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悪役令嬢、ブチ切れる




「レティシア!!」


「お父様!お母様!」





ガウデンツィオに来て2ヶ月が過ぎた頃、ようやく私は両親と再会する事ができた。



魔王城の前に停まった馬車から降りてきた二人は、心なしか痩せたような気がする。


私がいなくなった後に気苦労が絶えなかったのだと思うと、胸が締め付けられた。



二人は私の姿を視界に捉えると、感極まった様子で私の名を呼び、こちらに駆けてきた。



「レティシア・・・っ、無事で良かった・・・っ。本当に心配したのよ!身重の体でなんて無茶をするの!」



私を抱きしめる母の腕が小刻みに震えている。


その母と私を二人ごと抱きしめている父は、言葉が見つからないようで嗚咽をこぼして涙を流していた。



「ごめんなさいお父様・・・っ、お母様・・・っ」


「いいんだ、お前を追い詰めてしまった私達にも非はある。愛していると伝えれば良かったのだ。お前が王家で生き抜くために、王家の食い物にされないようにと厳しくし過ぎてしまった。許してくれレティシア」


「私達は守り方を間違えてしまったわ。こんなことになるなら、もっと早く亡命して貴女を王家から解放すれば良かったのに・・・っ、ごめんねレティシア・・・っ」



違う。私がルイスを愛してたから、両親は身動き取れなかっただけだ。自分達の事より、私の気持ちを尊重してくれた。



「でも私達は貴女を愛してるのよ。それだけは嘘偽りないわ」


「はい・・・っ、はい・・・っ」



涙が止まらなくて、胸がいっぱいでそれ以上の言葉が出てこない。




私を抱きしめる母の腕が、


私の頭を撫でる父の手が温かくて、



孤独だと思っていた心が解けていく。











「アーレンス公爵、公爵夫人、ようこそガウデンツィオへ」



感動の再会の後、私の後ろにいた魔王が一歩前に出て、両親達に声をかけた。  


その言葉に両親は涙を拭って姿勢を正し、王族に対する最上の礼を取る。




「ガウデンツィオ国王、お初にお目にかかります。レティシアの父、フランツと申します。この度オレガリオ王国からジュスティーノ王国に亡命し、私どもは平民となりました。本来ならお目通り叶わぬ身分ですが、我が娘レティシアを保護していただき、誠にありがとうございます。この御恩は必ずお返ししたく思っております」


「面を上げてくれ。ガウデンツィオは貴殿らを歓迎する。客室を用意しているので旅の疲れを癒してくれ」



「ありがとうございます。お心使い痛み入ります」





  


「・・・・・・・・・」



──────誰ですかこの人。




魔王が王様然とした高貴なキラキラオーラを放って両親と接している。その別人ぶりに驚いて涙が止まった。



御曹司でもなく、普段の魔王でもなく、国王の顔のヴォルフガングは初めて見た。



そして、なんと────。






魔王も魔王四天王も、今日はジャージじゃないの!!



両親とジュスティーノ王国の使者が登城するため、公式の衣装を着ている。



朝食の席で5人のその姿を目の当たりにした時、私は絵面が眩し過ぎて直視できなかった。


公式衣装の破壊力恐るべし!!



思わず感極まって「皆ありがとう。ご馳走様でした」と涙を流しながら手を合わせ、お礼を言ってしまった。


食欲が無いのだと見なされてケンタウロスに朝食を奪われそうになったけど、もちろん死守した。





「夜は晩餐に招待しよう。それまで客室でゆっくりしてくれ。レティシア、お前も晩餐まで休んでいいぞ。家族で過ごせ」


「ありがとうございます。そうさせていただきます」





魔王の違和感半端ないけど、ここは有り難くお言葉に甘えておこう。






◇◇◇◇






客室で両親と向き合い、改めて心配かけた事を謝罪した。

そして、私が家を出た後の話を聞いた。



まず驚いたのが、婚約解消を求める謁見でルイスが激しく抵抗し、その後気を失ったということ。



「どうしてルイスが?容態は!?彼は無事なの!?」


「落ち着いてレティ。殿下は大丈夫だよ。2日後には目を覚まされて今では公務に戻っている」


「そう・・・」


「あんな酷い仕打ちをされたのに、貴女はまだ殿下を好きなの?」




母の問いかけに、なんて答えればいいのかわからなくて言葉が詰まる。


今の私のルイスへの気持ちはとても複雑なものだから、好きか嫌いかの一言では済ませられない。



子供の父親でもあるし、愛した人なのだ。




でも・・・、



「彼のした事は、許せない。巫女が好きなら私との関係にケジメをつけてから恋人関係になって欲しかった。私には愛してると言いながら、裏で私室に巫女を呼んでいたなんて・・・。そんな誠意のない彼を許せないし、もう信用することはないでしょう。でも、だからといってすぐに気持ちを切り替えられないんです。巫女が現れるまでは、確かに彼は私を愛して、大事にしてくれましたから。──だからこそ、何で?って気持ちが消えなくて辛いんですけどね・・・」



まだ私は、ルイスへの気持ちを消化しきれていない。


ルイスの事を考えると黒い感情が止めどなく溢れて、この感情が中ボスへの道に繋がるんだと前世の私が警告する。


だから今でも正気を保っていられるのだ。



中ボスになって、子供を危険に晒したくない。


私は今、その想いだけで前に進んでいる。




「でも、私は正直婚約解消になって良かったと思ってるの。あの王家はもう泥舟よ。今の国王が退位しない限り、国は傾く一方でしょうね。そしてそのツケは次期国王の殿下に向かうわ。ルイス殿下の治世はとても苦しいものになる。それをあの愚かな巫女が支えられるとは思えないわね」


「でもまあ、あの巫女が愚かだったからこそ私達は王家に怪しまれる事なく国を出られたんだ。その点だけは感謝している」


「まあ、それもそうね」



「・・・?巫女がお父様達に何かしたんですか?」


「私達というか、レティシアに対してだな」


「・・・?」






私は、ユリカが私の不在時にやらかした脅迫状事件の事を聞いた。


領地に籠っている設定の私に冤罪を被せ、社交界に悪評をばら撒いたらしい。


そのせいで両親が社交界で貶められ、犯罪者を見るような目で見られていたという。



おそらく、卒業前に破落戸に襲われるイベントを再現したかったのではないだろうか・・・。だから私を悪女に仕立てて自分が狙われているかのように仕向けた。



「・・・・・・っ」



なんでよ。私はもうゲームの舞台を降りたじゃない。

ルイスと巫女は恋仲になり、私は身を引いた。


それでもうハッピーエンドじゃないのよ!



なんで国を出た後も何もしていないのに貶められなければならないの。そのせいで両親が社交界で白い目で見られていたなんて・・・っ。




許せない・・・。





「・・・────けんな・・・・」



「「え?」」





「ふざけんな!あの性悪女――――ー!!!」

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