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運命に抗う① side ルイス





「ルイス様・・・っ」



湯浴みを終え、ベッドに腰掛けて寝ようとしたその時、ここにいるはずのない声が聞こえた。



「ルイス様!会いたかった・・・っ」



月明かりの中で目を凝らすと、目の前で外套が揺らめき、自分の体を包み込んだ。


この嗅ぎ慣れた甘い香りは────巫女。



自覚した途端、嫌悪感が走る。





「ユリカ・・・っ、何故ここにいる」




首に手を回して抱きついてきたユリカを引き剥がし、ベッドから離れて距離を取る。




「ルイス様・・・?どうして私を拒むの?あんなに私の事愛しいって言ってくれたじゃない!キスだって沢山してくれたのに!」



「君には・・・すまないと思っている」


「何が!?」



「君は神の巫女なのだから、触れてはいけなかった。王太子と巫女という一線を越えてはいけなかった」


「何言ってるのルイス様・・・?私達はただ愛し合っただけじゃない。人を愛して何が悪いの?」



「レティを傷つけた」




レティシアの名前を出した途端、ユリカの顔が歪んだ。

そんな表情を初めて見たので少し狼狽えてしまう。




「あの人は!ずっと私を虐めてた人なのよ!?何で庇おうとするの?こないだだって脅迫状を送り付けてきて、今も私に危害を与えようと画策してる人なのに!」


「脅迫状を送り付けた犯人は彼女じゃないよ」



「だってルイス様を奪った私を許さないって書いてあったのよ?そんなの元婚約者のレティシアさんしかいないじゃない!」




・・・僕は、彼女のどこに惹かれたんだろう。



「────君は、肝心な事を忘れてないかい?」


「え・・・?」




込み上げた嫌悪感と怒りに、思わず低い声が出た。

そんな僕に驚いたのか、ユリカは目を見開いている。




「オレガリオは魔法国家で、ここは王宮。国1番のセキュリティを誇っている。その中で1番の要人である巫女に、脅迫状を送れる奴なんかいるわけないだろう?」


「で、でも実際に届いたわ!証拠は提出したじゃない!それに公爵令嬢なら権力を使ってどうとでもなるでしょ?」



「証拠・・・証拠ね。確かに脅迫状は確固たる証拠の品だよね」


「ほら!やっぱり───」





「君が自作自演したという証拠がね」




ヒュッと息を呑む音が聞こえる。


薄暗い中でもユリカの表情を見れば顔面蒼白なのがわかった。



影の調査報告を見た時は嘘だろうと思ったが、証拠の映像まで見せられては何も言えなかった。



「な・・・何を言ってるの?わ、私は何もやってない!」


「人の思い入れが強いとね、物には残留思念というものが宿る。ウチの王宮魔法士は優秀でね、その残留思念を映像化できるんだよ」


「・・・嘘・・・」




「君に送り付けられた脅迫状には、レティを陥れたいという君の思念が強くこびりついていた。だから君の行動の様子がくっきりと映像に残っていたよ。」



ユリカの体がガタガタと震えている。


この国に魔法が存在する事は知っているはずなのに、なぜよりによって王宮で罪を捏造したのか。浅慮にも程がある。


それが神の巫女のする事か?



「この件に関して王家が黙秘していたのは、国王達もこの騒動が君の自作自演だと知っていたからだよ。だから真実を隠蔽する為にアーレンス公爵家を盾にした。その結果、彼らは爵位を他の者に譲渡して王都から去ってしまった」




この件で疑問を持った僕は、学園で巫女が虐められていたという話も捏造ではないかと思うようになり、父に捜査する様に進言して調べさせた結果、やはり虐めは嘘だった。


ただ貴族としてのマナーを注意しただけの者や、明らかに捏造と思われる虐めまで様々で、今まで父や僕が罰した生徒達は冤罪だった事が発覚し、父は頭を抱えた。



ユリカが大袈裟にした訴えを僕らは盲目的に信じ、僕の治世で支えてくれるはずの臣下を無実の罪で罰したのだ。


正義はこちらにあると思っていたが、結果は多くの貴族の忠心を失っただけだった。






『何という事だ。このままでは内乱が起こるかもしれん。この件は絶対に外部に漏らすな。影には徹底的に証拠隠滅を命ずる。罰してしまった貴族を黙らせるには何としても巫女の正当性を主張せねばならん。学園卒業後、王家の記録書通り修行に行き、魔物の間引きをして神力を高め、成果を出せ。そしてお前は巫女を娶るんだ。何としても巫女と魔王を倒し、こちらが正義だと証明せよ。でなければお前の治世は確実に乱れるぞ』


 


『───────わかりました』





これは盲目的に神の巫女を信じ、レティシアを傷つけた僕への罰なのか。

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