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第3話 驚くことしかありません!

俺たち三人組は背の高い木がある、林を歩いていた。

地面は少しデコボコで背の低い草が生えており、所々苔もある。

こういう所には大型の魔物がいたりする。

そこそこ遠くまで見渡せるので、大型の魔物はすぐに見つけ出せるだろう。

小型の魔物は木の裏に隠れられそうだが、今のところ何もいないし、自分の足音しか聞こえない。


今回のミッションは主に食料になるものを探してくること。

できればすぐに食べられるものがいい。例えば、木の実とか肉とか。


「何もないなー。何にもいないなー」


この景色に飽きてきたのか前田:眠月がぼやく。


「気を抜くなよ。でも、確かに何もないな」


俺が言葉を返す。


「そういえば、彩羽さんはなんで眼帯なんてしてるんだ?」


と眠月が問う。


「これは我が強大なる魔力を抑えるための魔道具。これが外されるということは、魔王の幹部をも倒す膨大なる魔力を開放するのと同じこと」


「マジかよ、ちょーすげーじゃん!」


眠月が興奮したように言う。

俺は思う。

彩羽は、

やっぱ、そうなんじゃないかって。

眼帯といい、

先ほどからのセリフといい、

うん、絶対そうだろう。

こいつは、

あれだ、

中二病だ。

邪気眼系の。


「その手に持ってる、魔法の杖みたいな物はなんだ?」


俺が聞く。


「〈魔法の杖〈みたいな物〉ではない、正真正銘の魔法の杖。これは我が力を操作するための、無くてはならない魔道具なのだ」


「へー」


やっぱり。


そうして、しばらく歩いていると。


「なあ、何か音が聞こえないか……?」


眠月が静かに少し震えた声で言う。


「え……」


俺たちは立ち止まって耳に手をあてる。


ドスン……ドスン……


地響きと共に鈍い音が迫って来ていた。ゆっくりとそちらを振り返ると、木々の間から体長20メートルはありそうな大きな影が見える。


ドスン…ドスン…ドスン…


「来てるよね。来てるね。来ちゃってるね!どうすんの!?」


眠月が慌てて大きな声を出す。


「馬鹿!大声だすな!ばれるだろ!」


「もうばれてるよ!そうだ!彩羽さんなら倒せるかも!」


「ワ、ワレニカカレバアノテイド、イ、イチゲキデ……」


片言だし、膝がガクガクしてるぞ。彩羽。


「無理そうだな。よしお前ら、逃げるぞ!」


「わああああああああ!!」


それからしばらく走って。


「何とか撒いたみたいだな」


もう巨体は見えないし、音も聞こえない。


「むこうから水の音が聞こえる!」


「「なに!」」


彩羽の言葉に二人とも反応する。


「行ってみるか。気を引き締めて行けよ。水辺には動物が集まりやすいからな」


俺が注意喚起をする。


「ok」


「水は生きる者の生命線、生き物が集まるのも当然」


音のする方向へ歩いていくと。

そこには、そのまま飲んでもよさそうなほど綺麗な水が流れる川があった。


「すごい。こんな綺麗な水が流れてる川は初めて見た」


俺が感動の声を出す。


「マジ、パネェな」


「パネェって今日日聞かねえな」


眠月の言葉に突っ込む。


「ちょうど喉乾いてたところだし、水分補給しとくか」


俺が、え、マジで飲むの?的な視線を眠月に向けようとしたその時、


「危ない!!」


「おわ!」


「どへ!」


急に彩羽に突き飛ばされ、中二病ごっこもいい加減にしろよ、と文句を言おうとして見ると。


「な!?」


そこには、黒い毛皮のオオカミみたいな獣が3匹。こちらを見て威嚇していた。

すっかり気を抜いていた。注意喚起したのは俺だろ!

彩羽が険しい顔で言う。


「漆黒の毛皮、夜に月のごとく光るのその黄色い目、ダークウルフか」


なんでわかるんだよ。


「戦うしかないか。一人一匹ずつな!彩羽は先頭のやつを。俺は二番目のやつを。眠月は三番目のやつをやってくれ!」


俺が仕切る。


「了解した」


「・・・」


「眠月?」


振り返るとそこには腰を抜かして立てなくなった眠月がガクガクしながら、助けてくれ、とでも言わんばかりの目をしていた。

お前、いかつい魔法習得してる割に…。てかあの巨人に比べたらまだこっちの方がましだと思うが。


「眠月は戦えないみたいだ。彩羽、一人で二匹いけるか?」


「余裕」


とても心強い。けど、本当に大丈夫なのだろうか。そこは、彼女の中二病力にかける事にする。


「いくぞ!!」


初めての魔物との対戦。

普通は攻撃力の低い初心者向けの魔物から倒し、レベルを上げてから中級、上級とランクを上げていくのだが。今回はいきなり中級と思われる魔物との対戦。

気を抜いたら死ぬ。


「身体強化!」


一気に相手との距離を詰め、キッツイのをお見舞いして倒そうとするが、空振り。


「オラ!オリャ!トウ!トチャー!ヲゥラァーー!」


空振り、空振り、空振り……。

一撃も当たらない。流石はクラス最下位の運動音痴。俺が魔獣に弄ばれているかのようにさえ見えてくる。


「クソ、一発も当たらねぇ。俺の攻撃命中率、どうなってやがる!」


「ウゥゥ!」


相手もしびれを切らしたのか、うなりを上げ始めた。

何か、何かないのか。

俺が焦っていると、スッと俺の視界に眠月が映った。


「眠月!ちょっとそこで立ってろ!」


「え?わ、わかった。こうか?」


眠月がガタガタしながら立ち上がる。


「よし、俺が合図したらしゃがめ!」


「お、おう」


そして俺はダークウルフを引き連れて眠月の所に行き、サッと後ろに隠れた。


「おい、どういうつもりだ?魔物がこっちに来てるんだが!う、うわぁぁ!」


ダークウルフが眠月の顔めがけて走って来た。

そして、噛みつこうとジャンプした瞬間に。


「今だ!しゃがめー!」


「はぃぃぃぃ!」


ギリギリ眠月が攻撃をかわし、ダークウルフが眠月の頭の上を通り過ぎようとした、その時に。


「ァァアッパァァァーー!」


眠月の後ろに隠れていた俺がすかさずダークウルフの顎目掛けて、強化アッパーを食らわせた。

見事な不意打ちにダークウルフは、脳震盪か何かでぶっ倒れていた。


「やっと一匹仕留めた。はぁ」


「終わったか。ご苦労だった。」


と彩羽が言う。


「なんでそんな上から目線?……、!」


俺は驚きのあまり目を見開いた。そこには、気絶しているのか死んでいるのかダークウルフを担いで立っている彩羽の姿があった。血は、出ていない。


「安心しろ。こいつらは死んでいる。今日の晩ご飯にしよう」


そう言って、親指を立ててグットのポーズをする。

かわいい名前と顔のなのに、実に似合わない光景だ。


「あ、ああ。今日はもう帰るか。おーい、眠月、帰るぞー」


無事、囮の仕事を終えた眠月を起こす。


「もう、囮はこりごりだ」


元気がすっかり無くなった様に言い。俺たちは帰還した。



『おおお』


帰って来ると、そこには三メートほどある石の壁が綺麗に四角く、教室を囲んでいた。

囲んでいるといっても全方位ではなく、景色の綺麗な草原側には手すりの高さ位の石柵ができていて、教室の窓からでも見えるようになっていた。


入口は門番がいて誰か通るたびに【岩石操作】で開け閉めしている。

壁の外側の近くには、スキル練習に使われた変な石像が並んでいた。

破壊されているものも在れば、されていないものも在る。

例えば、トーキョータワーとか、ダイブツ、ムキムキマッチョ。


「おお、帰ってきたか。怪我も無さそうでよかった。どうよ、この石の壁は。結構頑張ったんだぜ」


「ああ、すごいよ。まさかこんなに早くできて、しかもこんなに整った形で作れるなんて。やるな」


俺は、話しかけてきた啓太にイケボで言い、親指を立てグットマークをする。


「魔物を仕留めて来たから、後で夜飯にする。ってみんなに言っておいてくれ」


「おお!魔物を倒したのか!ああ、言っておくよ」


肉を手に入れたのはいいが、どうやって調理しようか、そもそも魔物の肉って食えるのか?


「なあ、誰か【鑑定眼】か何かのスキルを持っているやついるかー?」


全員に聞いてみる。

鑑定眼とは生き物やものを識別したりできる目のことで、レアスキル。


「はい。【鑑定眼】ありますよ」


え、マジで?

てかどこに居るんだ?


「ここです」


う...え?

教室の屋根から長方形の眼鏡をかけた男子が返事をする。


「え...!なんでそんなとこに!?」


「少し周りを見ていたもので」


教室の屋根からジャンプして降りてくる。

絶対足折れてるだろ。あ。この世界には魔法があるんだった。身体強化か。


「よかった。優斗くん?だっけ?魔物の肉が食べれるかどうか視て欲しいんだけど良い?」


「優斗で構いません。わかりました。どこですか」


血は出ていないとはいえ、気持ち悪いので一応壁の外に置いてある魔物の所へ案内した。


「これが魔物。どれどれ……」


優斗の目が緑色に輝く。すると、見張りをしていた彩羽が、


「かっこいい…!」


「食べても問題ないようですね。流石に生で食べる事はできませんが、焼けば問題ありません」


「そうか。ありがとう。後で夜ご飯にするから、君も来てね」


「はい。行かせてもらいます」


優斗がその場を去った後。


「救世君、お帰り。彩羽ちゃんも。無事で良かった」


美里がやってきた。


「ああ、何とかな。正直言ってほとんど、彩羽がやったけどな」


「へ~。彩羽ちゃん強いんだ」


「ふっ。我は常に進化し続けている。戦えば戦うほど、強くなるのだ!」


「それは誰でも同じだと思うけどな」


俺が突っ込みを入れる。

なんだこれ、いつの間にか漫才みたいになってる。

それを見ていた美里が顔に笑みを浮かべる。


「ふふ、仲がいいんだね。私は彩羽さんみたいな魔法は使えないけど、怪我をしたら呼んでね。治してあげるから」


「え、美里って回復魔法使えんの?」


「うん。まだ擦り傷くらいしか治したことないけど」


「マジか。頼りにしてるぜ」


「任せて。でも危ない事はしないでね?」


「わかってるって」


少し離れた所でこの会話を聞いていた男子二人の内の一人が言う。


「相変わらず仲いいなぁ。あの二人。何か変だぜ」


男子学級長、高村が言う。


「そうかな?お似合いだと思うけど」


隣のもう一人が優しく微笑んで言う。

あたたかで、親しみやすそうな雰囲気を纏った、どこか人懐っこそうな男子。田中:陽太だ。

彼は女子の中でクラスイケメンランキング1位に入っている存在。らしい。


こうして、俺たちは人生初の魔物調理に取り掛かった。

まあ、切って焼くだけだけど。


包丁の代わりにケイタ達が作ってくれた石の刃物を使って解体する。

あの変な石造からここまで出来るなんてスゲー。


俺たちがいない間に、石像のマグマを使って焚火をしていたので、そこで焼くことにした。

時刻は夕方。

草原の向こう側へ太陽らしきものが沈んでゆき、空がオレンジ色に染まっている。

まさに、


「ビューティフル!」


「あ?どうした。腹減りすぎて頭おかしくなったのか?」


眠月が言う。


「そうだね。確かに綺麗な景色」


ナイスサポート美里さん。心が折れるところでした。


「そろそろ、焼きあがるな」


肉から脂が滴り落ちている。

中型の魔物三匹をクラスメイト三十人分に分けると、一人分野球ボールくらいしかないが、これでも半日もかからずにこれだけ集めたと思うと多い方だと思う。


問題は味だ。

やはり魔物の肉だから不味いのか。それとも逆転発想で美味しかったり。答えは……


「うん、味、しないね」


そもそもの味がなかった。


「不味くなくて良かったな!これで次たくさん捕まえてこれば、もっと食えるんだろ?」


「お前はまず戦えるようにならないとな。眠月」


「おう、今回は何もできなかたが、次はちゃんと戦うぜ!飯のためにな!ムシャムシャ」


「頑張れよ。俺も頑張らなきゃな」


てか味しないこの肉のために頑張るって、どんだけ腹空いてたんだよ。


就寝。

外で寝るわけにもいかないので、みんな教室の中で寝た。


「うう、眠れん」


改めて、異世界に来たと思うと興奮して眠れない。

落ち着くために草原の景色でも見ようと思い外に出ると、既に先客がいた。


「お前、こんな時間に何してんだ?」


「魔力の補充。月夜の魔力は神聖で、昼のものに比べて質がいい。だから、より強力な魔法が使えるようになる」


と、彩羽が言う。


「そうか、でも、昼に戦闘もあったし早く寝ろよ」


彩羽は無言で頷く。

そうしてしばらく満月で満点の星が広がる夜空やら、何かわからない魔獣のようなものがうろつく草原やらを見たりしていた。涼しい夜風が心地いい。


「あ」


「どうした?」


彩羽が空を見上げて呆然としている。俺もつられて見てみると。


「え」


こうやって驚きの声を上げるのは、この世界に来て一体何度目だろうか。

満月の前を大きな竜が横切っていた。

月の影になっていて何竜かはわからないが、すごい迫力だ。

そして何より、


「ビューティフル」


「beautiful」


「お前、発音うまいな」


彩羽が魔力の補充が完了したというので、俺も戻って寝ることにした。

無事、一日目を生き延びる事ができた。


俺たちの冒険はまだ始まったばかりだ。


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