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犬はホースの水圧で歯を磨きます。(プロローグ)

 ピッ..ピッ..ピピッ..ピピッ..ピピッ..ピピピピピピ......カチッ。


「……。起きろー」


 午前5時、俺は眠い目をこすりながら二段ベッドを降りた。

 我が弟を起こし、二階から一階へ降り、服を着替え、コップ一杯の水を汲み、それを半分飲んで捨て、二階へ戻る。

 途中に、階段に足の小指をぶつける。

 そして、二度寝する。


 いつものルーティーンだ。


 足の小指のズキズキが脳を刺激する。

 10分後にバッと布団を投げ飛ばして覚醒し、颯爽と学校へ行く準備をして、朝ごはんを食べ、


「いってきまーーす」


「ワンワン!」


「行きますか」


 見送りに来た家の犬を笑顔で撫でてやる。相変わらず丸くて可愛い顔をしている。

 犬と共に、俺は家を出た。


 俺の名前は日野:救世。どこにでもいる平凡な高校生だ。

 得意なことはゲーム。

 苦手なことは運動。

 毎日ろくに体を動かさないため、体育の成績は大変なことになっているし体力テストではクラス”最下位”をとった運動音痴である。


 俺の三歩前を行くウチの犬はピョンピョンと跳ねながら、楽しそうに歩いている。

 すると、


 ブッシャーーー。


 突然飛び出たホースの水がその顔面に直撃した。直撃し続けた。

 そのホースはおばちゃんが持っていて、おばちゃんは電話に夢中でこちらに気が付いていない。


「大丈夫か!?ウチのい……」


 俺は言いかけ、慌て顔から半呆れ顔になる。


 ブシャーーー。


 ウチの犬は、おばさんに向かって歯をむき出し――

 ホースからでる水の水圧を利用して、歯を磨いていた。


「歯磨きしてる!?」


「あら!すみません。気が付かなくって」


 電話を終えたおばちゃんが水を止めて言う。


「いえいえ、大丈夫です。なあ、ウチの犬。ずぶ濡れだし今日はもう帰りな」


「ワン!」


 ウチの犬は家の方向にてくてくと元気に歩いていく。

 相変わらずノー天気なやつだ。


「寄り道するなよー」


 それからしばらく歩いて教室前。

 ちょっと開いているドアの間から顔をだす。


「おはよー」


「「「おはよー」」」


 ほとんど全員から返事が返ってくる。このクラスは一言でいうと、色々と面白い。

 ノリが良く、みんな仲良し、スーパー元気。といった感じだ。

 高校生活2年目でこの仲の良さ。

 普通は仲の良くなった数人の友達と喋ったりして小さな輪で過ごす時期だろうが、このクラスではもう、その過程を超えてクラスの輪ができている。

 そうして、半開きになったドアを開けると、


「……イタ」


 上から黒板消しが落ちてきた。


「ドッキリ大成功ーー!!」


 嬉しそうに言ったのは、鈴木:烈花。

 クラスの中で一番元気で、アイドル的存在である。

 たぶんクラスの輪が広がったのは烈花のお陰だろう。


「おはよう。烈花。てか、ちゃんとチョークの粉をとったか?」


「おはよう!救世。ご安心を!人生で一番キレイにしたよ……!」


 と、自信満々の顔で言ったのであった。

 黒板クリーナーを中心として半径1メートル程、白い粉が濃い霧の如く舞っている。

 どうやら黒板クリーナーの粉を溜めている部分が破裂した様だった。

 一体全体どうやったらああなるのか。

 謎。


「おはよう。眠月」


 俺は、隣の席で机に頭を乗せて寝かけている、運動ができそうな体をした男。

 つまり俺と真逆の存在で友人の、前田:眠月に、爽やかな朝の挨拶をした。


「おはよぉおおうぅ。救世ぃ」


 俺の挨拶と反対にきだるい返事をしてくる。目を閉じたまま。

 これでも眠月はバスケ部のエースなのだ。そしてバスケの時は最早もはや別人。


「授業までには目、覚ませよ」


 起きろや。と心の中で突っ込んでおいて、俺は言った。


「おぉう」


 こうして、俺の今日一日が始まった。


 時は過ぎて昼休み。

 今日はとても天気がいい。雲一つない晴天だ。

 にもかかわらず教室には生徒全員がそろっていた。

 寝ている者もいれば、友達としゃべっている者もいる。隣の眠月はというと、もちろん寝ていた。

 もう、熟睡しちゃってる。

 クラスの大半は寝てしまっている。

 なぜなら、給食の後で満腹だし、話を聞いているだけで眠くなってくるという謎の超能力を持つ社会の先生が給食の時間に長々と放送をしたこともあるだろう。

 なぜか俺はその先生の話を聞いても眠くならないんだが。


 ガタン!!


 突如として大きな音がした。


「なんだ?今の音?」


 友達と話していた人たちが一斉に廊下に通じるドアを見、机に突っ伏して寝ていた全員が目を覚ます。

 眠月を除いて。

 まぁ熟睡してるし。そっとやちょっとでは起きない。昼寝好きな眠月なら尚更だ。

 どうやら教室の前と後ろのドアが同時に閉まったらしい。

 誰かのいたずらか、そんな雰囲気が流れている。

 しかし、普通に考えてそんなことがあるだろうか?と俺は心の中でそんなことを思ってみたり。完全なるフラグだが。

 とりあえずドア開けるか、みたいなノリで一番ドアの近くにいた高村たかむら男子学級長がドアの取っ手に手をかける。


「……。」


「ド、ドアが開かない!」


「「「……、嘘だろ」」」


 クラス全員が声をそろえて言った。真顔で。


「嘘だと思うか?」


「「「うん、当たり前じゃん」」」


「……」


 ゲンナリしてしまった高村学級長は後で慰めてあげよう。

 試しに色々な人がドアや窓を開けようとするが、どうしたことやらドアや窓はピクリとも動かない。

 どうやら教室に閉じ込められたらしい。

 ついにクラスがざわめき始めた。

 その時。


「な、なにあれ!?」


 教室の中央に居た女子が足元を指さす。

 見ると、教室のど真ん中の床にいつの間にか白い魔法陣が描かれていた。

 立てておいたフラグは折られる事なく成立してしまった。


「う、嘘だろ……!ついに……!」


 この時が来たのか!?異世界&ゲームオタク(救世)は期待に胸が高鳴る。

 まるで折りたたまれていたかのように展開したその魔法陣は段々と輝きを増し、その光が救世の期待と共に教室全体を覆った。

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