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エピローグ

完結後に1話分抜けていることに気づいたので追加しました(汗)第44部分です。教えていただきありがとうございました!とっても助かりました(^人^)



「うぅぅ~、アレク~っっ」



アレクが旅立って数ヶ月、心良く送り出したつもりなのに、私はこうして時々寂しさが爆発してしまう時がある。


アレクは私とルイスも通った王立学園に入学し、王兄の息子、公爵令息として学園ライフを送っている。



突然の元国王の息子登場に社交界は大騒ぎだったらしい。


しかも顔がそっくりだから実子だと疑いようがなく、髪の色で私の存在がまた噂になったのだとか。


一応オレガリオでは、私は神の巫女とルイスの婚約の為に妊娠を告げずに泣く泣く身を引いた元婚約者。という事になってるらしい。


王兄の息子という事で、アレクに対して無礼を働く者は今のところいないみたい。むしろ同年代の子供達に囲まれて楽しそうだった。



魔族は魔力の関係で寿命が長く、老化が他の種族に比べて遅い。


特に上級魔族は高魔力保持者なので、何百年生きてても皆若々しい。だからアレクの周りは子供が圧倒的に少なかった。


昔はよく市井に降りて平民の子供達と公園で遊んだなぁ。



ちっちゃい体でトテトテ走って、ブランコや滑り台で嬉しそうに皆と遊ぶアレクを思い出すと、また涙腺が決壊する。




「ううううううぅ~」


「ほらレティシア。鼻水」



ヴォルフがハンカチを手渡してくれたので思いっきり鼻をかんだ。



「お前は酔っ払うと泣き上戸だな。アレクも心配してたぞ。いい加減、ホントに子離れしないとな」


「わかってるわよ。でもずーっと一緒にいたんだもの。ふとした時に、魔王城にアレクの姿がどこにもない事に、無性に寂しくなる時があるの。いい加減慣れなくちゃね」



そんな時はこうしてヴォルフがお酒を一緒に飲んでくれる。ワインを飲みながら、思い出話に浸るのだ。


今までアレクを幸せにするために生きてきたから、こうして育児卒業になって、胸にぽっかり穴が空いたようだ。


仕事もあるし、アレクがいない事以外は何も変わらない日常なんだけど、何となく、物足りないのだ。





「───もうそろそろいいかな?」


「ん?何が───きゃあ!」



斜め横の一人用ソファに座っていたヴォルフが突然立ち上がり、私の所に来て膝の上に私を横抱きにした。



「なななななな、何!?ちょっ、おろして!」


「ダーメ。俺もう十分待ったと思うんだよね。だからもうそろそろいいかなと思って」


「なななな何がですかっ」


「だから、今からレティシアを口説こうかなと思って。アレクも応援してくれてるしね」



にっこり笑って口説く宣言したヴォルフに、私の顔は沸騰した。




ヴォルフとヴォルフガングの人格が融合したばかりの頃は、まだ二重人格の名残で状況によって片方の人格が強く出ていたりもしていたけど、時が経つにつれ、ゆっくりとその差が無くなってきた。



今のヴォルフは、魔王と御曹司を足して2で割った感じ。

ほんとそんな感じ。だから───・・・わかるかな?



───もんのすごい厄介なイケメン野郎が誕生してしまったのよ!



超絶イケメンの国王で、強くて、優しくて、時々意地悪で、漫画の締切に追われるとテンパることもあるけど、民の為に内政に励む姿は王の風格があって凛々しい。



カッコいいと可愛いを一つに詰め込んだ超絶イケメンが、私を口説くと言っているのだ。顔が沸騰してパニックになるのは仕方ないだろう。



「くくくく口説くって・・・っ!何で急に!!」


「急じゃないでしょ。俺、前にレティシアを愛してるって言ったよね?」


「昔過ぎて・・・もう時効になっちゃったのかと・・・」




13年前の告白以来、彼に愛を告げられた事はない。


大事にされている事には気づいていたけど、それ以上踏み込んでこないから、もう気持ちが変わっちゃったのかな?なんて少し落ち込んだりもした。


でも私も私で、アレクもまだ小さかったし、母親の立場で恋愛をする事に抵抗があったのも事実。自分の中での母親像が凝り固まってたんだと思う。



それから、魔王とヴォルフのどちらに惹かれていたのか、もしくは両方に惹かれていたのか、自分でもよくわかっていなかった。


もし後者なら二股といっても過言ではない。ルイスに対してあんなに拒絶反応を示した二股状態を自分が作り出す事にかなり抵抗があった。


そんなモヤモヤした気持ちのまま彼に向き合うのは不誠実な気がしたのだ。



だって今のヴォルフは2人で一つだから、踏み込めばどちらかを傷つけてしまう気がした。


あの日から特に何も言われないし、だったら今のように仲間の一人としていた方がいいのかなって・・・・・・───。




「レティシアが何を考えているのかわかってるよ。だから区切りがつくまで待ってた」


「何でわかるの?」


「レティシアは気を許した奴には感情が顔に出やすいから。特に俺の前ではね」



そう言って、私の額にキスをした。



「!?」



ちょっと何!?急に甘いんですけど!?

変化についていけないんですけど!!


さっきまでの酔いがすっかり覚めて、あわあわと取り乱して膝からの脱出を試みるが、腰をガッチリ掴まれて阻止される。



「でも、いくら気を許しているからと言って、夜に私室で2人でお酒を飲むことがどういう事か、もう少し意識してもらいたいとこだよね」



そう言って今度は頬にキスをした。



「ちょちょちょちょちょっと待って!離して!心臓もたない!!」


「ちゃんと聞いて、レティシア。・・・異世界人の自分も、魔王の自分も、今はどちらも俺だ。難しく考えなくていい。だから質問に答えて」



ヴォルフは私の額に自分のそれをコツンと寄せ、私の瞳を見つめる。鼻が触れ合う距離に口から心臓が飛び出しそう。



「俺に触れられるのは嫌か?」


「・・・・・・嫌じゃ・・・ないっ」



ドキドキしすぎて声が震える。もう三十路女なのに、取り乱しすぎでしょう!恥ずかしすぎる・・・っ。



「俺はお前のこと裏切らないよ。信じられない?」


「・・・・信じる」



特に悩まず、その言葉が出てきた。


それは今まで築いてきたヴォルフとの絆が、信用に値するものだと教えてくれるから。彼は私に嘘をつかない。



「じゃあ俺を信じて、俺の伴侶として共に生きてくれ。俺はお前が欲しいんだよ」


「・・・・・・っ」



プロポーズとも取れる言葉に、また動揺して目が泳ぐ。



「レティシア」



片手が頬に触れ、上を向かされて視線を合わせた。熱の篭った視線が私を絡めとる。


ズルい。全然逃してくれない。考える時間を与えて欲しいのに、彼の言葉と今の状況に喜んでる自分もいる。


きっとそれも全部お見通しなんだろうと思うと、悔しい。



「ふふっ、ホントに強情だなレティシアは」



だからズルいのよ!

ここでそんな可愛い笑顔見せないで・・・っ、


強気モードとのギャップがすごくて心拍数が上がりっぱなしだ。



「好きだ、レティシア。愛してる」





目に涙が滲む。


私を抱きしめる彼の温もりが嬉しくて、本当はずっとこうして欲しかったのだと気づかされる。



いろいろ難しく考えすぎて、拗らせた。


そんな考えを取っ払った後に残っていたのは、ただの単純な想い───。




好き。



彼を失いたくない。初めて会った時からずっと私の味方でいてくれた人。居場所を与えてくれた。


ヴォルフもヴォルフガングも、私の心を守ってくれた。アレクを守ってくれた。


自分の事よりも私達を大事にしてくれた。




そんな彼を、私も──────、





「愛してる」



その言葉を聞いて、彼がゆっくりと体を離し、再び私と視線を合わせる。



「もう一度、言ってくれ」


「・・・・・・愛してる。ヴォルフを・・・ヴォルフガングを・・・」

 



今度は私が貴方を大事にしたい。


本当は寂しがり屋の貴方が不安にならないように、この先何があっても、私だけは貴方の味方でいるわ。


私の側が貴方の居場所になるように───。




「貴方の全部を愛してる」


「・・・・・・っ」




性急に唇を塞がれ、何度も角度を変えて深く口付けられる。


口内に彼の舌が入り込んで上顎をなぞられると、背中から腰に向かって痺れが走った。


逃げる舌を追いかけられ、絡め取られ、強弱をつけて吸われる。両耳を塞ぐように頭を押さえられ、直に脳に響く淫らな口付けの音に、全身が熱くてなって眩暈がする。



漸く唇が解放された時には、私は腰が砕けてヴォルフの膝の上から立ち上がれなくなっていた。



「ホントはこのまま抱きたいけど、レティシアの頭がパンクしそうだから今日は我慢しとく」



───と耳元で囁かれ、その意味に言葉通り頭パンクして、気づいたらベッドで寝てた。もちろんヴォルフはいない。



朝、思い出してベッドでのたうち回ったのは言うまでもない。








◇◇◇◇




「やっとかよ。くっつくまでが長すぎだろ」


「ホントな。見てるこっちはもどかしくてしょうがなかったよな」


「まあ、レティシアが相手じゃねぇ、男女の機微に疎そうだし、駆け引きとか無理そうだもんね」



いつも通り無礼な3人である。



「まあ、これで長らく空席だった王妃の椅子が埋まりそうで良かったですよ」


「王妃!?」


「何を驚いてるんです?魔王様の伴侶になるという事は、王妃になる事と同義でしょう」


「でも私、魔族じゃなくて人間だけど・・・反対されない?」




私の発言に四天王達が呆れた顔で見ている。

何なのその顔は・・・!私変なこと言った!?



「先の戦争であれだけの魔法ぶっ放して皆を圧倒した奴が、何を今更人間ぶってんだ」


「ホントだよ。つーか人間だったらお前、もっと老けててもいいはずだからな?アレクを産んだ頃の容姿のまま老化が止まってんじゃねーか」


「神聖魔法を継承したことで多分魔力量は僕らと変わらないか、むしろ上じゃないかな。四天王と同列の時点でもう人間離れしてるって事だよ」



え?つまりどういうこと?



「魔力量が高い者は寿命が長く、老化が緩やかになります。人間でも大賢者と呼ばれる者は300年くらい生きると聞いた事がありますよ。実在するかは知りませんが、貴女がそういう状況なのですから、本当にいるかもしれませんね」


「つまり、私の寿命は伸びてるってこと?」


「おそらくは。でも魔王様と比べたら全然短いです。だから同等にするには儀式が必要になります」


「儀式?」


「それは魔王様に教えてもらって下さい」



そう言うと、アドラがニヤリと笑った。

疑問に思い視線を移すと、他の3人も生暖かい目で私を見ている。



「何!?なんかとっても嫌な予感がする!!」


「大丈夫だレティシア。何も怖くない。全て俺に任せておけばいい」




そう言って私の頬を撫でた隣の男は、久々に登場した無駄に色気を振りまく18禁男だった。


今はその色気が一身に私にぶつけられているけれど・・・。



・・・・・・一体なんの儀式!?










その後、いろいろな問題を経て私は魔王と結婚し、ガウデンツィオの王妃となった。


王妃として外交で表に出るようにはなったけど、仕事は今までと特に変わらず過ごしている。


そして人間の私が王妃になる事に反発があると思われたけど、そこは今までの弱肉強食文化だった種族ゆえか、やはり私の魔力量は高いらしく、否を言う者はいなかった。


あと、内政で私がやってきた政策や産業の功績などが思いのほか皆に評価されていて、きっとヴォルフが根回ししていたんだと思う。



ちなみに儀式も受けた・・・。


口にするのは恥ずかしすぎて言えない。後悔はしていないけど、アレクと生きる時間の速度が変わってしまった事に寂しさを覚えた。


ヴォルフに素直に打ち明けたら、アレクを魔族化して寿命を伸ばす事は出来ないわけではないらしい。



でもきっと、アレクは望まないと思う。

だってあの子は今、とても生き生きとしているもの。


自分の人生を、思うままに歩んでいる。



学園で恋人が出来たと報告も受けた。


ルイスや両親曰く、高位貴族の才女で、努力家で可愛くて、とても良い子だと聞いた。同じ王宮魔法士を目指す同志らしい。


近々婚約したいから会って欲しいと言われている。



それを聞いて、安心した。


アレクはもう私が守らなくても、自分の力で幸せを掴み取れる。もう大丈夫なんだと心から思えた。



だから私も、私の人生を生きる。

ヴォルフと一緒に───。















◇◇◇◇




「お兄様!お帰りなさい!」


「ルーナ、ただいま」




アレクがルーナを抱き上げ、額にキスをする。

歳の離れた妹が可愛くて仕方ないらしい。



「父上!僕も、抱っこ!」


「リオン、いいよ。ほらおいで」



パァッと笑顔を浮かべてアレクに走り寄るのは、ルーナの2つ下であるアレクの息子だ。つまり私の初孫。


アレクはルーナを片手で抱え直し、空いた手で愛息子のリオンを抱き上げる。


「リオンもお帰り!またいっぱい遊ぼうね!」


「うん!ただいまルーナ」



アレクの隣にお嫁さんも並び、柔らかい笑みを浮かべている。



「おかえりアレク、エリアーナさん」



今年の夏休みも、息子家族が遊びに来た。




「母上、魔王様、みんな、ただいま」



「「「「 おかえり 」」」」





今日も魔王城は賑やかです。







完結しました。最後まで読んでいただきありがとうございました!


近々また新作の連載を始めますのでまたよろしくお願いします(^^)



【こちらも連載中なので良かったら読んでみてください(^^)】



【新作】今日で貴方を忘れます。だからどうぞお幸せに。【なろう版】


https://ncode.syosetu.com/n6788hv/



◆魔力なしの愛されない伯爵令嬢は、女神と精霊の加護を受けて帝国の王弟に溺愛される。


https://ncode.syosetu.com/n3934hu/

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