話題の劇団 side ユリカ
「話題の劇団?」
卒業後、修行の旅の準備が着々と進む中、ユリカは侍女に市井で大人気の演劇があると聞いた。
「はい。元は絵画のような小説?を元にした演劇で、数カ国で大人気だった劇団がついに我が国にもやってきたらしいのです」
「へえ!どんな話なの?」
「恋愛モノらしいんですけど、主人公の女性が罠に掛けられたり、罪を暴いたりと今までにない恋愛劇らしいです。私の友人がすごく面白かったと言っていたので私も観に行ってみたいですわぁ。なんでも人気過ぎてチケットは抽選だと聞きました」
「そんなに人気なの?だったら私も観に行きたいなぁ。もうすぐ修行の旅でここを離れるし、市井で香水のストックも買っておきたいのよね。ルイス様に頼んでみようかしら」
ユリカとルイスは、あのバルコニーでのスチルイベント以降恋人関係に戻りつつあったが、どうやらそれは好感度アップアイテムがないと成立しないらしい。
何度か違う香水をつけてルイスの前に立ってみたが、その時はユリカに対して距離を取られている。
効果が永続性ではないのならストックが必要になるため、ユリカは頭を抱えた。
あの香水は本当に高いのだ。だからこそ即効で好感度が上がるのだろうが、ストックできるほどのお金をユリカは持っていない。
だからエバンス達に贈り物をされる際、宝石やドレスなどの装飾品は強請らず、ティアラドロップを指定していた。
そのおかげで今手元に2本ストックがある。
だが修行は3年間。
とても保つとは思えない。
そうなると使い所を気をつける必要がある。
「ああもう!ホント面倒くさい!ルイスもレティシアもゲームキャラのクセに勝手な行動ばかりして!大人しく私の幸せの為にシナリオ通り動きなさいよ・・・っ、早くヴォルフに会いたいのに!」
就寝前、いろいろ考え過ぎて腹が立ったユリカは寝台の枕に八つ当たりをしていた。
自分の推しに早く会いたいのに微妙に進まない攻略にユリカの苛立ちは膨れ上がる。
彼に会う為にも、自分はこの修行の旅で成果を出し、魔族の国まで自分の活躍を届けなければならない。
その情報を得て彼は自分を攫いにくるのだから。
その為にも、3年以内にレティシアを討たなければ。
「ヴォルフ・・・早く私を迎えに来て・・・」
◇◇◇◇
「ルイス様!今日は演劇に連れて来てくれてありがとうございます!すごく楽しみです」
「ああ、君が喜んでくれて僕も嬉しいよ。どんな劇か楽しみだね」
ユリカ達は本日話題の演劇を観に来ている。
これを実現する為にユリカは香水を使ってルイスにおねだりをした。王家のコネを使えばチケットを取れると思ったからだ。
そして市井に出たついでにルイスに香水を買ってもらおうと思い付き、劇場に来る前に既に買ってもらった。
ルイスはこの香りが好きなので、高値だろうが躊躇いなくプレゼントしてくれた。これでストックは3本だ。
劇場内に入ると既に満員と言っていいほどの観客で埋め尽くされている。
ユリカ達が座るのはロイヤルシートだ。
ユリカとルイス、護衛以外は入れない。
「すごい人気だね。どんな話か楽しみだ」
「はい、私も楽しみです!」
開始のブザーが鳴り、客席の照明が落ちて舞台に光が当てられる。
始まると学園のセットが浮かび上がり、制服を着た役者達が舞台に現れ、1人の少女が周りから嘲笑されるシーンが始まった。
婚約者の寵愛が他の女に向けられた哀れな主人公。
だが自分の家を守る為、貴族令嬢として気高く振る舞い、婚約者と浮気相手に正論をぶつけて論破する。
貴族マナーを嗜められた浮気相手は、当たり前の事を注意されただけにも関わらず涙を流して被害者ぶり、主人公を悪役に仕立てていくのだ
こうして主人公はどんどん悪女と周りに噂され、婚約者にも冷たく当たられるようになっていく。
既視感を覚える内容だった。
「これは・・・・・・」
ルイスも気づいたようだ。
「何よ・・・何なのよこれ・・・」
舞台に目が釘付けになる。
これが数カ国で流行っていたと?
主人公は高位貴族の令嬢で、被害者ぶって涙を流している浮気相手が下位貴族の令嬢。
こんなテンプレ設定、日本で散々見てきた。好きでいろんな小説読み漁った。
「なんでこの世界で逆ざまあの話が流行ってるの・・・?」
目の前で繰り広げられている劇は、
まさにユリカがレティシアを追い込むためにやった策略だった。
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