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両親の愛




きっと私は両親に引き渡されるのだろう。




私の存在はこの国にとって厄介者でしかない。


オレガリオ王国では巫女が現れた事で魔王討伐の為の準備が行われているのだ。


そんな中で元公爵令嬢の私がガウデンツィオにいるとバレれたら戦争の火種にしかならないし、私は王家の情報を流したスパイとして処刑される可能性が高い。



国に戻った時の自分の行く末が簡単に想像できて手が震える。



こうして遠い国まで逃げて来たのに、結局あの国との繋がりは消えてくれない。しぶとく私をからめとろうとする。



隣国の国王や外交問題を出されたら私に拒否権なんかないじゃない。ヴォルフも何を言えばいいのかわからなくなったようで黙り込んでいる。




もう詰んだ───。




「・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・」





気を抜いたら号泣してしまいそうだから俯いて必死にこらえていると、頭上からアドラの呑気な声が降ってきた。



「まあ、そう悲観せずとも」





誰のせいでこんな空気になったと思っている!!



つい腹が立ってアドラに睨みを利かせてしまうが、当の本人は全く意に介さずのほほんとしている。




「書状は今朝届いたばかりで使者も客室で休まれています。返事を用意するまで少し時間があるので、その間に前情報を集めないとなりませんね。貴女のご両親にも事情があるのでしょうし、決断するのはそれを聞いてからでも遅くありません。それに───」



言葉を区切り、アドラが目を細めて私を見据える。

獲物を狙うかのような鋭い視線に体が固まった。




「貴方達アーレンス公爵家は王家とも繋がりが深い。公爵という立場となればいろいろ貴重な情報を持っている事でしょう。例えば人身売買の件について───とかね」


「・・・っ、公爵家が関わってるって言いたいの!?」



「いえ、それも含めて何か有力な手がかりが得られるかもしれないという話です。どちらにしろ情報が無ければ返事のしようがない。────魔王様、漫画制作中はお休みされているのはわかっていますが、そろそろアレを呼び戻してくれませんかね?」




アドラがヴォルフではなく魔王と呼んだ。


すると目の前に座っている男の纏う空気がガラッと変わる。また人格が入れ替わったようだ。



「・・・レティシア」



不機嫌な顔で魔王がこちらに手を伸ばしてくるので私は完全に萎縮した。


「何!?何をするの!?」




まさか魔王も人身売買にウチが絡んでると疑ってる!?



「落ち着け、お前の魔力であっちにいる魔鳥を呼び戻すだけだ。魔鳥はお前の魔力と波長の合う者に反応するよう作っている。俺が呼ぶよりお前の魔力で転移させた方が早い。だから手をこちらに乗せて俺に少し魔力を流せ」



そう言って魔王が手を差し出してきたが、何の話か全くわからないので未だ警戒していると、大袈裟にため息をつかれた。




「あのな、俺が素性のわからん他国の女を何も考えずに保護するわけないだろ。とっくにお前の家に偵察に向かわせている」

 


・・・いつのまに。


どうやって私の魔力を使ったのかは知らない方が良い気がするわ・・・。





「ですが、偵察に行かせたはいいものの、その後呼び戻すのすっかりお忘れのようでしたけどね?」



アドラのツッコミに魔王が口を閉ざした。



「・・・・・・忘れてたんかい!」


「うるさい、ほら呼び戻すぞ。魔力流せ。」











◇◇◇◇






「うう…っ、お父様…っ、お母様…っ」



ズビー!!



現在私は号泣しながら鼻を思いっきりかんでいる。


もう淑女とか…身なりを考える余裕など全くない。

涙が止まらなくて自分の感情をコントロール出来ずにいる。





召喚された魔鳥から映し出された映像は、どれも私の想像を超える出来事だった。



私がいなくなった後、両親はすぐに領地に籠ってしまったらしい。その時の領地での様子が映像に映し出されていた。




それで知ったのは、両親の私への愛だった。




私の知らない所で、王の命令に振り回されていた事。


私を王家から解放させる為に、婚約を解消してくれた事。


私を守る為に、国を捨てて隣国ジュスティーノ王国に亡命する準備をしている事。




───ずっと、愛はないのだと思っていたのに。




『レティシア、お願い。どうか無事でいて──』


『レティ・・・』



合間に両親の口から漏れ出る私を心配する声に、鼻の奥がツンとなって涙が込み上げた。



私は、どうやら両親に愛されていたらしい。



公爵家のための、駒じゃなかったんだ・・・。


私に忠告していた事は、全部国王から身を守るための術だったのだ。



今思えば、国王は私をダシにして両親をいいように使い、公爵家や隣国からの支援を引き出していたのだろう。


ずっと、私を守る為に両親は苦渋を味わってきたのだ。




全然知らなかった。


私がルイスを愛してたから?



だから私の為に、ずっと我慢してたの?




そんな親心に気づきもせず、私は両親を捨てて黙って国を出てしまった。何て親不孝なんだろう。




「ごめんなさいお父様・・・っ、お母様・・・っ」





「─────レティシア、お前はどうしたいんだ?」



魔王が静かに、私に尋ねた。






私は・・・・・・、






「お父様とお母様に、会いたい」

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