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シナリオにない展開 side ユリカ




「一体どうなってるのよ!!」




ダン!!と苛立たしく机を叩いたユリカは、度重なるイレギュラーな展開に怒りを露わにした。


既に侍女の前でも取り繕う事が出来ないほど余裕を失くしている。



卒業前に早々にルイスと婚約解消し、領地に篭ってしまったレティシアを挑発する為、脅迫状を仕込んで社交界に悪評をバラまいた。


なのに、そのレティシアに一切の動きが見られない。



宰相の息子であるエバンスに頼んで、領地にあるというアーレンス公爵家を調べてもらった事があるが、本当に邸に引き篭もったままのようで何の動きもないという。


更に最近では社交界の噂により、アーレンス公爵夫妻も爵位を親戚に譲渡し、王都から完全に撤退するという噂を聞いた。




「そうじゃないでしょ・・・っ、アンタ達はそんなしおらしい人間じゃないでしょ?闇堕ちして犯罪に手を出す人間達でしょうが。何でやり返してこないのよっ、これじゃいつまでたってもルイスとの仲が深まらないじゃない・・・っ」




もうすぐ卒業という今の時期、ヒロインに対するいじめが1番加熱する時期なのだ。


そのイベントを乗り越えて愛情がより深まるという大事な時期だというのに、今や誰もユリカを虐めてこない。




それもそのはず。


当初学園内でユリカに苦言を呈していた貴族の子息令嬢達は、すでに皆国王に罰せられ済みだ。



そして王太子は長年の婚約者だったアーレンス公爵令嬢と婚約を解消し、次期婚約者には巫女が有力候補だと噂になっている。


更に追い討ちをかけるように長年王家を支えたアーレンス公爵家が社交界で貶められ、一家で王都から去る事態にまでなった。



全ては巫女と関わった為に起きた出来事。




こんな生きた爆弾に触れようとする貴族はもういない。



それは巫女を支持していた貴族達も同じだった。


時が経つにつれ、冷静にこれまでの事を振り返るとこの異常な状況に疑問を持ち始める者が出てきた。


よって貴族達は自分の子供達に巫女に近寄るなと徹底周知し、保身に走るようになった。



今や学園ではユリカとエバンス達だけでつるみ、他の生徒達は遠巻きに様子を見てるだけの状態が出来上がった。




全ては前半から飛ばし気味にルイスの庇護欲を煽り、いじめを捏造して皆に泣きついたユリカの行動の結果であった。


性急に事を進めた為に歪みが生まれたのだ。



しかも、肝心のルイスには避けられていて未だに王太子宮に入れない。


もうずっと彼に会っていなかった。




「何であの時拒否られたの・・・?今まで会えばいつも抱きしめてくれたのに。キスしてくれたのに・・・。どうすればいいの・・・っ、このままじゃ何も起こらずに卒業しちゃうじゃない」



卒業後、修業が始まれば1番好感度の高い攻略対象者とペアになって、魔物退治の修業の旅に出るのだ。


このまま卒業になればルイスとペアになるどころか、卒業パーティーのエスコートもしてくれるかどうかわからない。



卒業前に何としてでもルイスに会わなくては。










◇◇◇◇





「サイモン、私ルイス様に会いたいの・・・っ。このままだと私、王宮を追い出されるかもしれない。お願い、私を助けて・・・っ」




ユリカはサイモンと2人きりになる環境を作り、彼の胸に顔を埋め、涙を流した。


サイモンは愛しい女から香る甘い香りに耐えられず、ユリカを強く抱きしめる。



「何の後ろ盾もない私なんて、ルイス様の側にいられなくなったら王宮で誰にも守ってもらえないわっ。現に王妃様に嫌われて王太子宮を出入り禁止にされてしまった。異世界から来た私が王家に見放されたら、もう生きていけない。助けてサイモン・・・っ」


「ユリカ、大丈夫だ。ユリカは神の巫女なんだから王家が見放すはずがないよ。ユリカにはこれから世界を救う使命があるんだ。王家もそれはわかっているはず」



「じゃあ何でルイス様に会えないの?」


「それは・・・」





実はサイモン達もルイスの変わりように驚いていた。


あんなにユリカを愛していたように見えた男は、今現在あの悪評まみれのレティシアと会う為に、必死にアーレンス公爵夫妻に接触を試みている。


全て無下に断られているらしいが、諦めていない様子だった。



サイモン達はもちろん反対した。今更あんな悪女に固執する理由がわからないと問い詰めれば、なんとルイスは「レティを愛しているからだ」とのたまった。


その時、主に抱いてはならない感情が芽生えた。



それは激しい怒りだ。




自分達が欲しくて欲しくてたまらないユリカを、権力で恋人に据え置きながら、手のひらを返したように再び悪女に愛を向けている男にどうしようもない苛立ちを覚えた。


それはエバンスやトリスタンも同様だったらしい。彼らも拳を強く握り、怒りを必死に抑えているようだった。




ルイスのユリカへの想いはその程度だったのか。




「サイモン・・・?」


「・・・殿下はまだ体調が優れないんだ。まだまともに公務も出来ていないし」


「だったら尚更彼の側にいて支えたい。お願いサイモン、私をルイス様に会わせて?騎士のサイモンなら見張りの人を何とか出来るでしょう?サイモンしか頼れる人がいないの・・・っ」



ユリカは目に涙を溜めて上目遣いでサイモンを見つめる。


この男がこういう表情に弱いのは知っているので、更に体を密着させ、「お願い、私を助けて?」と迫った。



「ユリカ・・・」




サイモンの表情が恍惚としたものに変わる。


目の前の女の為なら何でもしてあげたい。


彼女の愛を乞いたい。





自分の願いを了承したサイモンを見て、


ユリカは笑みを浮かべた。

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