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設定崩壊が止まらない男①




「なるほど。レティシアさんはオレガリオ王国の公爵令嬢でしたか。道理で美人なお嬢様って感じなわけだ」


「・・・もう公爵家を出てただの平民だから、レティシアでいいわよ」




魔王に美人なお嬢様とか、照れながら言われるの違和感半端ないんですけど───。




星と月明かりしか頼るものがない森の中、どこを目指して歩いているのか自分でもわからないけど、魔王といれば魔物が襲ってこない事が判明したのでとりあえず彼について森の奥を進む。


その間、お互い簡単な自己紹介をした。





魔王の名前はヴォルフガング。


転生した彼の前世も大学生で、どっかの企業の御曹司だったけどいろいろあって人間不信になり、大学を休学して引き篭もり生活を送っていたんだとか。


死因は覚えてないらしい。



魔王なのに毒気がなく、どこか浮世離れした感じは箱入り息子だったからなのかと妙に納得。



「それにしても・・・御曹司が何故にあずき色ジャージ・・・」



素朴な疑問を投げかけると、魔王は照れ笑いをしながら頬を掻いて、



「憧れだったんです。一度でいいからダラシない格好してみたかったんですよね」



と、秘密を打ち明けてキャー!となっている乙女な反応を見せた。




「・・・・・・・・・」




いや失礼じゃない?


それ一応、庶民の運動服。なんなら学校でも使われた事があるような庶民のフォーマル運動服。


それをダラシない服認定とはどういう了見だ!



ボンボンが通う学校は体育の時何着てたの?

ダラしなくないジャージってどんなだよ?


一流ブランドが出すスタイリッシュなスポーツウェア?




・・・・・・・・・・・・・・・・・・ケっ!




と、前世の貧乏家庭出身な私の妬み嫉みが爆発しているが、公爵令嬢としてのレティシア目線なら分からないでもない。



転生したのが貴族じゃなかったら腹いせにその綺麗な長髪を引っこ抜いてハゲ散らかしてやったかもしれない。





「それにしても、この世界にジャージ素材が存在するとは思わなかったわ」


「ああ、それは魔王の権限で作らせました!開発に時間かかりましたけどあまりに楽チンで気に入ってしまって。動きやすいし、汚れても怒られないし、洗濯も楽チンだから魔族の民にも提供してるんですよ。僕ら魔王軍の最高傑作です!」



拳を握って鼻高々に自慢している御曹司の発言に私は目を見開いた。



「・・・・・・・・・は?」




え?


他の魔族もジャージ着てんの?

ていうかジャージ素材の開発とは!?



魔王軍てあの美形揃いの四天王をトップにした最強軍団だよね?その魔王軍にジャージ作らせたの?



イケメン部下達の無駄遣いが酷いんですけど!!



ジャージ素材をあーでもない、こーでもないと言いながら商品開発をする魔王軍とか・・・シュール過ぎる!!


戦士達に何させてんだ!



神の巫女もドン引きだよそれ。




目の前に乙女ゲームクラッシャーがいるわ。


ある意味世界の滅亡だから、やっぱりコイツは魔王で合っているのかもしれない。



乙女ゲーム設定を滅ぼす魔王・・・ヴォルフガング・・・。

 

前世の世界ならファン炎上だよ。




「ところで、レティシアは何故この森に?君が凄腕の魔法使いなのは分かったけど、貴族令嬢が1人で入るような場所じゃないよね」



何だか前世共にいろいろ精神を削られたので、私はツッコむべき要素は無視して事の経緯を彼に話した。


妊娠してる事は言ってないけど。





「酷い・・・っ、そんな辛い目にあったのか!?やっぱり・・・っ、やっぱり人間は残酷だ!!どの世界でもそれは変わらないんだ!魔族の皆の方がよっぽど心が綺麗で優しい」


「そうなの・・・?」


「ああ、人間不信だった僕がこうやって外を歩いて前向きに暮らせるようになったのは、魔族の皆が僕を支えてくれたからだよ。彼らは本能に従って生きているから良くも悪くも素直なんだ。自分の信念を持って思いのままに生きている。僕はそんな彼らが羨ましくて、眩しくて、憧れているんだ」



「僕もいつかそうなりたいと思ってる」と真っ直ぐ前を向いて心の内を話す彼を見て、転生前の彼はお金持ちという恵まれた環境で育ったけれど、周りの人間には恵まれなかったのだなと察する。


だから引き篭もりになったのだろうし。

きっと、孤独だったのだろう。





「私も、しがらみ全部捨てて自由になる為にこの森に来たのよ。この森は魔物が沢山いる事で瘴気が濃くなって、磁場が狂っているでしょう?ここにいれば王家や公爵家の追手が私の魔力残滓を辿ってこれない。殺されずに済むから」


「何で王家に殺されるの?」


「私は王太子の婚約者でもう妃教育を終えているの。つまり王家の表も裏も全部知ってしまったわけ。王家の裏は絶対に秘匿しなければならないの。だから見つかればそのまま無理矢理結婚して、公務をさせる為にお飾り妃として飼い殺しか、浮気相手を妃にするまでの繋ぎで、役目が終わったら幽閉して毒杯、すぐに殺して口を閉じさせるかの3択が私の末路」



「そんな横暴な!」


「王家なんてどこの国もそんなもんよ」


「魔族の国は違う!」




「・・・・・・そうね。魔族は違うわね」




魔族は昔から人間に恐れられているけれど、実は人間を害しているのは極一部なのだ。



それは、人間との間に生まれた混血の魔族達。



人間族にもなれない、魔族にもなれない、半端な混血魔族が人間と魔族を恨み、人間を害してその罪を魔族に着せているのだ。




何故私がそんな話を知っているかというと、目の前にいる魔王も実は攻略対象者なのだ。だから当然クリア済み。


全員のハッピーエンドを迎えると隠しルートが解放されてヴォルフガングを攻略できるようになる。



ヴォルフガングのルートでは、混血魔族との戦いがメインで、紆余曲折を経て神の巫女と真実の愛で結ばれる。


そしてラストは神の巫女が橋渡しをして人間族と平和条約が締結されるんだよね。



魔王ルートはレティシアの死後からのスタートだから、本当なら私とヴォルフガングが今こうして出会ってる時点でシナリオとはズレている。




いや、そもそも魔族の国では転生した御曹司によって既にシナリオ崩壊していたのだけれど・・・。





「あーーーー!!!いろいろあって忘れてた!!僕こんな所でゆっくり散歩してる場合じゃなかったんだ!!」


「え!?」



「仕方ない!1人にしたらまた魔物に襲われるから、レティシアも一緒に来て!」


「ええ!?何事!?」



突然腕を引き寄せられ、腰に手を回されたのでギョッとして抵抗しようとしたら視界がぐらりと揺れた。



「!?」


「急いでるから転移するよ。掴まってて!」








そうして私は魔王に連れ去られた。

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