表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
89/109

生きる希望と、行動原理

誤字脱字報告ありがとうございます。とっても助かります(>人<)




再び目を開くと、聖堂に戻っていた。


目の前の女神像を眺める。

もう、彼女には会えないのか・・・。








「・・・・・・・・・なよ・・・」




女神像を睨みつける。



「私に丸投げするな!!」





やり場のない気持ちを吐き出す。

イライラする。



さっきの女神は怖かったし、知りたくもなかった重たい裏事情を聞かされ、またポンコツ女神の尻拭いを任された。


中ボス化してたら見捨てる気満々だったくせに、悪役令嬢を酷使しすぎではないのか。


貧乏くじ引かされた感が拭えない。



保護してくれない神界も理解できない。


なんで神界そんなにドライなの。おたくの問題児の失態なんだからそっちでフォローしてくれてもいいじゃない!


ユリカが(みそぎ)を受けるとか言われたけど、それも実際何がどうなったのか聞けなかったし、




ホント───最悪だ。








◇◇◇◇




「アレク~」


「きゃはははっ、くしゅぐったい」



アレクを抱きしめ、小さな肩に頭を乗せてグリグリと擦り寄る。



「大好きよ、アレク」


「ふふふ~。僕も大しゅき!」




今日も私の息子が可愛い。


癒しがないとやってられない!





「アレク、今日もルイスと遊ぶの?」


「うん!おやちゅの時にあしょぶの」


「そっか。良かったね」


「うん!」






───ルイスはあの時、


アレクの父親として恥じない自分になると言った。


だから親子の交流を絶たないで欲しいと、私に頭を下げた。



国王が平民に頭を下げてはいけないと言ったけれど、



『今ここにいるのは、国王ではなく、ただの情けない男だ』




頭を下げたままのルイスの足元に、ポロポロと雫が落ちて床に染みを作っていた。



『───君の言う通りだ。今の僕は国王としても父親としても頼りない。自信もない。とても父だと名乗り出られるような男ではなかった。───でも僕は・・・、いつかアレクに父親は僕だと言いたい。がっかりされたくない』



片手で涙を拭い、再び顔を上げたルイスの瞳は、涙で赤みを帯ながらも、光を宿していた。



『ジュスティーノに帰るまでの間、少しの時間だけでいいんだ。アレクと過ごす時間をくれないか?君からアレクを奪う気もないよ。アレクが悲しむような事は絶対しないと約束する。レティシアへの気持ちも・・・ちゃんとケリをつけるから・・・。だから帰るまでの間、アレクと一緒に過ごす時間が欲しい』


『ルイス・・・』




『アレクが安心してこの国に遊びに来れるように、絶対に国を立て直してみせるよ。婚約者だった時に、君と語り合った国の未来に少しでも近づけるように、胸を張ってアレクの前に立つ為に、僕は変わってみせる』



さっきまで泣いていた王子様はいなくなり、決意を固め、国王として私と向き合っている彼がいた。



私にとってそうだったように、ルイスにとってもアレクが生きる希望になってくれたら嬉しい。




『・・・ええ、応援しております。国王陛下』


『話せて良かった。・・・ありがとう、レティシア嬢』












◇◇◇◇





「アレク、今日は馬を見に行くかい?」


「馬!?見りゅ!早くいこルイしゅ!」


「アレク、このローブ着てね」




私は子供用の認識阻害ローブを着せる。

コレがまた可愛いんだよ。3頭身の黒いてるてる坊主に見えるのだ。


ほっぺをムニムニしたくなる衝動に駆られる。



移動中、認識されないように私とお母様もローブを羽織り、一見ルイスがジュスティーノの第二王子を案内しているように見せかけ、厩舎に向かった。



「お馬しゃん!いっぱい!」



毛艶の良い馬達を見て目をキラキラさせて興奮するアレク。その様子を見てアレクを抱き上げたルイスは、一頭の黒い馬に近づき、顔を撫でた。



「元気にしてたかランディ」


ルイスの呼びかけにブルルッと音を鳴らしてランディが答えた。そのやりとりを見てアレクも「リャンディ」と舌たらずな発音で馬に呼びかけている。



「ランディは僕の馬なんだ。とても穏やかで優しい子だよ。アレクも撫でてみるかい?」


「リャンディ、僕はアレクしぇいだよ~」



アレクが小さな手を伸ばすと、ランディが頬を寄せて触れさせてくれた。


それが嬉しかったのか、アレクはランディに抱きついてじゃれている。ルイスはそんな息子を優しい眼差しで見ていた。





「レティシアはこれで良かったの?悔いはない?」



従兄弟の第二王子がルイスとアレクを眺めながら呟いた。



「私は悔いはないけど、大きくなったアレクが全てを知った時に責められる可能性はあるわね。でも私が選んだ選択だから、責められても甘んじて受けるわ」


「あら、私は良い選択だと思うわよ。女としての気持ちを優先するなら完全に陛下とは縁を切っていたでしょう。でも貴女は父親が子供を愛する権利と、アレクが父親に愛される権利を守ったじゃない。今の陛下を見れば、アレクは父親に愛されていたと皆で教えてあげる事ができる。両親に愛されていたという事実は、アレクにとって大事なものになると思うから」



母の言葉に涙が込み上げた。




「そうなると、いいな」





私とルイスは、元には戻れなかったけれど、


いつか大きくなったアレクが全てを知った時、ルイスの愛が伝わればいいなと思ってる。



アレクは両親に愛された子なのだと、知ってほしい。





その為にも、やっぱり世界を消滅なんてさせたくない。

魔王の魔力暴走によるバッドエンドも迎えたくない。



アレクの未来が、神の理不尽な行いで失われるかもしれないなんて、そんなの許せるわけがない。




私は母と従兄弟の顔をじっと見つめる。




「「?」」





信じてもらえるかわからない。


でも女神とこの世界の繋がりを話さないと前に進めない。


私1人じゃ、危機を乗り越えられない。






「後で皆に、話したい事があるの」





結局、私の行動原理はコレに尽きる。




アレクを守りたい。


愛する人達と一緒に生き延びたい。




悪役令嬢だって、幸せになりたい。

面白いと思っていただけたら評価&ブックマークをいただけると励みになります(^^)



【こちらも連載中なので良かったら読んでみてください(^^)】


◆魔力なしの愛されない伯爵令嬢は、女神と精霊の加護を受けて帝国の王弟に溺愛される。


https://ncode.syosetu.com/n3934hu/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ