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悪役令嬢、再びブチ切れる

改稿前の話を載せてしまったので書き換えました。すみません(T-T)




身構えても一向に痛みがやってこない。




『レティシア、目を開けてください』


「?」




恐る恐る目を開けるとそこは辺り一面白い世界で、目の前に10歳くらいのすごく綺麗な女の子が立っていた。


銀髪蒼眼で肌は透き通るように白く、白と銀を基調とした聖職者のような衣装を身に纏っている。





この子誰?



そしてハッとして腕の中にいるアレクに視線を移すと、瞳を閉じたまま全く動かない。



「アレク・・・?アレク!!」


「大丈夫。眠っているだけです。これから話す事は子供に聞かせられるものではないので私が眠らせています」




貴女も子供に見えますが───?




目の前の女の子が只者ではない事だけはわかるので、ツッコむのはやめておいた。


何者かしら。天使?


でも羽は生えてないし。




「というか、今どういう状況?私、離宮にいて魔物に噛まれる寸前だったんだけど、無意識に転移した?」


「いいえ、ここにいるのは貴女の意識だけ。下界では貴女の言っていた状況のまま時が止まっている・・・とでも言えばいいのかしら。ここは神の領域なので下界とは切り離された空間。神に選ばれた者しか訪れる事ができない場所」




神の領域。



それを聞いた瞬間、私の中にどす黒い怒りが込み上げる。




「成る程・・・つまり貴女は女神様ってわけですか?」


「はい」





元凶・・・、



全ての元凶がここにいるんですけど!!




レティシアとしては信仰してたけど、今までの積もりに積もった怒りが吹き出しそうになる。


そんな私の心の中を見抜いたのか、女神は瞳を伏せて苦しげな表情を見せた。




「貴女の怒りは尤もです。それについては何の弁解の余地もありません」


「・・・女神様って子供のような外見をされているんですね。教会や大聖堂にある女神像とは随分違う印象ですが」



「今の姿は・・・力が弱い為に、子供の姿に戻ってしまったのです」


「力が弱い・・・?」




私が尋ねると、女神は突然私に頭を下げた。



「お願いです。もう貴女しか適任者はいないのです。どうか・・・っ、どうか貴女の手で世界を救って下さい!」




全く意味がわからない。



「どういう事です?その役目は貴女が召喚したユリカの役目でしょ?私はただの悪役令嬢なんですけど?」


「・・・巫女は、神の使いである資格を失いました。私欲に塗れた人間に力を与えるのは無理なのです」  





──────ああ、もう無理だ・・・。


我慢出来ない。

  


怒りを抑え切れない。




「ふざけないでよ!!」



私の突然の怒鳴り声に女神が驚いて顔を上げた。


私が怒りに震えて睨みつけると、更に驚いて目を見開いている。



自分が願えば無条件で快諾するとでも思ったのだろうか。


自分を否定する民など居ないとでも思っているのだろうか。



この女神はきっと、ユリカがマトモだったら普通に神聖魔法を授けて私が死ぬ羽目になっても助けなかったはずだ。



でもユリカが自分の思っていた人間と違うからとあっさりと切り捨てようとしてる。自分が召喚して日本から引っ張ってきたクセに。



「私欲に塗れてるからですって?そんな人間を連れてきたのは貴女でしょ?神様のクセに何であんな性悪女を巫女に選んだのよ!そのせいでどれだけの人間が被害を受けたと思ってるの!?ユリカの前に自分の人を見る目の無さを悔やみなさいよ!!」



不敬だと分かっていても、何処となく被害者ぶっている女神に苛立って自分を止められない。


全ての元凶は女神だ。



それをわかっていないのが一番腹が立つ。



「何が世界を救ってくれよ。何で私が貴女の尻拭いをしなきゃならないの!?貴女がユリカを選んだせいで一番被害を被ってるのは私なのよ!!私達の事は助けてくれなかったクセに、自分は救いを求めるだなんてどれだけ厚かましいの!?自分で何とかしなさいよ!!神様なんでしょ!!」



今までのユリカからの仕打ちを思い出し、悔しすぎて涙まで出てくる。



「ごめんなさい・・・っ、だって・・・、だって・・・・・・」




見た目は10歳の女神が、目に涙をいっぱい溜めてふるふると震えだす。




「だって異世界人の女性が全員肉食女子だなんて知らないものーーーーーー!!」


     

「こっちこそ知るかボケぇ!!」




うああああん!!と子供みたいに女神が泣きだした。



単なるリサーチ不足でこうなったっぽいのが更に怒りを煽る。なんなのこのポンコツ女神!!



人の人生を何だと思っている!


こんな奴を信仰してたなんて後悔しかないんですけど!



「やめて、本人の前でそんな事思わないで!ますます力を奪われる!ただでさえ民の信仰心が薄れていってるのに」


「当たり前でしょ!馬鹿な国王の悪政のせいで民は長年困窮してるのよ!死活問題を常に抱えてるのに助けてくれない女神を拝んでる時間はないわ!皆生きるのに必死なのよ!」



「だから巫女を召喚して民を助けようとしたんじゃない・・・っ、巫女がいれば私の豊穣の加護が下界に伝わって土地が潤う。なのに・・・っ、今度こそは!と思って慎重に選んだユリカまでもが男に狂う人間だったなんて!異世界にいた時は女子校に通う清純なお嬢様だと思っていたのに!!」



再びうあああああん!と悲劇のヒロインぶって泣き出したけど、全く同情できない。マジで人を見る目がないだけ。



「ユリカまでもが男に狂う・・・って言ってるけど、まさか私の事を含んでるんじゃないでしょうね?」



だとしたらとんでもない侮辱だわ。



「いえ、違います。5度目のこの世界じゃなくて、今まで滅亡した1度目から4度目の世界で召喚した巫女達の事です」




─────────は?




「この世界は、既に4回、魔王の手によって滅亡しています。それを私の神力を使って時を戻し、やり直しをしてきたのです。そのせいで私の力が失われ、もう子供の姿しか保てない程になりました」



そう言って女神は悲痛な面持ちで私の目を真っ直ぐに見つめる。




「もう、私には時を戻す力はありません。今世が最後となります。今世も滅亡した場合、創造神によって私は消され、私の管轄であるこの世界は過去未来において永久に抹消される事になります」



私はそのファンタジーな話に眉根を寄せた。


あまりにも信じ難い話だが、自分も二次元の登場人物キャラなのだから受け入れるしかないのだろう。



「えーと、つまり・・・、今までこの世界は4回バッドエンドを迎え、その度にリセットしてやり直してるということ?」



目の前の美少女が深く頷く。



「その4回ともが、巫女の人選ミスで滅亡してるという認識でいいのかしら?」



今度は縋るような目をして、間を置いて小さく頷いた。







「チェンジ!!神様のチェンジを希望します!!」





私の心の叫びに、女神の慟哭が重なった。

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