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巫女の罰








「アレク!!」



ジュスティーノに着くと、真っ先にお父様とお母様が駆け寄り、私の腕の中で眠るアレクを見て安堵の涙を流した。



「よかった・・・っ、無事でよかった・・・っ」



「うん・・・っ」




両親の顔を見たらホッとして、私も涙が出てきた。


やっと終わった。正確にはまだ問題は残っているけど、とりあえずアレクは無事に取り返せた。



「───いろいろあって・・・王妃様とルイスが・・・アレクを守ってくれてたの」


「───そうか。レティシアも疲れただろう。今日はもうアレクと一緒に休みなさい」





正直、本当に疲れていた。


アレクの子供特有の高めの体温が眠気を誘う。



神聖魔法を使ったからなのか、体のダルさが半端なくてさっきから眠くて眠くて仕方ない。



でも、ロジーナの話をまだ聞いていないのだ。


振り返って魔王を見ると、呆れたような顔をして私の退場を促す。



「お前もう目が半分閉じかかってて不細工になってるぞ。無理しないで寝ろ。後は俺達がやっておく」


「・・・失礼な。・・・・・・ロジーナとちゃんと話をさせてね。一発ぶん殴ってやらなきゃ気が済まないから」



アレクがどれだけ怖い思いしたと思ってる。


あんなにロジーナを慕っていたのに裏切られて、どれだけ傷ついて、怖がって、泣いたと思っている。



絶対許さない。

 


「わかった。話が出来るくらいには回復させておく」




きっとロジーナはこれからキツい取り調べを受ける事になる。アレクを攫った経緯や国王の愛妾との繋がりを聞き出さなくてはならない。



もし、これから私達が危惧していた事が実際に起きた場合、ロジーナは・・・極刑レベルの罪を背負う事になる。



彼女はそれを分かってて犯罪に手を染めたのだろうか。





つい最近まで魔王軍の皆でワイワイ言いながら暮らしてたのが随分前の事のように感じる。


ただアレクと一緒に、普通に、平穏に暮らしたいだけなのに、どうして私達を放っておいてくれないのだろう。




自分にあてがわれた客室のベッドで、アレクを抱きしめながら、微睡の中でルイスの顔を思い出した。



別れ際にアレクがルイスの子なのかと聞かれて頷いた時、目に涙を浮かべて嬉しそうに笑った。




あの表情だけで、アレクは父親に愛されているのだとわかって、鼻の奥がツンと痛んだ。




「流石アレクね。だって貴方は天使のように愛らしいもの」





───ごめんね、アレク。



貴方の父親はルイスだけど、今はまだそれを教えてあげる事はできない。



今のルイスの事を、私は何も知らないから。


一緒にいられる未来が見えないのに、どう話していいのかわからない。


話すとしても、もっとずっと先の事だと思ってた。




私はどうしたらいいのかな。



何がアレクの幸せに繋がるのだろう。




私にはまだわからないの。





不甲斐ない母親でごめんね。







「・・・・・・・・・」



流れ落ちた涙を、誰かの温かい指が拭ってくれた感触がした。


でも私は目を開ける事が出来なくて、そのまま眠りについた。











◇◇◇◇





「ははうえ、ははうえ~、ふえええん」


「大丈夫よアレク。もう怖くない。私はここにいるわ」



可愛い息子を抱きしめながら廊下を歩く。





ジュスティーノに戻ってから2日、アレクは誘拐のショックですっかり赤ちゃん返りして、私の体にひっついて離れようとしない。


ちょっと体が離れるだけでも泣いてしまう。



あんなに長時間離れたのは初めてだったから、不安で仕方ないのだろう。




落ち着くまでずっと抱っこしてあげようと思ってる。


両親や従兄弟達にも協力してもらって、安定するまで皆でとことん甘やかしてあげるつもり。



ただ、ロジーナに会う時だけは連れて行けないから、その時は睡眠魔法かけてお母様達に見ていてもらうしかないのかな・・・。




「ははうえ、ははうえ」


「大丈夫よアレク。大丈夫」




ギュッと私の首に縋りついて甘えるアレクが愛しいと思うのと同時に、この事件がアレクのトラウマになったらどうしようという不安が込み上げる。



「大好きよアレク。ずっと一緒にいるわ。大丈夫」



えぐえぐとグズりながら、目を擦っている。もう眠いのだろう。背中をトントンと叩いて廊下を行ったり来たりしながら歩いていると、すぐに寝息が聞こえてくる。




「レティシア」


「お母様」


「アレクは寝たのね。私が代わるから貴方はお兄様の執務室に行ってくれる?魔王様達もいるから」



オレガリオに動きがあったのだろう。



「分かったわ。じゃあお願い」








◇◇◇◇



「レティシア、来たか」


「伯父様・・・いえ、陛下。お待たせして申し訳ありません。本当なら真っ先にご報告に伺わなくてはならないのに、いろいろとご配慮いただきありがとうございます」


「畏まらなくて良い。お前は私の姪ではないか。アレクセイはあんなに幼いのに怖い思いをしたんだ。今は母親と離れたくないだろう。側にいてあげなさい」



「はい。ありがとうございます。伯父様」



執務室は私の他に従兄弟達とお父様、魔王とザガンがいた。



「レティシア、先程も皆に報告したのだがな、今日オレガリオから経過報告の書簡が届いた。昨日付けで第一王子のルイス・ニア・オレガリオが新国王に即位し、前国王は牢に投獄され、国際裁判の手続きを進めている。来月早々に我が国の国際裁判所で裁かれる事になるだろう」



ルイス・・・臣下達を掌握して即位できたのね。


でもルイスは一時期、私達が描いた逆ざまあ漫画で巫女と一緒に貴族達の信用を失い、廃太子の話が出ていた。


実情を知らない国民の間ではユリカはまだ人気が高いみたいだけど、ユリカの裏の顔は貴族達に知られているはず。



前国王の裁判が始まれば、社交界だけでなく外交面でも致命的ダメージを負うことになる。このマイナスの状況下で2人はどうやって国を立て直すのだろう。



とても苦しい道になる事だけは確かだ。いっそどこかの属国になった方が楽なのでは?とさえ思う。





「それから、オレガリオの神の巫女についてだが、こちらは秘密裏に処刑される事が決まったらしい」



「──────え?」






「国に混乱を招いたとして、新国王が処刑を決定したそうだ」

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【新連載始めました。良かったら読んでみてください(^^)】


◆魔力なしの愛されない伯爵令嬢は、女神と精霊の加護を受けて帝国の皇弟に溺愛される。


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