事が出来たからここには来れねえけど、俺の友達がくると思うからよろしく頼むよ。」
「鎌太郎親分の友達ですか。。。こりゃどんなお人です?」
「ちっこいの。」
「ちっこいの。。。あー、あのちっこいの?」
「そう!よろしく頼む。」
「はいはい。わかりました。あー、良かった。ゴツい怖そうなのじゃなくて。」
「ん?ゴツい怖そうなのも連れて来ようか?」
「いや、それは。」
「わかってるよ。芝居小屋ってのは何か大切なものを思い出させてくれる、素敵なところだなぁ。今度雨漏り直してやるよ。また来れたらだけどな。」
そう言うと鎌太郎は一家に戻って行った。
そしてそれから1度も芝居小屋に顔を見せることはなくなった。
雨漏りは、直ったとは聞いていない。
それよりも、鎌太郎の頭の中は、お花ちゃんの事でいっぱいのいっぱいになっていたのだった。




