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御曹司と魔族の民




私の見間違いだろうか?


目の前にダッさい名前の店がある。




『ヴォルフストア』。




ヴォルフに転移魔法で連れてこられた場所は、一軒の店の前だった。


これでもかというほど大きな文字で『ヴォルフストア』と書かれている看板に私は目が釘付けになる。





「・・・・・・・・・店名・・・」


「それ以上言わないで!!」



ボソっと呟いた私の言葉に、何が言いたいのか悟ったヴォルフは顔を赤らめて隣でプリプリと怒っている。



「僕だって最初この店名に反対してたんだ!でも皆が魔王の店だと民にわかりやすいようにしておけば、その地域は治安が良くなるっていうから・・・」


「・・・・・・・・・これ、外観が何となくコンビニに似てるんだけど、つまりはそういうこと?」



「そうだよ!ガウデンツィオにはコンビニが沢山あるんだ。僕がオーナーで、魔王軍の人達が店長やりながら各地域の民と交流したり、治安部隊をまとめてるんだ」




魔王がコンビニチェーン店のオーナー・・・・・・。


ジャージ作ってたり、漫画家だったり、流石にもう驚かなくなってきたな・・・。キャラ崩壊で気が遠くなるのは毎度のことだけど。



「さ、店に入ろうか。落ち込んだ時は美味しい物食べるに限るよ。あ、そうだ。店入る時は僕の事「魔王」とか「ヴォルフ」って呼ばないでね。一応僕、魔王軍の人達以外には顔出ししてないんだ。バレたら気軽に外歩けなくなるから」



そう言いながら彼は近くの醤油でも取るかのように、サラッと亜空間を開いて中から腕輪を取り出し、自分の手首に装着している。私はそれを見て目を剥いて驚いた。



コイツまた軽く上級魔法使った!!

ていうか亜空間魔法も存在してたんだ。


よし、それも習うことにしよう。




「その腕輪は何?」


「ああ、魔力を抑える腕輪だよ。これつけてないと魔力の弱い民とかは僕の魔力に当てられて体調崩してしまうから・・・。でもレティシアは最初から平気だよね。人間にしては魔力多いけど、何でだろう。やっぱり転生者だから違うのかな?」


「どうなのかしらね。とりあえず具合悪くなったことはないけど・・・」



前世思い出して国を出てからつわりもなくなった。


やっぱり思った以上にあの環境がストレスだったのかしら。



まあ、実際辛かったわけだけど・・・・・・・・・。





「───お店入ろうレティシア。僕お腹空いたよ」


「あ、うん」








◇◇◇◇




「「いらっしゃいませー」」



「・・・・・・・・・・・・」





私はまた白目を剥きそうになった。



あれは・・・もはや魔族というより、モンスターではないだろうか。


モンスター店員二人がコンビニの制服を着て客を出迎えているカオスな光景に、私は硬直して2歩目が踏み出せなかった。



「大丈夫だよ、レティシア。彼らは魔王軍の軍人で見た目はあんなでも良い人達だから。人間なんかより100倍良い人で心根が綺麗だよ」





元人間なのに、人間嫌いがすごいな。


これはまずいかもしれない。シナリオ通り戦争起こしてもらっちゃ困るから後で説得しなくちゃ。




「朝から結構混んでるね。早く買い物して城に帰ろう」




ヴォルフの言う通り、店内は客で賑わっている。皆買い物カゴを下げて品物を選んでいる様はやっぱりシュールかもしれない・・・。


人型の魔族や獣人っぽい人、ゴブリンみたいに見た目が完全にモンスターの魔族もいる。




でも一番驚いたのは、皆笑顔だったこと。




私の国では完全な『悪』として教育されてきたけど、彼らも魔王にとっては守るべき民なのだろう。


だからゲームのシナリオでも魔族だけは滅ぼさなかった。



王太子ルートの話を魔王サイドから見たら、ただ彼は国王として国を守りたかっただけなのかもしれない。


実際、魔王ルートでの彼は根っからの『悪』ではなかったのだから。




「レティシア!こっちこっち!」



ヴォルフが店の一角を指して呼ぶのでそちらに向かうと、そこには日本人の時によく目にしていたスイーツ達が並んでいた。



「ケーキ!!プリンもあるわ!!あっ、あっちにはアイスクリームまである!」


 

私は一気にテンションが上がってスイーツコーナーの前で目を光らせた。



「まさかこの世界でケーキが見れるなんて・・・っ」




レティシアの記憶では、この世界に生クリームを使ったケーキはない。


プリンやアイスクリームなど、冷やして保存する冷菓も存在しない。



主に保存が効く焼き菓子が中心なのだ。




「食べたい!コレ全部食べたいわ!すごいわね、コレ全部貴方が商品開発したの?」


「うん。日本人の時よく食べてたから作るのは割と簡単にできたんだけど、コレを保存する方法を構築するのが結構大変だったかな」



確かにどれも冷蔵しなきゃいけないものね。その辺の仕組みもどうなってるのか気になるところだけど、今はとりあえず食べたい!お腹空いたわ!




そうして私達はスイーツと朝食を購入して魔王の城に転移した。




そこで私は魔王軍の四天王と顔を合わせる事になるのだけど、やはり衝撃を受けたのはもうお約束なのだろう。

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