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ちぐはぐな想い② side ルイス




「貴方とレティシアの婚約は解消されました。理由はわかりますね?」


「・・・・・・・・・」





レティシアを失って、絶望した。



理由は僕と巫女が恋仲になったから。

私室で巫女と口付けていたのをレティシアに見られた。



そして彼女は心を閉ざした。




「貴方が巫女と恋仲になったと笑顔で報告に来た時、私は貴方の気が触れたのかと思いました。あれほどレティシアを愛していたのにケジメもつけず、二人を弄ぶようなマネをするなんて」


「弄ぶだなんて───」




母の冷たい視線に言葉を失った。


母が僕に心底幻滅しているのを感じたからだ。




「貴方がすべきことは、巫女と恋仲になる前にレティシアに真実を話すべきだった。それなのに貴方はレティシアに事情を隠し、選択肢を与えずに二人の女性を手に入れようとした。どちらかを側妃に迎えるとしても、我が国では正妃を迎えた後3年間子供に恵まれず、議会で承認されてからでないと側妃を持てないのよ?国中が巫女を正妃にと期待する噂が飛び交ってる中で、レティシアがどれだけ追い詰められていたか、貴方わかっているの?」




母の言葉に呆然とした。


レティシアを取り巻く環境が、そこまで酷かったなんて知らなかった・・・いや、わかろうとしなかった。


調べようと思えばいくらでも調べられたのに。




「貴方はレティシアを愛妾にしたかったの?」


「そんな!違います!レティシアは正妃にと──」



「なら巫女を側妃か愛妾に?そちらの方があり得ないわ。そんな事したら王家は国中から非難を浴びてその座を追われるかもしれないわね。今や国の希望の象徴である巫女を2番目扱いだなんて、神への冒涜だと罵られるでしょうね。以前の貴方ならそんな愚かな選択浮かぶ前に回避していたはずよ。女で道を誤るなんてがっかりだわ。公爵夫妻に見限られて当然よ」




母の大きなため息に体がビクついた。


僕は母の信頼も裏切ってしまったのか────。




国民や公爵夫妻の事まで考えが及ばないなんて王太子失格だ。そして男として・・・人としても最低だと言われても仕方ない事をしたのだ。



確かに以前の僕ならこんな失態犯さなかったかもしれない。


公爵夫妻と父の間には前々から異様な空気が流れていて、彼らが僕とレティシアの婚約をよく思っていないのは何となくわかっていた。



だから揚げ足取られてレティシアを奪われないようにいつも慎重に行動していたのに───巫女が現れてから全てが狂った。



「貴方達の側近も貴方を諌めるどころか一緒に巫女に侍って現実が見えていない。役立たずと見なされて今彼らの婚約者達も婚約解消する方向で動いているのよ。アーレンス公爵含め、複数の有力貴族が次期王家から手を引こうとしている。これがどういうことかわかる?もう既に王家の求心力は失われ始めているの」




そうだ・・・僕だけでなくエバンス達も巫女に夢中になっていた。


以前なら僕が選択を間違えそうになった時、必ず手を貸して道を外れないようフォローしてくれていたのに、最近彼らはレティシアを悪く言うばかりで距離感を感じていたから、相談することもなくなってしまったのだ。


次期王家を担う僕らが機能していない。



見限られて当然か───。




「申し訳ありません、母上・・・」


「貴方、今は巫女を拒絶しているようだけど何故?私がどれだけ忠告しても影でコソコソ逢瀬を重ねるくらい巫女に盲目になっていたのに」



「・・・わかりません。今となっては何故あんなにも巫女に惹かれたのか・・・。あの謁見でレティシアを失いそうになって初めて自分の置かれている状況に気づいたのです。そして今日は触れられる事に嫌悪感が湧きました」



でもユリカと目を合わせ、声を聞くと嫌悪感とは別に愛しさが込み上げる。


自分で自分の気持ちがわからない。




「貴方のあまりの変わりように洗脳を疑ったけれど、王宮魔法士に調べさせても魔力残滓は検知されなかったし、麻薬などの薬の反応もなかったわ」


「────つまり全ては僕の意思だと?」



「もしくは、神の加護による影響か───。もしそうなら私達にはどうする事もできないわ。あの人はもう巫女を貴方の正妃にすえるつもりよ。巫女に疑心を抱いていた貴族達は以前あの人が罰したし、中立の立場を保っていた側近達の婚約者の家もいずれ王家と距離を置く。後に残るのは巫女に心酔している者のみ。良かったわね。議会では満場一致で貴方と巫女の結婚が決まるわ」


「─────断れないのですか」


「無理でしょうね。こうなるように外堀を埋めたのは貴方よ」





────レティシア・・・。




何の感情かわからない涙が込み上げる。


泣く資格もない。全ては自業自得。




それでもやるせ無い気持ちが消えない。


いっそ洗脳や麻薬の反応があればよかったのにとさえ思う。そうじゃなきゃ、僕はただ婚約者を蔑ろにした最低な男でしかない。



頭痛と吐き気がするほど体が拒否したのに、僕のユリカへの気持ちは本当に僕自身のものなのか?







「───巫女は・・・本当に国を救う存在なのかしら。私には滅びの道に進んでいるように思えてならないわ」


「・・・っ、母上!そんな事を言ったら神罰が下りますよ!」



「そうね・・・。───あの人は愛妾が出来てから悪い方へ変わってしまった・・・。私は昔からあの人の過ちを諌められなかったから、・・・──だからきっと神罰が下るわ・・・」




母の意味深な言葉に、


僕は何も言葉を返せなかった。

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