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母と息子の再会





「何で王宮に魔物がいるの!?」

 



国内最大のセキュリティを誇る王宮で、複数ランクの魔物達が人々を蹂躙している。




「ザガン、結界を破れ」


「御意」



ザガンが手をかざし、パリンと結界の一部を壊した。


魔物が外に漏れぬよう私達が通れるギリギリのスペースで結界をくり抜く。



急いで中に入り、地獄絵図のようなこの光景に再び私の魔力が乱れ始める。




「アレクは・・・っ、アレクはどうなってるの!!」


「落ち着けレティシア!今すぐ魔鳥をアレクに向かって飛ばせ!それを追いかけるんだ」


「わ・・・、わかった!」



急いで魔力を練って魔鳥を飛ばす。すると魔鳥は離宮の方角に飛び立っていった。



「よし、他の者はレティシアのフォローをしながら進むぞ。なるべく目立つな。アレクを救出次第すぐにジュスティーノに戻る」



「「「「御意」」」」




魔鳥を追いながら王宮の中を進んでいく。




「どうして王宮内でスタンピードが起こってるの!?」




巫女は浄化してないの?


ルイスはどうしてるの?


陛下は!?





「きゃああああああ」


氷の槍(アイスランス)




使用人達を囲んでいる魔物に氷の槍を降らせる。


王宮の外なら一遍に燃やして灰にしてしまった方が早いけど、王宮内で火属性の魔法を使ったら一気に建物に燃え広がってしまう。



ザガン達も器用に武器を使って魔物を次々と狩っていく。



「おい、これから何があるかわからない。お前は魔力をなるべく使うな。魔物は無視してそのまま進め。俺達が全部対処する」


「わ、わかったわ」




宣言通り、私の進む先にいる魔物達は魔王やザガン達によって次々と倒されていった。



軽く倒しているように見えるけど、中にはAランクの魔物もいるのに走り抜ける際に一瞬で倒してしまうのだ。



魔王軍の強さを目の当たりにする。



それにしても、一度訪れた場所しか転移魔法を使えない事が悔やまれる。王妃の離宮に行った事があればすぐに転移できたのに。



焦りだけがどんどん募っていく。でも魔鳥がアレクの魔力を追っているという事は、アレクは生きているという事だ。




「お願いアレク・・・っ、無事でいて・・・っ」   











◇◇◇◇




「ちょっと!!何アレ!!」



やっと視界に離宮を捉えた時、待ち受けていた光景に愕然とする。



空には飛行型の魔物が、下には大型から小型の魔物が離宮に群がり、王宮騎士や王宮魔法士達が戦っていた。



離宮を囲む結界は既に半壊状態だ。



「嘘でしょ!アレク!!」


「ちっ、レティシア!道を開けるからお前は離宮の中にさっさと入れ!防御魔法と肉体強化魔法を忘れるな。俺もすぐ中に入る」


「はいっ」




魔王の言う通り、私は自分に防御と肉体強化の魔法をかけた。それを見届けた魔王は前方を睨みつける。



「人間が邪魔だが仕方ない。雑魚は眠ってもらおう」



魔王は前方に向かって強大な魔力の威圧を放った。



すると、人間を含めBランクまでの魔物達が一斉に泡を吹いて倒れ、3分の2が排除された。


Aランクの大型な魔物達も気絶まではしないものの、大ダメージを受けて混乱状態に陥っている。



「外の魔物は始末しておく。先に行け」


「ありがとう!」




ザガン達が先行して私の進路を作ってくれる。


数人の諜報部隊のメンバーだけ私に同行し、離宮内に侵入した。




「そんな・・・っ、既に中にも入って来てるの!?」



離宮内部は既に事切れた使用人や魔物が至る所に無惨に横たわっていた。




「アレクはどこにいるの!?」



魔鳥に導かれながら階段を上がっていく。


階を上がるにつれ、悲鳴が聞こえる。






「貴方達!2階の魔物を倒してまだ生きている人達を助けてあげて!アレクの事は私1人でも大丈夫だから!」


「しかし!魔王様に貴女を最優先で守るように命令されています」



「じゃあ1人だけ私について来てくれたらいいわ!どのみちアレクを救出したら魔王達と合流しなきゃいけないんだから、逃げ道の安全を確保してきてちょうだい!本当に危なくなったら玄関広間に転移するわ。その時魔物がまだいたらアレクと私が危険でしょ?」


「・・・わかりました。階下の魔物を排除出来次第すぐにそちらに向かいます。くれぐれも一人で勝手な行動を取らぬよう」



「分かったわ」




小隊を更に分け、私はアレク救出に向かう。


3階に辿り着くと、奥から悲鳴や衝撃音が聞こえてきた。




「アレク!!アレクどこにいるの!?お願い返事して!」



廊下にいた魔物が私達の存在に気づき、飛びかかってきた所を私に同行してくれていた諜報部隊の1人が切り伏せる。


その魔物が倒れた先に、魔物達と戦うルイスと、アレクを抱きしめて守る王妃と侍女達の姿があった。




「アレクーーー!!」



「・・・?は、はうえ?」


「アレク!!」




対人間用の認識阻害ローブを着ていたことを思い出し、被っていたフードを取って顔を出す。


すると、私の顔を視界に捉えたアレクは表情をクシャリと歪めたあと、大泣きしだした。



「うああああああん!ははうえ~!」



私の方に必死に手を伸ばして駆け寄ろうとする体を王妃が抑える。



「ダメよアレクセイ!まだ魔物がいるから・・・っ」


「ははうえ~!!」



「アレクセイ!もう少しで終わるから待っててくれ!」




そう言ってルイスや護衛騎士達は目の前に立ちはだかる魔物を次々と切り倒していく。とてもじゃないが子供に見せる光景ではない。悪夢になりそうだ。



それでも今は生きる為に戦わなければならない。


私達も間にいる魔物達を倒しながら前に進んでいく。



そして───、






「ははうえ~!!」


「アレク!!」





やっと会えた・・・っ、


良かった無事で。




広くて長い廊下を駆けて行く。


そして、2人の距離が10メートルくらいになった時だった。



突然廊下の窓ガラスが割れ、一匹の飛行型の魔物がアレクに襲いかかろうと口を開いた。



「レティシア様!!」




勝手に体が動いた。


諜報部隊の彼が止めるのも聞かずに、前に飛び込んでアレクを抱きしめる。



全てが数秒の間に起きた事で、魔法を詠唱する時間もなかったから本能的に体が動いたんだと思う。



アレクは絶対死なせない。



魔物からアレクを隠すように抱きしめ直して、噛まれる事を覚悟したその時────、




『レティシア』





聞いたことのない誰かの声に呼ばれ、



目の前の景色が真っ白に変わった。

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