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アレクセイの居場所





翌日、客室で両親と過ごしている時にその知らせは来た。



ずっと探り続けていた魔鳥の反応が返ってきたのだ。


魔鳥の視界に見えている光景が自分の脳裏に映像として映し出される。



「アレク!!」




脳裏に映し出されたのは、どこかの部屋で侍女や護衛騎士達に見守られながらお絵描きをしているアレクだった。



「良かった…っ、無事で…っ」



この数日、ずっと張り詰めていた気が抜けて涙がこぼれる。



「レティ!」

「レティシア!」


両親が駆け寄り、その身を支えてくれた。



「お父様!お母様!アレクが…っ、アレクが生きてた!無事だった!今、お絵描きしてる」




「本当か!?どこにいるんだ?」


「周りに侍女と護衛騎士がいる…、人数が多めだわ。守られてる…?───あ、あの侍女、王妃様付の侍女だわ!ということは、ここは王妃様の私室か離宮…?」



魔鳥に周りの景色を映させると、王宮の裏手に広がる王家所有の森の泉が広がっていた。



「離宮…、王妃様の離宮にいるわ!───あ」





次に映し出された映像に、私は硬直する。




「──────ルイス」



アレクのいる部屋に入ってきたのは、約3年ぶりに見るルイスの姿だった。


修行の成果だろうか?少年ぽさがなくなり、元々の美形に精悍さが加わった美丈夫へと成長していた。


ゲームの立ち絵より少し逞しい体躯になっている気がする。



お絵描きをしていたアレクがパッと顔をあげ、入室してきたルイスを見ると、笑顔で彼に駆け寄り、ルイスに抱き上げられる。


それは、誰が見ても父と子だとわかるそっくりな顔をした二人の姿で、微笑ましい親子のふれあいの光景だった。




冷たくなった自分の指先から、微かな震えが伝わる。




──────ルイスなの?



アレクの誘拐を指示したのは陛下じゃなくてルイス?


どこからかアレクの存在がバレてた?



私を国際指名手配してアレクを攫ったのは、私や魔王をおびきよせる為の策?


今脳裏に映る映像を見る限り、アレクは手厚い警護体制の中で過ごしている。まるで奪われるのを阻止するかのように───。



ジュスティーノ宛に届いた王妃からの密書には、ルイスを今すぐ国王にして戦争を回避したいと書いてあった。


国王を追い込んでルイスが即位するから、私や魔王を消してアレクを後継者にするつもりなの?第2王子が立太子することがほぼ決定しているのに?



それとも、指名手配犯の子供が王家の血を引いているのは許せないから、私と一緒に消すつもりとか…?



そこまで考えて顔面蒼白になる。




「……や、……いや!」



「レティシア?どうしたの!?」


「ルイスとアレクが一緒にいる!いやだ…っ、私からアレクを奪わないで!私は処刑されてもいいから、アレクの命だけは助けて…っ」



「何を言っている?レティ!落ち着くんだ!」


「レティ、説明し───きゃあっ」



私を宥めようとした両親が、私の乱れた魔力に弾かれて床に倒れた。



頭では抑えなきゃと思うのに、脳裏に映る映像に心が乱れるのを止められない。


ダメだ…っ、また魔力暴走を起こしてしまう…っ、ここはジュスティーノ王国の城なのに…!


必死に自分の手首に爪を突き立てて痛みで暴走を食い止めようとするけれど、呼吸がまた過呼吸気味になっていく。



体内の温度が上がっていく。

このままじゃ本当にマズイ…っ、


至近距離にいる両親を傷つけてしまう!




「や…っ、た…すけて…っ、ヴォルフガング…っ」




咄嗟に魔王の名前が出た。


でも過呼吸の合間に出した声は小さくて、きっと誰にも届かない。




それなのに、私の助けを求める呟きから数秒待たずに、後ろから誰かに抱きしめられた。






「全く、手のかかる女だなお前は」




呆れたように呟いた声の主は、私の顔を横に向けさせるとその口を塞ぎ、口内から冷たい魔力を流し込んだ。


その冷たい魔力が、私の体内で暴れようとしている魔力を抑え込む。荒波のように動く私の魔力を制御し、凪いだ状態に導いていく。


それに比例するように、私の魔力に当てられてガタガタと揺られていた周りの家具たちの音が収まっていった。



ようやく暴走が収まると、魔王の唇が離れ、その瞳と目が合う。



そのまま離れると思ったのに、何故かまた距離が縮まり、再びキスをされた。



触れるだけの、短いキス。


魔力を流されるでもなく、ただ触れただけ。




──────なぜ?




「お望み通り助けてやったんだから、褒美くらいもらってもいいだろう?」



目を見開いて驚いている私に、魔王は出会った時に見せた色気駄々洩れの笑みを見せ、



私の下唇を親指でなぞった。



「!?」



何…?


なんなの!?



約3年ぶりに歩く18禁が現れた!



なんで!?




「ううん…っ、ゴホッ、ゴホッ」




再び狼狽えそうになった時に、前方からわざとらしい咳払いが聞こえた。


その声の方に視線を移すと、苦虫を潰したような顔をしているお父様と、困ったように微笑んでいるお母様がいた。



父にじと目で見られている魔王は私の隣でしれっとした顔で立っていて、親の前でキスした事を悪びれている様子は全くない。



「それで?レティシアは何を見たんだ?アレクセイのいる場所が分かったんだろ?さっさと魔鳥を呼び出して記録した映像を見せろ」


「わ、わかった!」



魔王のおかげで本格的に暴走を起こす前に抑えることが出来たので、それほど魔力を消費せずに済んだ。


言われてすぐに魔鳥を転移させて両親と魔王にアレクの様子を見せる。




ルイスとアレクの仲睦まじい様子にやはり、全員が顔を歪めた。



「これだけじゃ生かす為に保護しているのか、罪人の子供として監禁しているのかわからないな」


「お兄様から王妃に密書を出してもらいましょう。どのみち王妃は戦争を食い止める為にジュスティーノに協力を求めてる。愚王の失脚を手伝う条件としてアレクの引き渡しを要求すればいいわ」


「そうだな、それならスムーズに交渉できるだろう」


「ありがとう!お父様!お母様!」







この3日後、アレクを取り戻しにオレガリオに行くことが決まった。

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