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巫女の本性 side ルイス

誤字脱字報告ありがとうございます!とっても助かります(^^)




「人の部屋を覗いていたっていうの!?信じられない!最低!変態じゃない!!」


「君は何か勘違いしてないか?」


「何がよ!」




「何の権利があってこの王宮で好き勝手に振舞っているんだ?君はこの国ではまだ客人扱いなんだよ。異世界から来た神の巫女とはいえ、まだこの国に何の貢献もしていないのに最上級のもてなしを要求する。客なのに人の家を我が物顔で歩き、神力の修行も仮病使ってサボっていたから中途半端だよね?おかげでフォローに回る僕らのレベルの方が急上昇したくらいだよ。しかも結局浄化は終わらず、王都に帰ってから神に祈りを捧げたのは何回だ?巫女としての仕事は何回こなした?男に媚を売り、睦み合う回数の方が多かったくらいだ。そんなアバズレが神の使いだなんて何かの間違いだろう」



「酷い!!何でそんな酷い事言うの!こんな事になったのはルイスが私を避けるからじゃない!騎士達の事だって貴方に冷たくされて寂しかっただけよ!ルイスが私を婚約者として大事にしてくれていたらこんな事にはならなかった!」




・・・何でも他人のせいか。


こんな女と一度でも恋仲になった自分に吐き気がする。恐らく当初のユリカは作り物で、こちらが彼女の本性なのだろう。



狡猾で、男好きで、嘘吐きで、自分が相手にどう見られたら事が上手く進むか策略に長けている。


人を貶める事に躊躇がない。




きっと、異世界でも同じ事を繰り返していたはずだ。


何故女神はこの女を選んだのか。




そして何故僕は、最愛を傷つけてまでこんな女に・・・。




幸せを壊した自分が一番許せない───。


  






「・・・何をどう言い訳しようが、お前が罪を犯した事には代わりない。死罪は免れないと思え」



扉の後ろに控えていた騎士達が部屋の中へ入り、ユリカを取り押さえる。



「嘘でしょ!?浮気したくらいで死罪なんておかしい!それに私は神の巫女よ!?私を処刑したら天罰が下るわ!」


「信仰心のかけらもなく、巫女の務めも果たさず、人を陥れ、挙句に王族を洗脳しようとした事は国家転覆罪に当たる。女神を信仰する我が国に混乱を招こうとしたんだ。それは女神を冒涜することと同義だ!天罰が下るとしたらお前の方だろう。――そのまま地下牢に入れておけ。それから()()を必ずつけておくように」


「「「「御意」」」」



「ちょっ…やめて!離してよ!!ルイス!何で!!私はヒロインなのよ!こんな仕打ちしていいわけないでしょ!この国は私が救わないと滅びるのよ!?私以外に神力使える女はいないじゃない!!」


シレンティウム(静寂)



「……!!……!!」



部屋の外で騒がれては困るので、魔法でユリカの声を一時的に消す。


罪を明らかにしても終始暴れて抵抗するユリカに、罪の意識が全くないことが伺える。



一体どういう人間性をしているのか。





「……はあ。───あの女は使い物になるのか?」








◇◇◇◇





「ルイしゅ!」



とてとて。と効果音が聞こえてきそうな足どりでアレクセイが僕に駆け寄ってきた。


あまりに可愛くて、その小さな体を抱き上げる。



「おはようアレクセイ。といってもまだ夜だけど。夕飯食べる前に寝ちゃったからお腹空いてるんじゃないか?」


「ぺこぺこなの」


「ふふっ、そうか。じゃあ一緒に食べよう」


「うん!」




沢山泣いて寝てスッキリしたのか、今は笑顔で食事をしてくれている。


本当はこの時間がずっと続けばいい。この空間にレティシアが戻ってきてくれたら───と、どうしても願ってしまう。



でもそれは叶わない…。


父を失脚させるためにジュスティーノと協力関係を結んだのだ。それはアレクセイをアーレンス一族に引き渡すのが条件だった。


ジュスティーノは何も言ってこなかったが、きっとアレクセイを迎えに来る人員の中にレティシアがいるはずだ。



もうすぐ、会える───。




そう思うだけで胸が酷く締め付けられる。

そして同時に恐怖を感じる。



レティシアとは、あの裏切りを見られた時からずっと会っていないのだ。彼女の中ではもう僕は裏切り者でしかない。


あのスカイブルーの澄んだ瞳に、冷たく蔑んだ目で見られるかもしれないと思うと、恐怖で身が縮む。



僕への愛を失った証拠を目の当たりにするのが怖い…。




それでも…───、




「アレクセイ」


「んー?」


「明日、アレクセイのお迎えが来るよ」



僕の言葉に、アレクセイの表情がパーっと明るくなる。



「ははうえがお迎え来りゅの!?」


「うーん、まだ誰が来るかわからないんだ。でもきっとレティシアも迎えに来ると思うよ。もしいなくても、お迎えに来る人がレティシアの所に連れて行ってくれるはずだよ」


「やったぁ!うれちい」




本当に嬉しいのだろう。


今まで見た中で最高の笑顔で僕を見ている。


この笑顔を見るのが明日で最後なのかと思うと、仕方ないとわかっていても、鼻の奥が痛んで涙が出そうになる。




この結果は自業自得だと繰り返し自分に言い聞かせ、アレクセイの頭を撫でた。





「良かったな。アレク」


「うん!」












◇◇◇◇




深夜の地下牢。





「なんで…、何で何で何で何で!!何でヒロインの私がこんな目にあわなきゃいけないのよ!!」



見張りにユリカの様子を聞くと、地下牢の中で醜く顔を歪め、ああして『私はヒロイン』、『こんなのシナリオになかった!』をひたすら連呼しているという報告を受けた。



ヒロインだとか、シナリオだとか、一体なんの話だろうか。



とりあえず、なんの反省もしていない事だけはわかった。





「ルイス!!」



僕が地下牢の前に立つと、ユリカは鉄格子に駆け寄り、目に涙を溜めて媚びるような視線を送ってきた。


本当にこの女はどこまでも腐っている。



「ねえ、お願い、ここから出して?全部何かの間違いよ。きっと私を妬む人間が私を陥れたんだわ!そう、きっとレティシアよ!!レティシアが手駒を使って私を陥れてるんだわ!!だからちゃんと調べて───」


「黙れ!!!」



僕の怒鳴り声が地下牢の壁に反響する。


ユリカは僕の大声に驚き、そのまま硬直した。



「全部調べた上でお前は死罪なんだよ。証拠と映像がある以上言い逃れはできない。以前、お前が自作自演の脅迫状でレティシアを貶めた時に、魔法国家を舐めるなと言ったよね?お前の悪事は誰かの捏造でも何でもない。ただの事実だ。死罪は絶対に免れない。それがお前の天罰だ」


「そんな……いや…いやよ!死ぬなんてイヤ!!」



ユリカはガクガクと震えて涙を流す。




「──────そうだな。一つ仕事をして役に立つことを証明してくれるなら死刑は取り下げて幽閉に切り替えてあげてもいいよ。…どうする?」


「何をすればいいの!?」



「王の愛妾を退治してくれ」


「───は?」


「王の愛妾が混血魔族だとわかったんだ。このままだと国が危ない。だからユリカに愛妾を消してほしいんだよ。魔族の弱点は神力だからね。それから後宮の使用人達の中にも魔族が潜んでいるかもしれない。もしユリカに見分けがつくならそれも教えて欲しい」


「・・・・・・!!」




……なんだ?


魔族の話をしたらユリカの表情に喜びの色が見えた。


そして、満面の笑みで僕に宣言した。




「わかったわ!私が魔族を引き受ける!」

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