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最終決戦③


私の中の魔力を全て神力に変換するよう、集中力を高めていく。


その間、敵に狙われたら私は一瞬で死んでしまうので、そこは魔王に頼るしかない。



初めて使う魔法。


教会で巫女としての指南を受けていない私は、ゲームの知識と、女神に力を授けられた時に植え付けられた詠唱の言葉しか頼れるものがない。


ぶっつけ本番で上手くいくのかどうかも分からない。




それでも、これ以上死者を出さない為にやり切るしかない。


どのみちここで終わらせなければアレクにも危険が及ぶのだ。それだけは絶対に避けなければならない。




私の足元に、私を中心にして円状に青白い光が立ち上る。まだ足りない。全然足りない。




「丘だ!!丘の上に敵あり!全員矢を放てー!!」



早々に私達の居場所がバレ、敵がすぐに攻撃を放つ。


下から何百もの矢が私と魔王目がけて飛んできたが、魔王はそれらを一瞬で消し炭にする。



「お前には指一本触れさせない。安心して集中しろ」  


「ありがとう」



それからも絶えず矢を放たれ、あらゆる攻撃魔法を受けたけど、それらも全て魔王が無効化し、更に相手の戦力を削っていく。


そして神力が8割程度変換されたその時、私達の背後から巨大な黒炎の火球が放たれ、魔王はすぐさま私の前方を囲むように岩石の壁を作り上げた。


その壁で前方からの攻撃を防ぎ、背後からの攻撃は自らがが盾となろうと私を背に隠した。



ブラックホール(虚無空間)



魔王が両手をかざして詠唱すると、目の前に黒い渦潮のような闇の空間が広がり、黒炎の火球と衝突した。


その瞬間、辺りに激しい衝撃波が放たれ、岩肌を削る。



「ヴォルフガング!!」


「大丈夫だ!いいからそのまま続けろ!!」




巨大な火球が魔王と私を飲み込もうと押し迫るが、魔王の放った虚無空間が火球の威力をどんどん吸い上げていく。


その間も二つの魔力がぶつかり合う衝撃で、魔力の余波が下にいる敵陣に降り注ぎ、彼らを巻き込んで地面を破壊していた。



魔王の額に大量の汗が滲んでいる。

顔色が悪い。



やっぱり、本当はかなり無理をしているんだわ。


当たり前よ、ちょっと前まで生死を彷徨っていて、今も重度の貧血状態なのだから。




一刻も早く神力を溜めないといけない。


私は再び魔力の調整に集中する。





「さっさと死になさい!!ヴォルフガング!!!」


「アデリーヌ…っ!」





私達の背後から攻撃をしてきたのは、1人の女性だった。




アデリーヌ。



───あの人が、オレガリオ元国王の愛妾?



ウェーブがかった藍色の長い髪と金の瞳。

そして全ての者を誘うような妖艶な身体。


美しい外見とは裏腹に、その表情は憎しみに満ちていた。



「イグレシアスを殺したアンタだけは絶対に許さない!!庶子の分際で!!死ねえぇぇ!!!」


「アデリーヌ、例え元王弟妃だとしても口の聞き方に気をつけろ。俺が庶子であろうが下級魔族のお前に蔑まれるいわれはない」



再び二人の魔力がぶつかり、衝撃で体が揺れる。




早くしなければ。


落ち着けと念じるほど焦りが生まれる。

焦れば焦るほど魔力調節が微妙にブレる。


集中しなくちゃいけないのに、プレッシャーで私の心拍数はすごい事になっていた。



時間がかかりすぎている。




早くしないとあの兵器をまた使われる!


そう危惧したその時、魔王軍の陣地で爆発音と共に広範囲で濃い霧が発生し、敵と味方関係なく次々と悲鳴が上がった。



「ああ!そんな…っ!!」


「なんだ!?」


「あはははははははは!よくやったわキース!!これで魔王軍は全滅よ!!」




やっぱり使われた!!


あの生物兵器は1種類じゃない。

経口感染と空気感染の2種類あるのだ。



しかも空気感染の兵器の方が威力が強く、感染しやすい。多分あの霧状のものがそうだ。



皆に渡した状態異常無効化の魔石は一回しか効かない。


一度魔石で感染を無効化した所で、あの霧の中にいる限りまたすぐに感染する。



結界の魔石も万能ではない。


あれは大量生産するために簡易的に作ったものに過ぎないから、魔力の衝撃耐性が低いのだ。


何度も魔法攻撃を受ければ結界にヒビが入る。



そしたらその隙間から霧が入り込み、あっという間に空気感染してしまうだろう。



だから今、皆の悲鳴が聞こえている。



こうなる前に決着をつけたかったのに───。




「ちっ、お前は陽動か。アイツらに何をした?」



魔王の殺気が膨れ上がる。



「アンタも一度食らったでしょ?魔力を食らって寄生者を死に至らしめる生物兵器よ。あれは治療法がないはずなのに、何故あなたが生きているの?もしかして、後ろのレティシアとかいう女が何かしたのかしら?」


「……っ!?」


「アイツに手を出したらその身を切り刻んでやるからな」



アデリーヌが私に鋭い殺気を送ってきたのに対し、魔王も強い威圧を放ってアデリーヌを牽制する。


不穏な空気が肌をピリピリと刺激し、一触即発の空気が私の肩にものしかかった。



早く治療しないと、魔王軍の皆が死ぬ!!



もうすぐなのよ!

あとちょっとで神力が全開になる!






お願い…っ


早く、早く、早く!!!






「大丈夫よ、貴方達の分も私がちゃんと用意してあげたから、二人仲良く苦しんで死になさい!!」





アデリーヌの声と共に、



私と魔王の視界も霧の中に包まれた。





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