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神の巫女の誤算① side ユリカ




「どうしてルイス様に会えないの!?」



ルイスが倒れたと聞いて見舞いに来たユリカは、ルイスの護衛騎士に入室を断られた。



「申し訳ありません、巫女様。王宮医師より面会謝絶を言い渡されておりますので、面会可能になるまでお待ちください」


「そんなに容態が悪いの!?」


「はい。そう聞いております」


「そんな・・・っ、ルイス様・・・っ」 





ユリカは困惑した。


ゲームのシナリオに王太子が倒れたというイベントなど発生しない。それが何故───。



怪我ならば治癒魔法で治せるが、病などは光属性の治癒魔法では治せない。


神聖魔法で浄化しなければダメなのだ。

 



だがユリカはまだ神聖魔法が使えなかった。


使えるようになるのは学園卒業後に攻略対象者と修行をして神力を高め、中ボスである悪役令嬢レティシアと対峙した時に初めて浄化の力に目覚めるのだ。



ルイスには一緒にレティシアを討伐してもらわなければならない。だからこんな序盤で病気になられては困ってしまう。



レティシアのイジメを誘発させる為にも、もっと学園でイチャつかないといけないのだから。




「ユリカ」



考え事をしていると、背後から名を呼ばれた。


振り向くとルイスの側近であるエバンスとサイモン、トリスタンの3人がこちらに向かって歩いてくる。



この3人も攻略対象者であり、エバンスは宰相子息、サイモンは騎士団長子息、トリスタンは王宮魔法士子息だ。



「エバンス!サイモン! トリスタン!ルイス様が・・・ルイス様が面会謝絶で会えないの・・・、私心配で・・・っ」




ユリカが涙を浮かべてルイスを案じていると、エバンスが心配そうにユリカの肩に手を乗せる。



「そんな顔しないで、ユリカ。殿下ならきっと大丈夫。俺達も今陛下に話を聞きに行ってきたところだ。ここで話せる内容ではないからユリカの部屋で話そう」


「うん・・・」




エバンスがユリカを促し、4人で彼女の私室に向かう。


部屋に入ると中にいた侍女に下がるように命令し、4人だけになった所で国王から聞いた昨日の顛末を話し出した。




「実は昨日の夕方にアーレンス公爵夫妻が謁見し、正式にアーレンス公爵令嬢と殿下の婚約が解消されたらしい」


「なんですって!?」



ユリカは驚愕した。


レティシアとルイスは婚約解消ではなく、3か月後の卒業パーティでルイスから婚約破棄されるはずだった。



その為に学園で日々レティシアが悪く思われるように振舞ってきたというのに、卒業を前に婚約解消など一体どうなっているのか。



「詳しい事は教えてもらえなかったが、アーレンス公爵令嬢が病を発症して領地で療養することになったらしい。治療に専念するため学園も退学し、婚約も解消になったと聞いた。だがそれに対して殿下本人が激しく反対したみたいで、その途中で頭を抱えて苦しみだし、気絶してしまったらしい。医師からも命に別状はないが未だ意識が戻らないと聞いた」



「そんな・・・、ルイス様・・・っ」



エバンスの話を聞き、ユリカは内心焦っていた。



おかしい。シナリオ通りに話が進まない。


どうしてルイスが婚約解消を嫌がるのか。あの男は自分を愛しているのではないのか?


そもそも、ユリカが異世界転移してきた時からおかしかった。



今まさにハマっている乙女ゲームの世界に入れて嬉しかったのに、ヒーローであるルイスがシナリオと全く違う行動を取っていたのだ。


本来のゲームなら、ルイスは高飛車で選民意識の高いレティシアを忌み嫌っていたはずなのに、現実のルイスはレティシアを溺愛していた。


そしてヒロインを苛烈に虐めぬくはずのレティシアは、実際には教師のように口うるさく注意するだけで、直接的なイジメはしてこなかった。



代わりにレティシアやルイスに対して無礼だと難癖つけてくる輩が出たので、それを利用して被害者を演じ、逆に巫女に対して不敬だと罰してもらった。


それがきっかけでエバンスやサイモン、トリスタンとの親密度はかなり上がったのだが、ルイスの方は中々うまくいかない。



激しい悋気を起こすレティシアからヒロインを守るうちに、密かに恋心が芽生えるという初期設定が狂っていたからだ。



これに焦ったユリカは攻略情報を駆使してルイスの好感度を初期から飛ばし気味に上げていった。ルイスは優秀なレティシアに対する劣等感を持っていたので、そこを刺激して自己肯定感を高め、庇護欲を刺激すれば落とせるキャラだと知っていた。


だからユリカはまだイジメも始まっていないうちからレティシアに悪評がつくように立ち回り、レティシアに瑕疵があると印象付けた。



そうすることによってルイスの劣等感が緩和される事を知っていたからだ。


後は悪役令嬢に冷たく当たられて傷つく少女を装い、ルイスに弱さをアピールして庇護欲を抱かせた。



急ごしらえの行動ではあったが、それで何とかゲーム通り距離を縮めることに成功したのだ。


だがルイスは王太子という立場があるからなのかお堅く、未だキス止まりだった。



そして自分に愛を囁く割にはレティシアにも仲の良い婚約者としての態度を崩さない。


おかしい。



ルイスはゲームではこんなに堂々と二股するような男ではなかった。


自分がどんなに婚約破棄してほしいと言っても、この婚約は本人同士でどうにかできるものではないからと頑として首を縦に振らなかった。



このままじゃ行きつく先はルイスの側妃か愛妾ではないか。神の巫女が側妃や愛妾なんて冗談じゃない。



それでは条件を満たせない。

ゲーム通り自分が妃になるべきだ。



でも最終的になりたいのはルイスの妃ではない。

ルイスも好きなキャラだったが、一番ではなかった。




自分の一番の推しは、隠しルートの攻略対象者であるヴォルフガングだ。




彼を呼び出す為に今まで全員の好感度を必死に上げてきたのだ。


隠しルートを開くには全員とハッピーエンドを迎えなくてはならなかったが、現実にそれをやるのは難しい。



だからシナリオには無いけどヒロイン補正で逆ハー状態を作り上げ、その上で王太子ルートを攻略すればヴォルフガングルートが開くかもしれない。


そんな可能性に賭けて今まで立ち回ってきたのだ。



それなのにその努力が今、台無しになろうとしている。





このままではヴォルフガングルートが完全に閉ざされる。


その可能性が現実味を帯びてきて、ユリカは発狂しそうになった。

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