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運命の出会い② side ユリカ




「・・・・・・気持ち悪い・・・・・・? ・・・・・・私が?」




ヴォルフガングからこれ以上ないほど拒絶され、ユリカは呆然と立ち尽くす。


その顔が絶望に染まっていく。




「いやいやいや、魔王様。いくらなんでも女性に対して『気持ち悪い』は禁句でしょう、気持ちはわかりますけどね?」


「ということはお前もそう思ってるって事だろうが。初対面の女に発情されるのはよくあったが、あんな妄想垂れ流した女は初めて見たぞ。しかも安い三文芝居のように『私を欲して』とか手を伸ばされても、気味が悪いだけだろうが」


「確かに。僕も途中からいたたまれなくなってそっと視線を外しましたよ。自分に酔ってる感半端なくて見ていられませんでしたもん」



「お前も大概酷いぞ」




ヴォルフガングとザガンのあまりの会話に、ユリカは顔を真っ赤にして屈辱でプルプルと震えている。


そんなユリカを気にも留めず、ヴォルフガングは何かに気づいたようで急に後ろを振り返り、次の瞬間その場から消えた。




「ヴォルフガング!?」



慌てて彼の姿を探すと、離宮の入り口付近でお揃いのローブを着た女らしき人物と、ヴォルフガングの後ろ姿を見つけた。



「誰よあの女……っ」




二人の距離感を見て、瞬時にユリカの心が嫉妬の色に染まる。



あの男は自分のものだ。

他の女に盗られるなんて我慢できない。


何年も待ち焦がれた男なのに、どうして自分のモノにならないのか。


あの男の為にこの世界に召喚されたのに、どうしてあの男は自分を拒否するのか。




気づいたら全力疾走で男の後ろ姿を追いかけた。




二人に近づき、女らしき人物のフードの下から見えたその顔に、ユリカは驚愕する。




悪役令嬢レティシア───。




なぜこの女がヴォルフガングと一緒にいるのだ。


女神のお告げで指名手配にしてやったのに、何故のうのうと生きて、ヴォルフガングと親し気に言葉を交わしているのか。



全てはこの女が婚約破棄イベントの前に姿を消したことから始まった。この女のせいで何もかも上手くいかなくなった。


さんざん自分の邪魔をしたあげく、最後に最推しであるヴォルフガングまで奪う気でいるのかこの女は。



許せない。




「どういうこと!?」




叫び声に、二人がこちらを向いた。


女のスカイブルーの瞳がユリカの姿を捉える。



忌々しい悪役令嬢。

今までの積み重なった怒りが溢れ出る。



「何でアンタがヴォルフガングと一緒にいるのよ!」




死ね。



ヴォルフガングに近づくな。

彼は自分の伴侶になる男だ。



「何でアンタが野放しでここにいるのよ!犯罪者のクセに!!」



お前など死んでしまえ。

中ボスキャラのくせに。



死にキャラのくせに。



シナリオ通りさっさと死ね!!




「騎士はどこにいるの!?早くこの女を捕まえて!!国家反逆罪で指名手配されているレティシアよ!!」


「な…っ」




レティシアを掴み上げ、騎士に捕らえさせようと命令したその時、



「うるしゃい!!ばか!!わるもの!!」



こんな所にいるはずのない子供の声が響いた。


驚いてその声の主を探すと、目の前にいるヴォルフガングの腕の中に小さな男の子がいて、泣きながらこちらを睨んでいる。


小さな拳を振り上げ、前のめりになってユリカを殴ろうとする勢いで泣き叫んだ。



「ははうえをいじめるなぁ!わるもの!ばかー!」



語彙力のない子供の声に、ユリカは思考がストップした。



ははうえ───?



誰が?




「アレク」



激怒している小さな男の子を、ヴォルフガングが抱き直して宥めている。


なぜ魔王が子供をあやしているの。


この光景は一体なに───?




「え?ははうえ・・・?何でヴォルフガングが子供なんか抱っこして・・・───え?ちょっと待って・・・その顔・・・ルイス・・・?でも髪が水色・・・・・・」



子供の容姿をじっとみつめてある事に気づき、ユリカは驚愕する。




レティシアは、ルイスの子を産んでいた?


姿を消したのは、妊娠していたから…?




なぜ悪役令嬢がルイスの子を産んでいるの?


ルイスは結局、ユリカにはキスまでしかしてくれなかった。でも、レティシアの事は抱いていたということだ。



まさか、2人は本当に愛し合っていた?



ヒロインを差し置いて、ルイスはこの悪役令嬢の身も心も愛したというのか。



ユリカは屈辱と怒りで暴れだしそうだった。


シナリオから逸脱した現実を否定したくても、目の前に二人の子供だと疑いようのない証拠が存在している。



憎い。



レティシアが憎くてたまらない。



怒りが爆発して口を開くと、「黙れクソ女」という声と共に自分の声が掻き消された。


信じられなくて再び声を出そうとするが、空気が抜ける音がするだけで声が全く出ない。



以前ルイスにかけられた魔法よりも強力な魔法だとわかる為、時間が経てば治るのかすらわからない。



先程呼んだ騎士達が駆けつけると、すぐに全員気絶させられ、隙をつかれてレティシア達に逃げられた。


魔法を解いて欲しくてヴォルフガングを追いかけるが、レティシアに邪魔をされる。




一人用の結界に閉じ込められてしまったのだ。


神力を纏った拳で結界を叩き割ろうとするがビクともしない。





そして、ゆっくり近づいてきたレティシアが満面の笑みを浮かべて信じられない事を口にする。



「女神様は貴女から加護を取り上げたそうよ。貴女にはもう()()()()()()()()んですって。代わりに私が神聖魔法を引き継いだわ。これからこの国の浄化を行うから、これ以上私の邪魔をしないでね。私は凡人の貴女に付き合っている暇はないのよ。大人しくここで指を咥えて見てなさい。役立たずさん」





この時、悪役令嬢に巫女の座を奪われた事を知った。

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