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魔王ルート解放



その日の午後、魔王の元に一羽の魔鳥が飛んで来た。

魔鳥に触れると空中に映像が浮かび上がる。




『おっ、やっと繋がったか!アドラ!魔鳥があっちについたぞ!』



武装したケンタウロスが画面外にいるアドラを呼ぶ。




私はそれで瞬時にあちらの状況を悟った。




「クーデター・・・?」


「だろうな」




魔王はため息をついた。


危惧していた事が起こってしまった。



魔王ルートの混血魔族による内乱イベントが発生したのだ。




・・・マジで、何故?


どこで魔王ルート開いた?




「お前が言っていたゲームという話が事実になったな」


「───うん。正直当たってほしくなかったけど・・・」




本当に、何で?


どこにそんなフラグあった…?




ユリカはヴォルフガングと交流はないし、ガウデンツィオに足を踏み入れてさえいない。



確かに再会したユリカは明らかにヴォルフガング狙いだった。


ザガンの話によると、ユリカは彼に迫って無理矢理魔王ルートに入ろうとしていたっぽいけど、魔王は拒絶してる。



その時点で魔王ルートは消えたと思ってた。


これもうイベントが乱立してて収拾つかなくなってるよね?やっぱりゲームの世界を再現したことによる弊害?



二次元のキャラと舞台設定を実体化させて皆が自分の意志で好き勝手に動いてるから、所々に歪みが起きているのかもしれない。


突き詰めると結局すべては駄女神のせい。て事になってしまうんだけど…。





『魔王様もレティシアもザガンも元気そうだな!アレクも元気か!?』


「心配かけたわね。アレクは今お昼寝中よ」


『そうか!ホント、無事で良かったよ。ちょっと今から馬鹿どもを全員ぶちのめしてくるから、終わったら遊んでやるって伝えておいてよ』



ザガンが呆れ顔でケンタウロスを見ている。



「何その『今からコンビニ行ってくる』みたいなノリ。バカなの?あっちはエグイ魔道具持ってるから情報集まるまで待機しててよ。上級魔族のロジーナでも手も足も出なかったんだ。下手に動かない方がいい」


「ええ!なんで待機!?最近ずっと編集のデスクワークと印刷作業ばっかでストレス溜まってんだよ!思う存分暴れてぇ!血が(たぎ)る~!」



既にケンタウロスの目が血走っている。どんだけストレス溜まってんの。


まあ、逆ざまあ漫画出してからケンタウロスの仕事量半端なかったからね。鬱憤溜まってるんだろうな・・・。



憐れみの目でケンタウロスを見ていると、画面にアドラの顔が映った。アドラもやはり武装している。



「アドラ、報告しろ」


「はい、昨日の朝方に魔王城の表門に約5000の連合軍が転移魔法で現れ、只今戦闘中です」


「戦況は?」



魔王の問いにアドラが少し顔を顰める。



「混血魔族と人間の連合軍なので、能力的には我々よりは下のはずなのですが、何故か高い魔力量を保持していて現在の戦況は拮抗している状態です。以前レティシア嬢が話していた事を警戒して魔王軍は守りに専念し、攻撃はネルガルが死霊騎士を召喚して攻撃しながら情報を探っているところです。レティシア嬢が張ってくださった結界のおかげで魔王城にはまだ被害はありません」



それを聞いてザガンがこめかみを抑えた。



「あー厄介だなそれ。魔窟の門(ヘルゲート)開いたくらいだから魔力増幅の魔道具でも持ってんのかもしれない。アイツらはオレガリオから対魔族用の魔道具を持ち逃げしてんだよ。多分それを使ってる。どんなモノがあるのか情報掴むまではネルガルに任せた方が良いと思う」




そう。


混血魔族の武器は、全部が対魔族用の魔道具だからガウデンツィオは大打撃を喰らう。


魔法やパワーでは純血魔族には負けるから、徹底的に彼らの力を削ぐ魔道具を使ってくるのだ。



そして、魔王ルートで使われる最悪の魔道具が、生物兵器だ。


呪いの魔法陣で強化した細菌を感染させ、純血魔族を体内から壊していく兵器。



魔王ルートのバッドエンドはこれで魔王軍が壊滅し、混血魔族に国を乗っ取られるのだ。




勝って内乱を終わらせる方法はただ一つ。


巫女が神聖魔法で浄化して、簒奪者に神の裁きを下すしかない。




私は巫女じゃないけど、ピンチヒッターで神聖魔法を授かってしまったから、必然的にその役目は私が担う事になる。




次から次へと、本当に勘弁してほしい。

アレクがまだ落ち着いてないのに!




それでも結局、ガウデンツィオの民を見捨てるわけにはいかない。


私が作り出した商品の反応を知る為に、何度も市井に出て彼らと交流を持っていた。


魔王軍の後ろ盾があったのが大きかったと思うけど、彼らは人間の私を受け入れてくれていたのだ。




私にとってもガウデンツィオは第二の故郷だ。

アレクにとっては生まれ育った国。



万が一の為に対策は取っていたけど、まさか魔王ルートが開くとは思ってなかったから最低限の対策しか取っていない。


魔王城は結界に守られても、市井は違う。



アデリーヌが持ち逃げした魔道具はとても危険なものだ。アレに抗えるのは魔王や四天王レベルに近い上級魔族までだと思う。


魔力の少ない民達は抵抗できない。





「アドラ、ケンタウロス、今すぐ俺達もそっちに帰る。ドワーフ達を魔王城に集めておけ。それまでネルガルの援護に回って情報を集めろ」


『『御意』』





プツンと映像が切れる。




「ザガン、捕虜だった奴らにも現状を説明して国に帰る支度をさせろ」


「御意」





やっぱり、こうなるのか───。





「レティシア」



魔王が私を見下ろす。


その真剣な瞳に、私も覚悟を決めなければならないのだと気を引き締めた。




でも次の瞬間、魔王から紡がれた言葉に固まる。





「レティシア、お前はジュスティーノに残れ」




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【新連載始めました。良かったら読んでみてください(^^)】


◆魔力なしの愛されない伯爵令嬢は、女神と精霊の加護を受けて帝国の王弟に溺愛される。


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