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終結



終わった。




「あははははははは!やった!やったわ!!これでお前も終わりよ!!今度こそ死ぬわ!!あははははは!!これでやっと、やっとイグレシアスの所に行け・・・──────ちょ・・・何!?なんで!?」




やっと、力が最大限に達した。



アデリーヌが私と魔王に仕掛けた生物兵器は、私が引き出した神力の余波でほんの数秒で浄化され、消滅した。




「どういうこと!?」


「ヴォルフガング、もう終わらせるわ」


「───分かった」






私は天に手をかざし、女神から与えられた言葉を詠唱する。





「我求める、偽りなき神意。我に答えよ、正邪の真意。神の導きのままに───」



最大出力の神力が天に向かい、青白い光柱が暗雲を突き抜ける。雷鳴が轟き、共鳴して大地が揺れる。




ギルティバーティクト(神の審判)




天から大地へ、暗雲を突き破り、無数の神の雷が振り下ろされ、衝撃で大地が割れた。





「「「「ああああああああああああ!!」」」」




一斉に、阿鼻叫喚の声が上がった。



全ての敵の頭上に天から青白い雷が落ち、跡形も残らず焼き尽くされ、天に召された。



神聖魔法の中で最上級に位置する『神の審判』。


神の裁きを受けて有罪と見なされた者は、一瞬で魂を神に召されてしまう、死の宣告魔法。



でも全ての者が体ごと消滅するわけじゃない。


中にはこうして、体が残される者もいる。




「…イグレ…シアス………、シ…ア……シア……」



先程まで私達と対峙していたアデリーヌが、神の裁きを受けて体が焼け爛れ、仰向けに倒れている。でもまだかろうじて意識がある。



美しかった容貌は、もう見る影もなくなっていた。


だがその表情は穏やかで、空に向かって震える手を伸ばし、ただ一人を見ているようだ。




「……シ…ア……あ…い…してる。…シア……ずっと……愛して…る…の…」



アデリーヌの瞳から涙が流れ落ちると共に、光が消えていく。



「…や……と……会え……た」





――――――何故だろう。



この人は犯罪者なのに、



許されない非道なことを沢山してきたのに、





愛する人の幻影を見て嬉しそうなその死に顔が、


とても悲しく見えて、胸に蟠りが残る。




魔王もアデリーヌを見て、痛ましそうな顔をしていた。


魔王とイグレシアス、そしてアデリーヌの間に何があったのだろう。


私が知っているのは、王弟イグレシアスが王座を狙ってクーデターを起こしたという事。そしてヴォルフガングの人格形成に影響を与えたという事だけ。


そして、その事に気軽に踏み込んでいい話題ではないことも。





事切れたアデリーヌを見届けると、膝の力が抜けて体が傾く。



「レティシア!!」



地面に倒れる前に魔王が私を抱き留めた。

最上級魔法を使った反動で全身が震える。


でもまだやらなきゃいけない事があるのだ。

まだ気を緩めてはいけない。



「は…やく、…早く魔力回復薬を……っ」


「ああ、早く飲め」





その後、魔力を回復させた私は仲間達を治療した。


最後ばかりは四天王達も感染して危ない所だったけれど、何とか助ける事ができた。




そして私は役目を果たした後、


安堵して気が緩んだのか、そのまま意識を失った。





戦争が、やっと終わったのだ。














◇◇◇◇







泣き声が、



聞こえる…。









「ははうえ~、うえええええん…っ」


「アレク、レティシアは疲れてるだけだから大丈夫よ。ゆっくり寝かせてあげましょう。アレクも眠いのに起こされたら「いやー」って言うでしょ?レティシアも同じなの。まだ眠くて眠くて仕方ないのよ。だからあっちでおばあ様達と遊びましょ?」


「………あい」



これは……アレクの声だわ。


アレクの小さな手が私の手を握ってる。



「ははうえ、……はやくげんきになって」



アレクのその言葉と共に、私の手のひらがほわんと暖まった。


ああ、―――――ホントだ。



これは…まだ弱いけど、確実に治癒魔法だわ。


アレクの労りの心に反応して、光属性の魔力が漏れ出ているんだわ。




2歳という若さで、無詠唱で治癒魔法を使うなんて!

ウチの子、魔法の天才かもしれないわ!!


ぼんやりしていた意識が、アレクの天才ぶりにテンションが爆上がりしてバチッと目が覚めた。



「アレク!!」


「ははうえ!!」



「やだアレクったら!!貴方天才だわ!!」


「きゃーーー!はははっ」



ベッド脇にいたアレクを抱き上げて思い切りハグをし、頬ずりする。


でも突然起き上がったせいで眩暈がして、さらに「ぐうううう!」とお腹の音が鳴り響いた。



「何をやってるのレティシア!貴女は一応病人なんだから大人しくしてなさい!」


「ううっ、お母様…っ、声が頭に響く。あれ?私いつのまに部屋に戻ったの?ていうかすごいお腹空いて眩暈がする。糖分、糖分取りたい!」


「貴女は戦争が終結した後、戦場で倒れたのよ。それでそのまま3日間眠り続けてたの。お腹空いて当然よ。今持ってきてもらうから待ってなさい」



そう言って母は呼び鈴を鳴らして侍女を呼び、部屋に食事を運んでくれるよう手配してくれた。





「ははうえ、おはよー。おかえりなしゃい」




アレクが私に甘えるようにお腹に縋りついてくる。



世界で一番愛しいその存在を、ギュッと抱きしめてつむじにキスを落とした。





「ただいま、アレク」




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