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貴方も攻略対象者




皆さんこんにちは。悪役令嬢のレティシアです。


ただいま私は魔族の国、ガウデンツィオに来ております。



迷いの森から遥か遠くのガウデンツィオまで魔王の転移魔法でひとっ飛びです!




「・・・・・・・・・魔力量どうなってんの・・・」




ガウデンツィオって確か大陸の端にある山岳地帯らへんにあって、他国から隔離された環境にあるって聞いた事があるけれど・・・。


実際、周り山だし・・・。



私も国では魔力量高い方だけど、魔王に比べたらミジンコ並み・・・いや、それ以下かもしれない・・・。




絶対に勝てないじゃん!


まあ、魔王に勝てるのは巫女の神聖魔法と国宝である神器の剣しかないのだけど・・・。



ゲーム内での私の死因もそれだしね。





「あーあ、転生チートがあるなら私も転移魔法使えるようにして欲しかった!」




練習すれば私でも習得できるかしら?

御曹司に教えてもらおうかな。


そしたら非常事態の時に身を守れるし、子供とはぐれた時にもすぐ駆けつけられる。




そして、その御曹司といえば、ただいま私の隣でトマトのように真っ赤な顔してソワソワ&アワアワして情緒不安定であります。


あの後魔王はすぐに「さっきからアイツがギャーギャーうるせぇから交代するわ」といって御曹司と人格交代した。




その瞬間、歩く18禁が乙女ゲームクラッシャーに変身し、魔王のキャラを破壊しまくっている。




同じ外見なのに、あの色気はどこへ・・・。




「レ・・・レレレ、レティシア!だっ、大丈夫だった!?ごめんね!魔王が意地悪して泣かせちゃって・・・。早く入れ替わって謝りたかったんだけど、魔王が全然変わってくれなくて・・・、しっ・・・しししかっ、しししかも、レティシアにキキキ、キスまで・・・っ」


「・・・・・・っ」




お互いの行動の記憶も共有してるのね。謝るって事は本物のヴォルフガングが私に何をしたのか全部知ってるって事?



御曹司もその時の事を思い出したのか、視線が私の胸を捉えている。私はサッと両手で胸を隠し、目の前の男を威嚇した。




「見るな!」


「ごごごごっ、ごめんなさい!!」





前世のオタクな私は論外として、今のレティシアは流石悪役令嬢と言うべきか・・・、出るところは出て締まる所は締まっているという、けしからんボディをしている。


前世を思い出してから初めて着替えた時に、レティシアのマシュマロなボディラインを見て、自分の体に鼻血が出そうになるという不思議な体験をした。それくらいけしからんのだ。



私は今後、例えオネエの男でも警戒心を解いてはならぬと身をもって知ったので、その教訓の元になった乙女御曹司に対しては特に警戒心を露わにしとく。



シャー!!



「ご、ごめんてば!もう見ないから!それより僕、ガウデンツィオに帰って来たらレティシアに見せたいものがあったんだよ」


「見せたいもの?」


「うん、きっと懐かしいと思うよ」




懐かしい?何だろう。日本にあったものよね?


まさか元公爵令嬢の私にもジャージ着ろとか言わないでしょうね?コイツならやりかねない。



訝しんで御曹司を見ていると、ナチュラルに私の手を取ろうとするので再びシャー!!と威嚇する。




「で、でも手を繋がないとレティシア連れて転移出来ないよ」


「さっき魔王は手を繋がなくても転移出来たけど?」


「うっ・・・、そうだけど、魔王と僕じゃ使える魔法のクオリティが違うんだよ。僕はここに来てから魔法を覚えたんだから・・・」




──なるほど。魔法使い歴は私と大差ないって事かしら?


それでも上級魔法を軽く使えるという事は、やはり魔王というポテンシャルの違いか。




「貴方の存在は一応魔王の前世になるの?転生して二重人格とか意味不明なんだけど・・・」


「僕もよくわかってないんだ・・・。ある日目覚めたら突然魔王の体に入ってたから」


「それは・・・軽くホラーね」



起きたら見知らぬ土地で周りに人外しかいなかったら私でも発狂しそうだわ・・・。




「それで?いつからそんな状態に?」


「うーん・・・。どれくらいだろう。軽く100年は経ってるんじゃないかな?」


「は!?冗談でしょ?」



「冗談じゃないよ。それくらい昔のことだ。最初は訳わからなくて怖くて、魔王って事はそのうち勇者に討伐されるんじゃないかって毎日怯えたりもした。周りの魔族も怖くてしばらく部屋に引き篭もってたし、そのまま孤独死するかと思ったよ。でも魔王や、魔王軍の皆が僕の存在を認めてくれて、居場所をくれたから何とか生きてこれたんだ。今は魔族の皆に恩返しがしたくて、日本での知識を活かして魔王の仕事の手伝いをしてる」



「─────不思議ね・・・。同じ時代に生きてたのに何で転生した時期が全然違うのかしら」


「同じ時を生きてたとしても、転生する人や時期は神の思し召しって事なんじゃない?僕は100年くらい前に日本人の記憶に目覚めたけど、魔王自体は1000年以上生きてるみたいだから、何かいろいろ設定がいい加減だよね」




苦笑しながら話すアンタも今まさに乙女ゲームのキャラ設定ぶっ壊してるけどね。


前世よりも長く生きてたのに、箱入り感がそのままって逆にすごくない?全然荒んでないし、それだけ今世では周りの人・・・というか魔族?に恵まれたって事なのかしら・・・。



魔王も暇潰しに御曹司を生かしてるみたいな事言ってたけど、御曹司の話を聞くと何やかんやで御曹司のこと結構気に入ってるよね?


それで仲良く共存してるって事なのかしら。




「だから、レティシアに会えて嬉しいよ。ずっと僕みたいな存在はこの世界に1人だけなんだと思ってたから」



そう言って魔王の顔した御曹司はへにゃりと微笑んだ。



顔は同じなのに、笑い方が全然違う。もはや別人。纏っている空気も違うから、コレはコレですぐに見分けがついて良いのかしら・・・。





「ところで貴方・・・」


「ヴォルフ」


「え?」


「貴方じゃなくてヴォルフって呼んでよ。もう僕らはオタク仲間でしょ」




オタク仲間───。


そうか、これからは好きな漫画やゲームの話が出来るかもしれないんだ。


それはちょっと楽しそうかもしれない。

少しくらい娯楽がなくては精神的に疲れちゃうもの。




「ところでヴォルフ」


「何?」


「まぶし!!」




名前で呼ばれたのが嬉しいのか弾ける笑顔を見せる御曹司がまた直視出来ない。


でも大事な話なので薄目のまま話を続ける。




「ええと、この世界がどんな舞台なのか知ってる?」


「え?魔王が出てくるんだからファンタジーじゃないの?漫画なのかゲームなのかはわからないけど」



「違うわ。ここは乙女ゲームの世界。当時二次創作でもルアルジ並に流行ってたのよ。私の所属サークルもこの世界の二次創作本出してたし。見た事ない?」


「ああ・・・そう言えば乙女ゲーム本すごい多かったね。でもあっちは女子向けだったから僕読んだ事ないんだ」


「そう・・・、とにかくここはその乙女ゲームの世界で、貴方もヒロインの攻略対象者よ」



「僕が!?」





「そう。貴方を討伐しにくるのは神の巫女と呼ばれる異世界転移してきた少女。そして、あなたの最愛の人になる少女でもあるわ」

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