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魔王軍四天王



「お帰りなさいませ。ヴォルフ様」


「アドラ、ただいま!」


「そちらの方は?見たところ人間族のようですが・・・」



「うん。今日から魔王城で保護する事になったレティシアだよ。実は彼女も異世界人なんだ。ガウデンツィオの為に今後は彼女の知恵も借りようと思ってる」


「なんと・・・。ついにヴォルフ様と同じ転生者とやらが見つかったのですね。良かったですね、ヴォルフ様」



「うん。ありがとう!皆はもう揃ってる?」






目の前に、魔王と魔王軍の宰相がいる。



魔神のアドラメレクがいるわ・・・っ。作画担当の子の推しキャラが目の前にいる!



彼は魔王軍四天王の一人でガウデンツィオの宰相でもあり、魔王軍の軍師だ。




藍色の艶やかな髪に青と赤のグラデーションの瞳をした美丈夫で、魔王軍の中では人気ランキング2位だったキャラクター。


宰相や軍師を務めるほど頭も良くて、戦士としてもケンタウロス並みに強いという文武両道キャラなのだ。




そして、────予想はしてたけども。


やっぱりね。って感じだけども。





黒ジャージを着ております。




でもおかしいな。魔王軍の人がジャージ着てキャラ崩壊起こしているのに、もう見慣れ過ぎたのかしら。


違和感を感じなくなってきた。




色って大事なのかもしれない。


魔王はダッさいジャージにしか見えないけど、アドラメレクはただのイケメンがスタイリッシュに黒ジャージを着こなしているようにしか見えない。



そういえば魔鳥の映像に映っていたケンタウロスも、普通にアスリートっぽい青ジャージイケメンだった。




何で国王が一番ダサいジャージ着てるのかしら・・・。









「あ、魔王様!原稿なんとか間に合ったよ!今回はかなりギリギリだったよ。ホント毎回言ってるけどさ、もう少し計画性を持って仕事してくださいよ。上がそんなんじゃ下の者が動きようがないんスから」


「はい・・・。毎回すいません・・・」





魔王の間に辿り着くと、王座の前に他の四天王が揃って並び立っていた。


魔王と四天王のコラボレーションですよ。魔王軍ファンなら鼻血ものだと思うの。



でも何でかな。




「・・・・・・・・・」





全然、感動が湧かないんだよね。


なぜなら、皆ジャージだから。




なんなの?魔王軍はジャージしか着てはいけない縛りがあるの?


ファンとしては公式の衣装を見たいのだけど!?どこのタンスにしまってあるのよ!


私アイロンかけてやるからそっち着て見せてよ!




しかも四天王が魔王を囲んでいろいろ喋っては魔王がペコペコ頭下げてるんだけど。


明らかにダメ出しされてるよね?威厳も何もないじゃない。



それでも、御曹司が四天王に頭撫でられたりして親密な雰囲気は伝わってくる。




あれ?魔王の孤独設定どこいった?



目の前に見えるのは、ジャージ戦隊5レンジャーみたいな熱い友情に結ばれた5人しか見えないのだけど。


ちなみに宰相のアドラは黒、槍使いの戦士ケンタウロスが青、そして魔王軍の錬金術師ザガンがエメラルドグリーン、冥界の支配者で死霊を操る戦士ネルガルが青紫のジャージを着ていた。



───うん。やっぱり色的にもデザイン的にも魔王が一番ダサい。





そんな彼らを遠くから眺めて分析していると、突然全員の目がこちらを向いた。



「!?」




ケンタウロスが蹄≪ひづめ≫を鳴らしてこちらに近づき、頭上からジロジロ眺めてくる。




「んん?そういえばアンタ、昨夜の魔鳥の映像に映ってたな。あの時は急いでてすぐ映像切っちまったけど、人間族か。ふーん…。夜一緒にいたって事は、アンタ魔王様の女?」


「違います!」


「ななななな何言ってんのケンタウロス!全然そんなんじゃないよ!かかか彼女は異世界人で…っ、あの時は漫画の原稿のアシスタントをしてくれたんだ!だから締切ギリギリに間に合ったんだよっ」




ちょっと!挙動不審が過ぎるんですけど!?


そんなトマトみたいに顔赤くしてドモりまくってたら何かあったのかと邪推されるじゃないの!本物の魔王みたいにポーカーフェイスを貫きなさいよ!



声をひっくり返らせてかなりのオーバーリアクションで全否定している御曹司に、案の定四天王が更なる疑いの目を向け、その視線は私にまで及んだ。




「本当に違います。私と魔王様はまだ出会ったばかりで、国から逃げた妊婦の私を保護してくれただけです」


「妊婦?・・・ああ、言われてみれば個別の魔力がダブって見えるな」




ケンタウロスが顎に手を当てて私の顔とお腹を見比べている。



至近距離で頭上から眺めるのやめてほしいんだけど・・・。ケンタウロスは半人半獣だから私の目線の高さが彼の馬部分なので、見上げて目を合わせるのは至難の業なんですけど・・・。




「なんだ、やっと魔王の妃が決まったのかと思ったのに違うのかよ」



ネルガルがあからさまにがっかりしたリアクションをし、とんでもない事を口にした。


ネルガルの言葉に魔王はこれ以上赤くなるのは無理なんじゃないかと思うくらい沸騰している。



どう収拾つけたらいいのかわからなくなった所で宰相のアドラが「あまりヴォルフ様をからかうもんじゃありませんよ」と3人をたしなめた。




「さて、早速朝の会議を始めましょうか」



アドラの声に私以外の皆が頷き、場所を移すべく歩き出した所で私のお腹が盛大に鳴ってしまう。




「「「「「・・・・・・・・・」」」」」





全員の目が一斉に私に向いた。




何よ!仕方ないじゃない!!私まだ朝ご飯食べてないんだもの!!


真っ赤な顔してお腹を押さえていると、前からヴォルフの吹きだす声が聞こえる。




「席についたら朝ごはん食べよう。会議は食べながらでもできるからね」


「そうしてもらえると助かります」




御曹司の笑い声に釣られてか、四天王まで笑いだして「地響きみてぇなすげえ腹の音だったな」とケンタウロスにからかわれ、更に恥ずかしい思いをした。




そんな感じで和やかに朝の会議に迎えられた私だけど、その会議の内容はとても呑気に朝食を食べていられる話題ではなくて、




私は自分の国の闇を知る事になった。

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